プリウスPHEV新型試乗-走行性能、給電システムに優れたEV

2023年3月15日、プリウスPHEVがフルモデルチェンジを遂げて発売開始された。PHEVとしてどのように進化したのか、試乗を通して走りや乗り心地を評価した。

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GR86並みの加速力を誇るスポーツカーのようなプリウスPHEV

新型プリウスPHEV(60系)の全景

※上図:新型プリウスPHEV(60系)の全景

60系新型トヨタ プリウスPHEVは、まるでスポーツカーのようだった。

これが、試乗直後の率直な感想だ。

なんといっても、2.0LのPHEVシステムは強烈だった。システム最高出力は、驚愕の223psだ。0-100km/h加速は6.7秒と、スポーツカーのGR86並みの数値を叩き出している。先代となる50系プリウスPHVのシステム出力(122ps)と比較すると、2倍近くパワーアップしている。

 

60系新型プリウスPHEVは、アクセルを踏み始めた瞬間からパワフルだ。よりEV(電気自動車)らしく、モーターのトルクで瞬時に怒涛の加速を開始する。頭が後方に引っ張られる感覚は、今までのプリウスには無い新鮮さがあり、気持ちよい。

とにかくよく曲がる!

新型プリウスPHEV(60系)の全景

※上図:新型プリウスPHEV(60系)の全景

カーブに進入すると、微小な操舵に対しても瞬時に反応する。直線での走りの魅力にとどまらず、応答遅れの少ないハンドリングもスポーツカーのようだ。

先代50系プリウスPHVより、明らかに良く曲がる。GA-Cプラットフォーム(車台)は先代50系プリウスPHVでも使われていた。だが、フロント部分の横曲げ剛性は最大15%もアップしている。

 

良く曲がる理由はそれだけではない。前後の重量バランスの最適化と低重心化も大きな要因だ。駆動用バッテリーは、先代50系プリウスPHVでは荷室付近にあった。しかし新型60系プリウスPHEVでは、リヤシート下付近に移動されている。これによって、低重心化と前後の重量バランスも最適化されているのだ。

さらに全幅が拡大されたことで、前後のトレッドも広くなっている。低重心化も加わり、操縦安定性も増した。コーナーリングスピードも大幅に上がり、気持ちよく走れる。VSC(横滑り防止装置)の制御も緻密だ。ドライバーコントロール可能な範囲と思われるような滑りには寛容で、スポーツドライビングの邪魔はしない。

秀逸な制御の協調回生ブレーキ

新型プリウスPHEV(60系)のフロントフェイス

※上図:新型プリウスPHEV(60系)のフロントフェイス

走行性能面で重要なブレーキも秀逸だった。トヨタの協調回生ブレーキのフィーリングはナンバー1だと思っていたが、さらに改良され洗練さが増していた。

トヨタ以外の協調回生ブレーキで多いパターンが、ゴムを踏んでいるようなグニュグニュしたフィーリングだ。剛性感があまり無く、不安に感じるモデルも少なからずあった。

だが60系プリウスPHEVの協調回生ブレーキは、剛性感はもちろん、回生ブレーキと油圧ブレーキの切り替えが見事で違和感がないのだ。

新型プリウスPHEV(60系)のリヤエンド

※上図:新型プリウスPHEV(60系)のリヤエンド

例えば、スポーツドライビング時にカーブ手前で一気に減速すると、瞬時に油圧ブレーキが対応し減速を始める。軽くブレーキを残したままでの旋回初期段階では、油圧から回生ブレーキに移行するのだが、切り替わった瞬間がほとんど分からなかったほど自然だった。

通常走行では、通常回生ブレーキで減速し、停止寸前に回生ブレーキから油圧ブレーキに切り替わる。この切り替え時もほとんど分からないレベルだった。

つまり、ブレーキのカクっとした動きが激減するのだ。こうしたフィーリングを実現したのは、新型アクティブハイドロブースター オンデマンドポンプ加圧タイプと呼ばれる技術によるものである。運転が上手くなった気になれるブレーキだった。

プリウスPHEVはハイブリッド車より快適な乗り心地

新型プリウスPHEV(60系)の運転席

※上図:新型プリウスPHEV(60系)の運転席

60系プリウスPHEVの乗り心地は、ハイブリッド車よりは少々シットリとしており、快適性が増していた。ハイブリッド車はやや硬めな印象で、荒れた路面ではややゴツゴツ感が伝わってきた。だがPHEVはトントンと進み、マイルドになっていたのだ。

新型プリウスPHEV(60系)の後席

※上図:新型プリウスPHEV(60系)の後席

快適性が増した一因が、車重だ。PHEVはハイブリッド車に対して150kgもアップしている。併せてサスペンションも再チューニングされた。車重が重くなると一定の振動が伝わりにくくなる傾向があるため、乗り心地が少しよくなったと感じたのだろう。

新型プリウスPHEV(60系)の荷室

※上図:新型プリウスPHEV(60系)の荷室

脱ガソリン生活が可能!? 87kmもEV走行できる!

60系プリウスPHEVの通常走行は、まるでEV(電気自動車)のようだ。バッテリーの充電が十分なら、ほとんどエンジンは始動しない。モータードライブなので、するするとスムースに加速する。

走行用リチウムイオンバッテリーの容量は13.6kWhと大幅アップし、EV走行できる距離は87kmとなった。これだけ走れることが出来れば、日常の通勤や送迎、買い物などでは、ほとんどガソリンを使わない生活が可能だ。

電力を使い切ると、通常のハイブリッド車としてガソリンを使って走行する。この時の燃費は26.0km/L(FF、WLTCモード)だ。ハイブリッド車と比べると2.6km/Lほど燃費は悪化している。車重がハイブリッド車より150kgも重いことが要因だ。

 

PHEVとハイブリッド車のカタログ値から合計航続距離を計算すると以下の通りだ。どちらも軽く満タンで1,000km以上の航続距離を誇る。

 

燃費

ガソリン容量

EV航続距離

合計航続距離

PHEV

26.0km/L

40L

87km

1,127km

ハイブリッド車

28.6km/L

43L

-

1,230km

※合計航続距離=燃費×ガソリンタンク容量(+EV航続距離)

プリウスPHEVの走行コストは使い方次第!?

新型プリウスPHEV(60系)のエンジンルーム

※上図:新型プリウスPHEV(60系)のエンジンルーム

60系新型プリウスPHEVは、走行コストでもメリットがある。ガソリン価格は高値を維持している。電気代も高騰しているとはいえ、ガソリンで走るよりは少し安価だからだ。

この先、ガソリンも電気も価格が下がるとは想像しがたい。だが、PHEVならガソリンもしくは電気のどちらか、より安価なエネルギーを選択できるメリットもある。短距離移動が多い人であれば、ガソリンを使うハイブリッド車よりPHEVのほうがやや移動コストを安くすることができるだろう。

とはいえ、ハイブリッド車とPHEVの価格差は約90万円もある。2023年7月現在、補助金や減税措置で約61万円優遇されるものの、この価格差を少し安価な電気代で取り返すのは難しいだろう。

60系プリウスPHEVは急速充電器には非対応。その理由とは?

新型プリウスPHEV(60系)の充電口

※上図:新型プリウスPHEV(60系)の充電口

先代50系プリウスPHVには、急速充電に対応していた。しかし60系プリウスPHEVは非対応だ。コストが下がり、販売価格も安価になるメリットもある。が、そもそもPHEVは急速充電にあまり向かない。バッテリー容量が増えたとはいえ、わずか13.6kWhだ。このバッテリー容量で急速充電しても、すぐにバッテリーの保護制御が作動するため、少しずつしか電気が入らない。つまり、急速充電を使うメリットがないのだ。

さらにガソリンでも走れるPHEVが急速充電器を使うことで、本来必要としているBEV(バッテリー電気自動車)が順番待ちになるのは本末転倒といえる。

こうした事情もあり、60系プリウスPHEVは普通充電のみとなった。200V/16Aの普通充電で、4時間30分ほどで満充電となる。

1年で1,200km走れる!ソーラー充電システムがお勧めオプション

新型プリウスPHEV(60系)のインパネデザイン

※上図:新型プリウスPHEV(60系)のインパネデザイン

充電関連でお勧めしたいオプションが、ソーラー充電システムだ。価格は286,000円と少々高価な部類だ。だが、太陽光が当たる場所に駐車しているだけで発電し、バッテリーに電力を供給してくれる。太陽光がどれだけ当たっているかにもよるが、トヨタのデータによると1年で1,200km走行が可能な電力を賄えるという。オプション価格分をソーラー発電で元を取ることはできないだろうが「ソーラー発電でクルマが走れる」ということに少々ワクワクしてしまった。

新型プリウスPHEV(60系)のメーター

※上図:新型プリウスPHEV(60系)のメーター

そして、60系プリウスPHEVには100V・1,500Wに対応するコンセントが装備されており、外部へ給電が可能だ。ハイブリッド車にも用意されている。

とくに、もしもの時にクルマが発電車となってくれるのは大きなメリットだ。例えば、災害時に長時間の停電になっても、クルマから給電できる。スマートフォンの充電はもちろん、炊飯器や電子レンジ、テレビなどが使えるようになるのだ。HV給電モードでは、満充電・ガソリン満タンの状態から消費電力400Wで供給した場合、約5.5日の電力を供給可能だという。

こうした給電機能によって、アウトドアレジャーでも家電製品が使えるため、色々な楽しみ方ができるようになるだろう。

なんでもできる欲張りPHEVが60系プリウスPHEV

まるでスポーツカーのような走行性能に魅了された60系プリウスPHEV。だが、その本質は「かなり欲張り」なクルマだった。走行性能はもちろん、世界トップレベルの低燃費性能と予防安全性能に加え、ソーラー充電システムに給電システムといったクルマの枠を超えた機能まで備える。60系プリウスPHEV1台で、何でもできる、さらに楽しめる。車両価格は460万円と高価だが、価格以上の価値を感じた数少ないモデルだった。

60系5代目新型トヨタ プリウスPHEV価格

  • プリウスPHEV Z 4,600,000円

60系5代目新型トヨタ プリウスPHEV、EV航続距離、燃費などスペック

代表グレード

プリウスPHEV Z FF

全長×全幅×全高

4,600mm×1,780mm×1,430mm

ホイールベース

2,750mm

車両重量

1,570kg

エンジン型式

M20A-FXS

総排気量

1,986cc

エンジン最高出力

111kW(151ps)/6,000rpm

エンジン最大トルク

188N・m(19.2kgm)/4,400-5,200rpm

モーター型式

1VM

モーター最高出力

120kW(163ps)/rpm

モーター最大トルク

208N・m(21.2kgm)/rpm

電力用主電池

リチウムイオン電池

バッテリー容量

13.6kWh

燃費(WLTCモード)

26km/L

充電電力使用時走行距離

87km

システム最高出力

223ps

駆動方式

前輪駆動(FWD)

トランスミッション

電気式無段変速機

サスペンション

前:ストラット 後:ダブルウイッシュボーン

タイヤ(前/後)

195/50R19

最小回転半径

5.4m

 

プリウスのカタログ情報

トヨタ,プリウス
現行モデル
令和5年1月(2023年1月)〜現在
新車時価格
275.0万円〜460.0万円

プリウスの在庫が現在638件あります

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ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員