フェラーリ 12チリンドリ新車情報!背徳的だが、甘美で陶酔確実なV12エンジン搭載

フェラーリは、2024年6月に新型フェラーリ 12チリンドリ(12Cilindri)を初披露した。12は、イタリア語でドーディチとなることから、ドーディチ チリンドリとやや長い車名となる。今回は新型スーパースポーツカーである12チリンドリの走行性能やデザインなどをレポートする。

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最後のV12エンジン?

フェラーリ 12チリンドリの車両画像 全景

12チリンドリで、最も注目されているのが、フロントミッドシップに搭載される自然吸気6.5L V12エンジンだ。世界中でCO2減が叫ばれ、電気自動車へ急速にシフトしている状況に反旗を翻すかのごとく、古典的フェラーリのアイデンティティともいえるV12エンジンを搭載した新型車12チリンドリを投入したからだ。

頭の中では、環境問題は待ったなし。こんな古典的なガソリン車が許されるのか?と、思う一方、もう半分の頭の中ではウォォー、フェラーリのV12凄い! どんなサウンドを奏でるのかなぁ、と狂喜乱舞状態。冷静に判断が出せない状況に陥った。それほど甘美な魅力がV12にはある。

 

12チリンドリの発表会場は屋内だったため、V12エンジンの始動はできなかった。だが、会場のスピーカー経由で、録音済みの12チリンドリのサウンドが響き渡る。高音の澄んだフェラーリサウンドを聞いた瞬間、思わず武者震いが起きた。もう随分前になるが、エンジン音で武者震いが起きたのは、レクサスLF-AのV10以来。フェラーリのV12サウンドは、もはやアートだ。

 

しかし、クルマの電動化はフェラーリといえ無視できない。そんな厳しい環境問題の中、誰も「フェラーリ最後のV12になるのでは?」と、思うだろう。フェラーリから明確な回答は無いものの、チリンドリという車名の前にあえて「12(ドーディチ) 」と付けたのは、フェラーリ自ら、最後のV12であることをアピールしているのでは? と思ってしまう。

0-100km/h加速がわずか2.9秒!超俊足GT

フェラーリ 12チリンドリのホイール画像

6.5L V12エンジンは、最高出力830 cv、最大トルク678 Nmと非常にパワフルだ。レヴリミットは、大排気量エンジンだが9,500回転を有する、驚愕の高回転型となった。この高回転がエンジンの開発には、F1由来の技術が投入されている。

フェラーリ 12チリンドリのエンジン

フェラーリは、エンジンコンポーネントの重量と慣性の削減に取り組んだ。チタン製コンロッドを採用することで、回転質量がスチール製より40%も低減している。ピストンは、従来とは異なるアルミニウム合金を使用し、さらに軽量化した。

 

スライディング・フィンガーフォロワー式のバルブトレインは、重量を削減した。スライディング・フィンガーフォロワーは、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)コーティングを施したスチール製である。油圧式タペットを回転軸として使い、カムの動きをバルブに伝える。DLCの採用で、重要な接点の摩擦係数が下がり、エンジンの機械効率が大幅にアップした。その他、多くの技術が投入されている。

 

甘美なV12サウンドを生み出すため、各バンクを6-in-1の等長マニホールドとした。点火順序によって美しい倍音成分をすべて響かせる、フェラーリならではのV12の咆哮が実現。吸気と排気のシステムがそれぞれに放つ高周波音と低周波音を完璧に調整して融合させたことで、エンジンサウンドの音質も向上した。

ダクトの形状やサイレンサー・バッフル内部の流体力学は、背圧を最小限に抑え、パワーデリバリーの向上に貢献。排気システムの形状やカーブといったジオメトリーも完璧に磨き上げられ、リミッターまでの全回転域で、フェラーリの特徴的サウンドが極めて純粋な音色で響くことを可能とした。

 

さらに、車内で聞くサウンドが完璧なバランスとなるよう、吸気ダクトの改良を実施しレゾネーターの位置を変更した。圧力波も変わり、特に中周波音は音域がより豊かになった。その結果、車内でも混じり気のない豊かなサウンドをあらゆる走行条件で楽しむことができる。

フェラーリ 12チリンドリのエンジンルーム

12チリンドリのV12エンジンと組み合わされるミッションは、8速DCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)だ。21インチの大径タイヤによって、従来のV12モデルに対して低速ギアのギア比が5%低くなり、タイヤでのトルクが12%増大している。変速時間は、従来のV12ベルリネッタから30%も短縮された。

こうしたエンジンやミッションにより、12チリンドリの最高速度は340 km/h。0–100 km/h加速は、わずか2.9秒となった。

 

12チリンドリは、4輪独立操舵(4WS)を装備している。各タイヤの動きを独立して制御し、コーナリング中のヨー・マネージメントと、素早い切り返しでの応答性を向上させた。

まさに温故知新!? デイトナをオマージュしたフロントフェイス

フェラーリ 12チリンドリの車両画像

フェラーリ 12チリンドリの外観デザインは、最近のフェラーリデザインとはやや異なるテイストとなった。フラヴィオ・マンゾーニとフェラーリ・スタイリング・センターのデザインチームは、12チリンドリで従来のフロントミッドシップV12モデルのスタイリングルールを大胆に書き換えることを目指した。

フェラーリ 12チリンドリのフロントフェイス画像

とはいえ、フェラーリの伝統は継承。フロントフェイスは、1960~1970年代に発売されていたフェラーリ 365GTB/4、通称デイトナをイメージさせる。12チリンドリのボディサイズは、全長4,733×全幅2,176×全高1,292mmだ。とにかく、ペタペタに低くてワイドなシルエットをもつ。これだけペタペタに低いボンネットの下に、大きなV12エンジンが入るのか? と思うほど。フェンダーも存在感あるデザインながら、全体的にクリーンなイメージが強い。

フェラーリ 12チリンドリのリヤエンド画像

歴史を感じさせるフロントフェイスに対して、リヤビューは見たことが無いくらい個性的なデザインだ。12チリンドリでは、リヤスポイラーの代わりに、リヤスクリーンと一体化した2個の可動フラップを採用した。ルーフから流れるラインは、とてもシームレスで美しいシルエットを生み出した。

フェラーリ 12チリンドリの車両画像

12チリンドリは、優れたエアロダイナミクスを誇る。エレガントなデザインを重視した結果、リヤの可動フラップは、「ロー・ドラッグ」(LD)と「ハイ・ダウンフォース」(HD)の二つの仕様を設定した。車速60 km/hまでは、ロー・ドラッグ。ハイ・ダウンフォースのポジションになると、最大ダウンフォースを発生する。

 

フロント・アンダーボディでは、風洞で最適化された3組のボルテックス・ジェネレーターによってダウンフォースを発生させる。アンダーボディ中央部は、気流がリヤディフューザーにきちんと流れるように、トランスミッション・トンネルの開口部を縮小化し空気量のバランスが保たれている。

助手席の乗員はコ・ドラ? 一体感あるデュアルコックピット

フェラーリ 12チリンドリのインパネデザイン

インテリアデザインも個性的だ。12チリンドリには、デュアルコックピットデザインが採用されている。キャビンは、ほぼ左右対称の構造だ。同乗者も12チリンドリと一体となるような空間となっている。フラッグシップGTということもあり、2シーターながら室内空間は少し余裕がある。もちろん質感はとても高く、ラグジュアリースポーツの極みと言える。

フェラーリ 12チリンドリの運転席の内装画像

12チリンドリでは、3個のディスプレイで構成された新しいヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)が導入された。中央の10.25インチ静電容量式タッチスクリーンに加えて、15.6インチのドライバー用ディスプレイを装備。さらに、8.8インチのディスプレイが加わり、パッセンジャーはコ・ドライバーのような感覚を味わる。

12チリンドリには、Burmesterと共同で開発した高級オーディオシステムがオプション設定されている。15個のスピーカーで構成され、1600 Wの大出力を誇るオーディオシステムだ。

12チリンドリは、深夜0時過ぎのラーメンと似ている?

フェラーリ 12チリンドリのエンブレム

フェラーリ 12チリンドリは、最後のV12エンジン搭載車になる可能性も高く、マニア垂涎のモデルとなることは確実。12チリンドリに乗れるユーザーは、社会的な地位も高い特別な人だろう。そんな特別な人が、環境重視の時代にあえて6.5L自然吸気V12エンジンを搭載した12チリンドリに乗ることは、とても強い背徳感があるはずだ。

突然、小市民的表現になってしまうのだが、ガッツリ飲んだ後の深夜0時過ぎに食べるシメのラーメン的でもある。これも背徳感は、強烈にある。だけど、やめられない。そんな中毒性ある魅力は12チリンドリと0時過ぎのラーメンと同じかも?と、感じてしまった。

フェラーリ 12チリンドリ価格

  • クーペ…5,674万円~
  • スパイダー…6,241万円~

フェラーリ 12チリンドリ スペック

全長×全幅×全高 4,733×2,176×1,292mm 
ホイールベース 2,700mm
トレッド前/後 1,686/1645mm
総重量 1,560kg
総パワーウェイト・レシオ 1.88kg/cv
重量配分フロント/リヤ 48.4/ 51.6%
燃料タンク容量 92 L
トランク容量 270L
タイヤ&ホイール フロント 275/35 R21 J10.0
タイヤ&ホイール リヤ 315/35 R21 J11.5
トランスミッション&ギアボックス 8速デュアルクラッチF1 DCT
エンジンタイプ V型12気筒 65°ドライサンプ式
総排気量 6,496 cc
ボア・ストローク 94mm×78 mm
最高出力 830 cv / 9250 rpm
最大トルク 678 Nm / 7250 rpm
最高許容回転数 9500 rpm
圧縮比 13.5:1
最高速度 340 km/h
0–100 km/h加速 2.9秒
0–200 km/h加速 7.9秒

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員