車のクラッチの交換費用の目安は?交換時期についても整備士が解説

車のクラッチの交換費用の目安は?交換時期についても整備士が解説

マニュアル(MT)車に乗っている人には、聞き馴染みのあるクラッチと呼ばれる車の部品は、消耗品のひとつです。クラッチの交換は高額な整備となることが多いです。
この記事では交換費用の目安、交換時期やそのサインについて現役整備士が解説します。

※世間的な認識のAT車においてもDCTやAGSのように、MT車と同じトランスミッションを採用している車があります。これらは、MT車と同様にクラッチは消耗品となり、交換の必要がでてくることがあります。

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クラッチの交換費用の目安

クラッチの交換整備は、自動車のメンテナンス・整備のなかでも高額となってきます。
クラッチの交換費用の目安は特殊な車ではない、一般的な国産車であれば10万円前後となるでしょう。大まかな区別による費用の傾向と具体的な費用の目安について、それぞれ解説します。

駆動輪ごとに交換費用に差が出る

車種によりますが交換費用は駆動輪別で比較するとFR<FF<4WDの順に高くなる傾向にあります。MRやRRは特殊な車が多いので、さらに高額となることが多いです。
交換費用が高額になる理由は、作業の難易度が高くなったり手間が増えるためです。
また、車種によってはエンジンを車から降ろす必要のあるものもあります。

車格に応じて交換費用に差が出る

例外はありますが同等作業の場合、一般的には車格が大きくなるにつれて交換費用が高額になります。車格による費用傾向は(軽自動車<普通車<大型車・輸入車)です。

純正品と社外品で部品代に差が出る

クラッチ交換は、工賃も高額ですが部品代も高額です。
使用する部品によって金額を抑えたり、性能を向上させることができます。
純正、社外品の費用傾向は(純正同等社外品<純正品<ハイパフォーマンス社外品)です。

社外品は部品選びを正しくおこなわなければ、ただ安いだけの粗悪品もなかにはあるので、基本的には純正品を使用することをおすすめします。

具体的な費用の目安

上記の交換費用の傾向に当てはめると、軽自動車が全体の中では安い傾向にあります。
軽自動車のクラッチの交換費用相場は4〜8万円です。人気車種スズキのアルトワークス(FF軽自動車)であれば、7〜8万円程度と予想されます。
また普通車であれば、トヨタ86/スバルBRZ(FR)の場合で9.5〜12万円程度です。

クラッチの交換サインとなる不具合

クラッチ交換時期のサインとなる不具合や症状としてはおもに以下の6つがあげられます。

  • クラッチペダルが重たくなる
  • クラッチのミートポイントが近くなる
  • クラッチの焼けた不快なにおいがする
  • クラッチが滑っている
  • 発進時にジャダーが出る
  • クラッチ関連部品より異音が発生

クラッチペダルが重たくなる

ペダルが重たくなる要因は複数ありますが、クラッチの摩耗もそのひとつです。
またそれ以外の理由の場合でも、MT内部のクラッチ関連部品に起因することが多いので、いずれにしてもそこまで分解整備するのであれば、クラッチ一式の交換が必要という判断になります。

クラッチのミートポイントが近くなる

クラッチの繋がるポイントが近くなる、または遊びが少なくなる…など、人によって様々な表現があります。
正常な車のクラッチペダルのフィーリングと比較するとその違和感は一目瞭然です。
クラッチディスクが摩耗していることが考えられるので、クラッチが滑って走行不能になる前に、早めの交換をおすすめします。

クラッチの焼けた不快なにおいがする

クラッチディスクが摩耗したまま走り続けているとディスクのフェーシング材がどんどん薄くなり、滑りを発生させてしまいます。
摩擦熱でフェーシングが焼けて、焦げ臭いなんとも言えない不快なにおいがします。
早急な交換が必要なサインです。

クラッチが滑っている

クラッチディスクの摩耗が進むと、クラッチディスクとフライホイールの圧着力がエンジンのパワーに負けて滑り出します。
アクセルを踏んだ加速時に、間違いなくギヤが入っているにも関わらず「エンジン回転数は上がるが速度が上がらない。」または、「エンジン回転数に対して速度がかろうじて上がるがいつもより緩やか」だと、クラッチが滑っていると考えられます。
いつ走行不能になってもおかしくないので、早急なクラッチの交換をおすすめします。

発進時にジャダーが出る

発進時のクラッチが繋がるタイミングで、ジャダーと呼ばれる振動が出る場合、クラッチ関連に異常がある可能性があります。ただし、操作のクセや車の正常作動範囲内とも考えられます。これまでと比較して明らかにおかしくなったという場合には、一度、整備工場で原因を点検してもらうとよいでしょう。

クラッチ関連部品より異音が発生

アイドリング中に「シャー」「ギャラギャラ」という音がしていて、クラッチペダルを踏むと音が止まる場合、クラッチのレリーズベアリングの劣化が考えられます。
また、反対にクラッチペダルを踏むと同じような音が発生する場合、パイロットベアリングの劣化が考えられます。(パイロットベアリングはフライホイールの中心の軸部分についている部品)
放置していると不具合に繋がるおそれがあります。
部品交換にはミッションの脱着を伴うので、ついでにクラッチ関連一式も部品交換することが一般的です。

クラッチが劣化する要因

クラッチはエンジンの動力が伝わる部品です。
車の使用に伴って部品が劣化するのは当然のことですが、特に半クラ操作が苦手であったり、荒っぽいクラッチ操作をすることで劣化を早める要因になります。

半クラが多い・長い

半クラはエンジンの動力がミッション側に繋がりかけている状態を指します。
この時、クラッチは完全には繋がっておらず滑りが発生している状態です。
よって、半クラが多い・長いということはクラッチが滑っている(摩擦している)時間が長いので、クラッチディスク摩耗の直接的な原因になります。

半クラ時のエンジン回転数が高い

半クラ時にエンジン回転数が高いと、エンジンの動力が伝わるときの摩擦量が大きくなるため、クラッチディスクの摩耗が早くなります。

気付かない間にクラッチペダルに足が乗っている

運転中にクラッチペダルに足が乗ってしまっていて、常に軽い半クラのような状態で運転しているとクラッチディスクの早期摩耗につながります。
特に、足元スペースが狭くてフットレストスペースも十分でない車種でやりがちで、運転している本人は気付かないことも多いです。

クラッチ操作が荒い

ドンッと衝撃が出るようなクラッチミートをするなど、単純に荒っぽいクラッチ操作をすることが多いとクラッチの劣化も早くなります。
クラッチ操作は優しくおこなうことが、クラッチを長持ちさせるポイントです。

クラッチの交換時期の目安

クラッチの交換時期の目安は平均的には走行距離5万km〜10万km前後と考えておきましょう。
クラッチディスクの摩耗は、エンジンの出力とそれに対するクラッチ側の許容容量のバランスや、当然ながらドライバーの技量、運転するシチュエーションによって、かなり大きく交換時期が左右されます。
特にドライバーの技量に関しては、長年マニュアル車を運転しているからといってクラッチに優しい運転しているとは限らず、技量の高い低いは無自覚であることも多いです。
そのため、2〜3万kmで交換時期を迎えることもあれば、20万km無交換でもまったく問題のないこともあります。

クラッチ劣化のタイミングに備えておこう

クラッチが交換時期を迎えるタイミングは車種やドライバーによって様々ですが、操作感や音などで寿命や劣化を感じ取れることが多いです。
そのため、高額な整備ですが、あらかじめそろそろクラッチ交換の必要があるかも…ということで、準備しておくことはよほどのイレギュラーがない限りは不可能ではありません。
自分自身でクラッチの劣化のサインに気付きにくい場合は、車検・点検等で整備入庫した際に、劣化具合に関して聞いておくと良いでしょう。
また、長年乗った車であれば、クラッチ交換のタイミングで次の車を検討してみるのもよいかもしれませんね。

Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。