トヨタ クラウンスポーツ ハイブリッドZ試乗記

トヨタ クラウンスポーツは2023年11月に発売開始された。今回は試乗を通してクラウンスポーツの走行性能や内外装について批評する。

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クラウンシリーズの第2弾が新型「クラウンスポーツ」

クラウンスポーツの車両画像全景

クラウンは、トヨタにとって長い歴史を刻んだ代表的なモデルだ。しかし昨今、ミニバンやSUVブームの影響を受け、年々存在感を失っていた。そんな中、トヨタは2022年7月、クラウンに対して大改革を行った。ほぼ国内専用車で日本人に寄り添ってきたクラウンを、世界戦略車にしたのだ。さらに、従来のセダンに加え、クロスオーバー、スポーツ、エステートという4車種が投入されることも発表された。まさか4車種のラインアップを誇るモデルになるとは思わず、多くの関係者が驚いた。これはクラウンの歴史上、もっとも大きな変革と思えるほどのインパクトを有した。

 

そんなクラウンシリーズの第1弾がクロスオーバーで、2022年9月に発売された。そして、第2弾のスポーツは2023年11月に発売した。

従来のクラウンは、FR(後輪駆動)用プラットフォームを採用したセダンだったが、このクラウンクロスオーバーとクラウンスポーツは、FF(前輪駆動)用のGA-Kプラットフォームを採用した4WDになっている。

クラウンスポーツは一味違うユニークなデザイン

クラウンスポーツの車両画像後景

新型トヨタ クラウンスポーツをひと目見るなり驚いたのが外観デザインだ。

SUVデザインのトレンドは、大きな顔と大きなグリル、フェイス上端サイドに設置された切れ長のヘッドライトという組み合わせだ。さらに、押し出し感があり迫力があることが重視される。

クラウンスポーツのフロントフェイス

ところが新型クラウンスポーツは、こうしたトレンドとは一線を画するデザインを採用した。よりシャープで精悍な表情を実現するために、クラウンクロスオーバー譲りのハンマーヘッドフェイスをベースとし、レンズ幅を薄くしたデイランプを黒色部内に集約した。グリルはスッキリとまとめられ、最近のSUVと比べると小顔になっている。SUVというより、スポーツカーのようなデザインとなり、まさにクラウンスポーツの名にピッタリなフェイスデザインといえる。

クラウンスポーツのリヤエンド

新型クラウンスポーツのシルエットを際立させているのが大きく張り出したリヤフェンダーだ。まるで、FRスポーツカーのようにマッシブな印象を感じさせる。上方に向けてグッと絞り込まれた台形シルエットで、背の高いSUVながら視覚的低重心感をアピールしている。

大径21インチホイールとの一体感も良好だ。フロントフェイス同様、とてもスポーティなデザイン。他のSUVとは異なるユニークさが魅力だ。

インテリアはクラウンクロスオーバーとほぼ同じで、やや物足りない

魅力あふれる外観デザインとは逆に、インテリアのデザインには少々物足りなさを感じた。それは、クラウンクロスオーバーと、ほとんど同じだったからだ。

クラウンスポーツの運転席の画像

クラウンスポーツの後席の画像

クラウンスポーツの荷室の画像

クラウンクロスオーバーと同じ「アイランドアーキテクチャー」を活かし、運転席と助手席をアシンメトリーにコーディネートしている。

クラウンスポーツのインパネデザインの画像

水平基調のインパネデザインは、横方向の広さを感じさせる。全般的に、落ち着きがあって安心できる空間ではあるものの、新型クラウンスポーツらしい躍動感あるデザインも欲しいところだ。

クラウンスポーツのメーターの画像

パワフルな走りと優れた静粛性のクラウンスポーツ

新型クラウンスポーツに搭載されたパワーユニットは、クラウンクロスオーバーと同じ2.5Lハイブリッドシステムだ。システム出力も同じ234㎰となっている。デビュー当時は後輪側に駆動用モーターを設置した電動4WDであるE-Fourのみの設定だったが、2023年12月に2.5LのPHEVが追加投入された。

 

今回試乗したのは、2.5LハイブリッドのクラウンスポーツZだ。まず、アクセルをグッと踏むと、モーター駆動車らしく力強く加速する。54㎰&121Nmというスペックのリヤモーターの恩恵もあり、後ろからグイっと押されるような加速が心地よい。システム出力は234㎰と十分なので、高速道路でのクルージングも十分な余裕を感じさせる。

 

さらに、高級SUVらしく、静粛性も高い。風切り音も上手に抑え込まれている。そのため、高速道路上では、とくに大きな声を出して同乗者と会話する必要もなかった。こうした会話明瞭度は、声を天井で反射させて相手に届けることを狙った「調音天井」による効果も大きい。

 

高い静粛性と十分なパワーを兼ね備えたため、クラウンスポーツの後席クルージングは快適だ。疲れ知らずで移動が楽しめる。

 

新型クラウンスポーツの燃費(WLTCモード)は、21.3km/Lとクラストップレベル。ガソリン価格高騰が続く中、非常に経済的なモデルといえる。

ハンドリングへのこだわりが詰まったクラウンスポーツ

新型クラウンスポーツの真骨頂は、その名の通りスポーティな「走り」だ。新型クラウンスポーツとクラウンクロスオーバーは、ハイブリッドシステムやプラットフォームなど、多くのハード部分を共通化している。しかし、新型クラウンスポーツでは、意のままに走るために、クラウンクロスオーバーよりホイールベースを短縮するという大胆な変更を行った。ホイールベースは、クラウンクロスオーバー比で、なんと-80mmとなる2,770mmだ。

ホイールベースの短縮は、室内スペースの縮小という影響を与えるものの、よりキビキビとしたハンドリングを手に入れることができる。また、プラットフォームの変更は、大きなコスト高にもなる。ここまでこだわるのか? と、少々驚いたほどだ。

 

それだけではない。ハンドリングへのこだわりは、前後のオーバーハング短縮にも及ぶ。クラウンクロスオーバーと比べると、オーバーハングは、フロントで-30mm、リヤが100mmも短縮されている。

SUVは、本来快適な移動や使い勝手の良さを重視するため、室内スペースや荷室スペースが重要視される。しかし新型クラウンスポーツは、ハンドリング性能を重視し、こうした実用性まで犠牲にするほどこだわり抜いた。

キレ味爽快! なハンドリング

得られたハンドリング性能は秀逸だ。操舵レスポンスは、スポーツの名に相応しく俊敏で、背の高いSUVとは思えないほどキレがある。1,880mmというワイドなボディをもつモデルなのに、クルリと向きを変えていく。コーナーリング中、ステアリングを切り増しても操作に対してリニアに反応する。大柄なボディなのに、軽快で気持ち良い。

 

こうしたハンドリングには、後輪操舵システムであるDRSが大きく貢献している。クラウンクロスオーバーとは制御が若干異なり、ノーマルモード低速域では逆相を強め機敏さをアシストする。

 

そして、新型クラウンスポーツの乗り心地は「硬いだけがスポーツじゃない」がテーマのひとつとなっている。一般的に、機敏さを高めようとすると、どうしても硬めの乗り心地になる傾向がある。逆に乗り心地を重視すれば、機敏さが失われる。こうした二律背反する特性を見事に調和した。

カーブでは、ロールをやや抑えフラットな姿勢を維持する。適度なロールは許すものの、ロールスピードがゆっくりなので、安心してカーブに進入できる。ただ、かなり速度が上がり高い旋回Gがかかってくると、当然のことながらロールは大きめに出始める。新型クラウンスポーツZでは、ノーマルのサスペンションなのだが、こうしたシーンではPHEVに装着されている電子制御減衰力調整式サスペンションであるAVSが欲しいと感じてしまう。

 

乗り心地は、低速域で多少コツコツとくる振動を感じるものの、少し速度が上がればしなやかさが増していくタイプだ。全体的に少しコシのあるシットリした乗り心地で快適である。スポーティな走りを重視したモデルで、電子制御減衰力調整式サスペンション無しで、この乗り心地を引き出せたのは高く評価できるポイントといえる。

クラウンスポーツはクロスオバーと全く違う仕上がりで満足度が高い

新型クラウンスポーツは、インテリアを除けば、まさにこだわりの塊といえる。昔のトヨタであれば、プラットフォームの変更など行わず、外観デザインとサスペンションチューニング程度でお茶を濁していたかもしれない。しかし、トヨタ開発陣のこだわりは深く、同じクラウンシリーズでありながら、クラウンクロスオーバーとクラウンスポーツでは、まったく違うクルマに仕上げてきた。顧客にとっても、そのこだわりの深さがヒシヒシと伝わってくるのは必至で、新型クラウンスポーツへの満足度は爆上がりだ。豊田会長が言い続けている「もっといいクルマづくり」が、現場に浸透した結果なのだろう。

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トヨタ クラウンスポーツ価格 

クラウンスポーツZ(2.5Lハイブリッド)

5,900,000円

クラウンスポーツRS(2.5LPHEV)

7,650,000円

トヨタ クラウンスポーツ燃費、ボディサイズなどスペック

代表グレード

クラウンスポーツZ

全長×全幅×全高

4,720mm×1,880mm×1,565mm

ホイールベース

2,770mm

トレッド(前/後)

1,605mm/1,615mm

最低地上高

160mm

車両重量

1,810kg

荷室容量

396L

エンジン型式・タイプ

A25A-FXS型 直4DOHC ハイブリッド

総排気量

2,487cc

システム最高出力

234㎰

燃費(WLTCモード)

21.3km/L

駆動方式

E-Four(電気式4輪駆動)

サスペンション

前:ストラット、後:マルチリンク式

タイヤサイズ

235/45R21

最小回転半径

5.4m

クラウンスポーツのカタログ情報

現行モデル
令和5年11月(2023年11月)〜現在
新車時価格
590.0万円〜765.0万円

クラウンスポーツの在庫が現在9件あります

以下車両の保証内容詳細は画像をクリックした遷移先をご確認ください。

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ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員