アライメント調整は、人間に例えると骨盤矯正のようなものです。
必須ではなくとも、車の健康のためにも大切な作業のひとつです。
馴染みのない言葉と感じる方も少なくない、車のアライメント調整についてわかりやすく解説します。
- アライメントとは?
- アライメント調整の必要性
- アライメント調整のタイミングの目安
- アライメント調整の費用と時間の目安
- 【補足】アライメント調整のやり方(DIY)
- アライメント調整に関する整備士のまとめ
アライメントとは?
ここで言うアライメントは「ホイールアライメント」「四輪アライメント」とも言います。アライメントは、地面に設置しているタイヤの整列具合を指します。
簡単に言うと、タイヤ(サスペンション)がメーカーの定める規定の範囲内において、「内側・外側を向いている」「タイヤに角度がついている」など、こうした位置関係を総称してアライメントと呼びます。
アライメントは以下の4つの要素から成り立ちます。
- キャンバー角
- トー角
- キャスター角
- キングピン角
車が安定して真っ直ぐ走り、コーナーを曲がり、タイヤが偏摩耗しないためには、これらの角度を調整する「アライメントの調整」が非常に重要です。
また、この記事ではアライメントの調整は「四輪アライメントの調整」を指しています。
整備工場では分かりやすく、タイロッドエンドで実施するトー角の調整のみで、サイドスリップを車検適合範囲に調整することを「アライメント調整」とお客さまに伝えることも多いので、混同しないように注意してください。
アライメント調整の必要性
「車に長く乗ってるけど、車屋さんにアライメント調整なんておすすめされたことない!」というひとも多いでしょう。しかし、決して不要な作業ではありません。
アライメント調整のメリット
アライメントを調整すると、車の足廻り(タイヤ含む)のバランスが矯正されます。
例えば、直進時に左右いずれかに車が流れる問題が解消され、直進安定性が改善されるメリットがあります。
これにより、ハンドルの細かい修正舵も減ることで、長距離ドライブでの疲労低減にもつながります。
また、コーナリング時の安定性向上や、タイヤの偏摩耗予防というメリットもあります。
タイヤの偏摩耗はタイヤの寿命を大きく縮めてしまうので、アライメント調整は大きな費用対効果を見込めることもあります。
アライメント調整をやらないとどうなる?
特に足廻りの整備や事故をしたときは、本来のアライメントから大きく狂ってしまうタイミングです。
もし仮にアライメント調整をしないままだと、以下のような問題があります。
- 車が真っ直ぐ走らない(左右どちらかに流れる)
- ハンドルセンターがズレる
- タイヤが偏摩耗する
- サイドスリップ量が規定値オーバーして車検に合格しない
また、アライメントがあまりにも大きく狂っている場合は、サスペンション類などの部品への負荷が大きくなって、部品の寿命が縮んだり、燃費が悪くなる要因のひとつになることもあります。
アライメント調整のタイミングの目安
一般的な車の使い方の場合、アライメントには調整するのに適したタイミングがあるので解説します。
アライメント調整・測定を気にしたい症状例
アライメントの確認をした方がよい事例をピックアップしました。
以下のものに該当する場合は、アライメント調整することをおすすめします。
- 脱輪や事故をしたとき
→足廻りやボディ、フレームの損傷によりアライメントがズレてしまう - 車が真っ直ぐ走らない
→直線道路でハンドルから手を離すと左右どちらかに車が流れる症状 - ハンドルセンターがズレている
→直線道路を真っ直ぐ走行するのに、ハンドルが左右どちらかにズレている症状 - タイヤが偏摩耗している
→タイヤの内側か外側が、その反対側と比較したときに異常に残り溝に差がある症状。実際に、タイヤを外から見るとまだまだ新品に近いくらいの溝があるのに、内側はツルツルになってることもある
【期間】アライメント調整は3~5年に1回が目安
アライメント調整の頻度は、場合によって異なります。
例えば、サーキットを走る人ならば足廻りの整備をした後に必ず実施した方が良いでしょうが、日常使いで車を使っている人であれば、アライメント調整とは無縁の方もいるでしょう。
そういった通常の車の使用をされている人の場合は、整備工場のスタッフからは必要以上にアライメント調整を推奨しないことがほとんどです。
もちろん、やるに越したことはありません。
アライメント調整が必要な症状が出ていなくても「愛車を大切にしたい」「気になるから安心材料としてアライメントを見ておきたい」という方は、3〜5年に一度くらいの頻度、または走行距離10万km前後で、なんとなく思い出したタイミングで良いので、アライメント調整・測定をお願いするのがよいでしょう。
【時期】スタッドレスタイヤの履き替え
四輪アライメントテスターは、高額なテスターなのでどの整備工場にも完備されているわけではありません。
ディーラーでもお店によってあるところとないところがあります。
一方でタイヤメーカーが運営しているタイヤショップであれば、四輪アライメントテスターを完備していることが多いです。
私の住んでいる関西圏では某タイヤショップの場合、64店舗中63店舗がテスター完備とのこと。
スタッドレスタイヤの履き替えのタイミングでタイヤショップを利用することがあれば、タイヤ・足廻りのプロに相談してみてもよいでしょう。
必要性を感じたら、その流れで一緒にアライメントを見てもらいましょう。
【部品交換】車高調、タイヤ、足廻り
足廻りの部品交換をした場合、四輪アライメント調整はぜひやっていただきたいです。
車高調を取り付けた場合は、サスペンションそのものが純正品とは別物に変わるので、アライメントも必ず変わってしまいます。
(車高調単体でもキャンバーやキャスター角を変更できるものもあります。)
タイヤ交換のタイミングで、偏摩耗が見受けられた場合や、ホイール含めてサイズを変更した場合もアライメント調整することをおすすめします。
また、足廻り部品として「アッパーアーム」「ロアアーム」「ラテラルリンク」といったアーム類の交換や取り外しをおこなった場合にも、アライメントは変わってしまいます。
また、ステアリングギヤボックスの脱着、エンジン脱着など直接的に足廻りを整備しない場合でも、サスペンション類が取り付けてあるクロスメンバの脱着が伴うと、これもやはり四輪アライメントの確認が必要です。
アライメント調整の費用と時間の目安
四輪アライメント調整にかかる費用と時間を解説します。
費用の目安
四輪アライメント調整にかかる費用は、お店や車種によって異なります。
また、測定費用と調整費用を分けているお店もあれば、あらかじめトータル金額で表示しているお店もあります。
測定+四輪の調整も実施したトータル金額だと、おおむね1.5万円〜3万円が費用の目安です。
時間の目安
四輪アライメントテスターのあるお店に直接持ち込んだ場合であれば、作業単体で1〜2時間が目安となります。
テスターのないお店に作業依頼した場合は、車両の回送を伴うのでかかる時間は要確認です。
【補足】アライメント調整のやり方(DIY)
DIYでアライメント調整に挑戦している方もいます。
しかし難易度は高く、時間も根気も必要です。
興味のある方はチャレンジしてみるのも良いかもしれません。
DIYする場合には、長時間広くて安全な場所を確保できることと、作業に必要な工具の準備が不可欠です。
- 車両の水平・中心を出す
- アライメントゲージを使用してトー角、キャンバー角の測定をする
- リヤ キャンバー→リヤ トー→フロント キャンバー→フロント トーの順番で調整する
- 再度、アライメントの数値を確認
大まかな流れとしては上記のとおりです。
キャスター角が調整可能な場合は、フロントキャンバー角の調整前に実施します。
最近は、レーザーポインターを使用したものやスマホアプリを使用したアライメントゲージも販売されており、DIYでのハードルは以前に比べると低くなっています。
アライメント調整に関する整備士のまとめ
四輪アライメント調整は車の健康のために必要なものでありながら、整備工場であればどこでもできるわけではなく、なかなかユーザーにとって身近なメンテナンスとは言い難いです。
大きな事故や部品交換が発生した場合は、アライメント調整は必須です。
また、普通に車を使用していても足廻り部品のブッシュ類などは、年数経過と走行距離によって劣化していき、それによりアライメントは変化していきます。
症状例で紹介したような「タイヤが偏摩耗している」「車がまっすぐ走らない」といったお悩みがある人は、費用対効果も大きいと思うのでぜひアライメント調整してみてください。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。