トヨタ シエンタ新旧比較-フルモデルチェンジで2022年のミニバン市場を席巻

トヨタ シエンタ新旧比較-フルモデルチェンジで2022年のミニバン市場を席巻

シエンタは2022年8月にフルモデルチェンジし、3代目が登場した。すぐに人気モデルとなった理由ご紹介する。また2代目シエンタとの違いを徹底比較評価した。

2022年のミニバン販売状況

ミニバンマーケットの販売は堅調だ。
ミニバンというと、トヨタ ヴォクシーやアルファードをイメージする人が多いだろう。しかしミニバンで一番販売台数が多いのは、コンパクトミニバンのホンダ フリードだ。2022年上期の登録車販売台数ランキングでも5位と好調である。使い勝手のよい小さなボディながら3列目シートがあり6~7人乗車が可能で、しかも価格も手頃だ。売れない理由が見つからない。
フリードに対抗すべく登場したのが、3代目トヨタ シエンタだ。2022年8月に販売が開始されると同時に凄まじい人気を博した。2022年10月には、登録車新車販売台数ランキング2位となり、フリードより約5,000台以上も売れている。

トヨタ シエンタの歴史

初代トヨタ シエンタは、2003年に登場した。全長4,100mmという小さなボディに3列シートをもつ画期的なモデルとしてデビュー。爆発的なヒットモデルとはいかないまでも、根強い人気を誇っていた。2010年に販売を終了している。
その後初代シエンタの後継車モデルが極度の販売不振に陥ったことが影響し、モデル末期まで根強い人気を誇っていたシエンタが翌2011年にマイナーチェンジして復活を果たす。
その後初代シエンタは、2015年まで発売され、約12年もの異例のロングセラーモデルとなった。

2代目シエンタ

2代目シエンタ

満を持して登場したのが、2代目シエンタだ。初代シエンタの可愛らしいデザインと大きく異なり、歌舞伎の隈取のようなデザインが施され、スポーティな外観となった。12年振りのフルモデルチェンジによって、居住性、走行性能、使い勝手などが大幅進化している。とくに燃費性能は1.5Lハイブリッドを搭載したことで飛躍的に向上している。
初期の2代目シエンタの自動ブレーキは対車両のみの物足りない設定だった。だが、2018年のマイナーチェンジ以降、歩行者検知式自動ブレーキになり、一定の予防安全性能を得た。

3代目シエンタ

3代目シエンタ

そして、3代目シエンタが2022年8月に登場した。プラットフォーム(車台)には最新のGA-Bを採用した。低重心化され、運動性能は大幅に向上している。
2代目では物足りなかった予防安全装備は、右左折時の歩行者検知も可能になるなど、クラストップレベルの実力まで進化した。燃費性能もライバル車であるホンダ フリードを圧倒するほどだ。ハイブリッド車は、隙の無い完成度を誇るモデルとなった。
一方ガソリン車は、アイドリングストップ機能すら装備されておらず、非常に物足りない仕様となった。

コンセプト・デザイン比較

3代目シエンタはシカクマルデザイン?

3代目シエンタの外観

3代目シエンタの外観

3代目トヨタ シエンタのデザインは、スポーティな3代目とは大きく変化し、愛着が湧くかわいらしいデザインとなった。

3代目シエンタのフロントフェイス

3代目シエンタのフロントフェイス

一般的にコンパクトカーはより大きく見せるデザインを採用するケースが多いが、3代目シエンタは、あえて大きく見せないデザインとした。ボディのコーナーは、丸くしたシカクマルシルエットとし、愛着の湧く可愛らしさも表現している。さらに、ボディサイドに入ったサイドプロテクションモールは、気兼ねなく使えるツール感をアピールしている。

2代目シエンタの外観

2代目シエンタの外観

2代目シエンタのデザインは「Active & Fun」がキーワードだ。トレッキングシューズをイメージし、機能性と動感を表現している。

2代目シエンタのフロントフェイス

2代目シエンタのフロントフェイス

台形型の大きなグリルやヘッドライトに加え、ヘッドライトやリヤコンビネーションランプからつながるグラフィックは、まるで歌舞伎の隈取のようにも見え、なかなか個性的だ。

3代目は欧州車のようなデザインでユニーク性という面ではやや微妙だ。対する2代目のユニーク性は、かなり高いレベルにある。今でもあまり古さを感じさせないのもさすがだ。

安全装備比較

雲泥の差となった予防安全装備

3代目シエンタのインパネ

3代目シエンタのインパネ

3代目トヨタ シエンタの予防安全装備は、このクラスで世界トップレベルの実力を誇る。2代目とは比べ物にならないレベルだ。

2代目シエンタのインパネ

2代目シエンタのインパネ

2代目シエンタは、マイナーチェンジ後にようやく昼間の歩行者検知機能をもつ自動ブレーキが装備された。対する3代目シエンタの自動ブレーキは、昼夜の歩行者と自転車、昼間の自動二輪まで検知している。さらに、右左折時の歩行者、右折時の対向車にも対応し衝突回避・被害軽減が可能になった。

3代目シエンタのメーター

3代目シエンタのメーター

3代目には、自動運転のような運転支援機能であるPDA(プロアクティブドライビングアシスト)も全車標準装備された。リスクを先読みし運転をサポートする機能だ。前方に横断歩行者を検知すると早めの減速をアシストしてくれる。駐車車両や路肩の歩行者との距離が近い場合、距離を取るようにステアリング操作をサポートする。
通常走行時にアクセルをオフにすると、先行車との車間距離を保つよう自動で減速する。停止時や急な割込み時には、ドライバーが自らブレーキを踏む必要がある。だが、ブレーキ操作量が大幅に減り疲労軽減に繋がるので、より衝突リスクの軽減が可能だ。
エントリーグレードのXでは、ブラインドスポットモニターやパーキングブレーキサポート(後方)といったローテク安全装備がオプションになっているので注意が必要だ。

2代目シエンタのメーター

2代目シエンタのメーター

2代目シエンタの歩行者検知式自動ブレーキは一部グレードでオプションだ。サイド&カーテンエアバッグは全車オプションだったので、中古車を買う場合、安全装備をしっかりと確認する必要がある。

室内空間・荷室の使い勝手比較

小さなボディサイズを維持しながら広い室内を実現した3代目シエンタ

3代目シエンタのフロントシート

3代目シエンタのフロントシート

2代目シエンタのフロントシート

2代目シエンタのフロントシート

3代目シエンタは、コンパクトカーらしさを重視し2代目シエンタと同じ全長4,260mm、全幅1,695mmとした。全高は+20mmとし1,695mmとなった。

3代目シエンタの2列目シート

3代目シエンタの2列目シート

2代目シエンタの2列目シート

2代目シエンタの2列目シート

室内スペースはそれほど大きな差が無いように感じるが、前後のカップルディスタンスは先代比+80mmの1,000mmとし、広々とした2列目シートを実現している。
また、全高をアップしたことにより、ヘッドクリアランスもアップされ、より広々感が向上している。

3代目シエンタの3列目シート

3代目シエンタの3列目シート

2代目シエンタの3列目シート

2代目シエンタの3列目シート

3列7人乗りでは、バックドアの開口部高さを+15mmの1,070mmに。室内高も+20mmとなる1,105mmとしたことで、27インチ相当の自転車が簡単に積載できるようになり使い勝手が向上した。
スライドドアは、開口部の高さが+60mmの1,200mmとなり、大人でも頭をあまり下げなくても乗車しやすくなっている。

3代目シエンタの荷室

3代目シエンタの荷室

2代目シエンタの荷室

2代目シエンタの荷室

3代目シエンタは、全般的に2代目シエンタよりもやや広くなり、使い勝手も向上した。ただ、その差はそれほど大きくはない。広さや使い勝手にそれほどこだわらないというのであれば、中古の2代目シエンタでも十分だ。
少し差が出るのが、最小回転半径だ。2代目シエンタが5.2mなのに対して、3代目は5.0mと小さくなっている。5.0mは、Bセグメントコンパクトカーの中ではトップレベルの小ささだ。狭い駐車場などでは、とても扱いやすい。

走行性能と燃費性能比較

燃費、走行性能すべてが大幅進化した3代目シエンタ

2代目、3代目シエンタの出力と燃費は以下の通りだ。

ハイブリッド車(FF、WLTCモード)

  システム出力 燃費
3代目1.5Lハイブリッド 116ps 28.2~28.8km/L
2代目1.5Lハイブリッド 100ps 22.8km/L

ガソリン車

  出力 燃費
3代目1.5Lガソリン 120ps&145Nm 18.3~18.4km/L(FF、WLTCモード)
2代目1.5Lガソリン 109ps&136Nm 20.2km/L(FF、JC08モード)

3代目シエンタのエンジンルーム

3代目シエンタのエンジンルーム

2代目シエンタのエンジンルーム

2代目シエンタのエンジンルーム

3代目トヨタ シエンタは、パワーユニットの出力や燃費が大幅に向上している。ハイブリッド車は、アクセルを踏んだ瞬間から力強く走る。2代目シエンタは、反応の鈍さやパワー不足を感じるときがあったが、3代目では完全払拭されていてキビキビとよく走る。
3代目シエンタの1.5Lハイブリッドシステムは、排気量こそ同じ2代目と同じ1.5Lだが、エンジンなどほぼすべてが刷新された最新式である。パワーアップしつつ20%以上も燃費をアップは素晴らしい進化だ。

3代目シエンタには、低重心化された最新のGA-Bプラットフォーム(車台)が使われている。2代目ではやや車体上部が振られる傾向があり、カーブなどでは多少フラフラするような動きがあった。しかし3代目の車体の姿勢はとても安定している。
さらにハイブリッド車は、重心高がさらに下がり、前後の重量バランスも改善されている。これは大きく重いバッテリーをリヤシート下付近に設置した恩恵だ。少し速い速度でカーブに進入しても、向きがスムースに変わり、車体はピタッと安定した姿勢で曲がっていく。想像以上にスポーティで、気持ちがよい走りができる。

3代目シエンタの乗り心地は、やや硬めだ。2代目は、乗り心地重視のややソフト系だった。その分、カーブでは車体が大きく傾きがちだった。乗り心地や操縦安定性は好みの部分が大きいが、ビュンビュン走りたい人は3代目、のんびり快適に走りたいのであれば2代目がお勧めだ。
静粛性は、3代目シエンタが上回る。モーター走行できる領域が増えたことも影響して、より静粛性を高く感じられる。

3代目シエンタのガソリン車は、燃費性能に優れパワフルに走る。1.5Lエンジンが高回転域に入ると、かなり賑やかなサウンドとなり、静粛性という面では少々物足りない。
ガソリン車には、残念ながらアイドリングストップが用意されていない。トヨタいわく、燃費性能をライバル車と比べると、アイドリングストップ機能を付けなくても競争力があるとのことだ。しかしカーボンニュートラル時代であることを考えると、ガソリン車は選択肢から外したい。3代目シエンタは、ハイブリッド一択だ。

おすすめは2代目シエンタ? それとも新型の3代目?

超長期納期と価格を含むと、2代目もあり!

車両の総合評価は、フルモデルチェンジした3代目シエンタが2代目を大きく上回る。
だが購入時の予算を重視するならば、中古の2代目シエンタと新車の3代目シエンタの価格差は大きい。3代目シエンタは機能向上により、価格もアップしている。例えば、3代目シエンタハイブリッドの新車価格は7人乗りFFで291万円だ。対する2019年式2代目シエンタハイブリッドの最上級グレードであるGクエロの中古車相場は、約180~240万円だ。約50~110万円もの価格差がある。

しかも、コロナ禍における半導体や部品不足により、3代目シエンタの納期は不明な状態が続いている。対する2代目シエンタは中古車なので即納が可能だ。
この価格差と納期をどう判断するかで、3代目と2代目どちらを選ぶかが決まってくる。

クルマの性能が高い方がよく、予算も十分で半年から1年前後待てるというのであれば、3代目シエンタがお勧めだ。しかし、現在のクルマの車検が切れてしまう、購入費用をなるべく抑えたいならば2代目シエンタになる。
クルマの性能差は大きいが、歩行者検知式自動ブレーキが付いたマイナーチェンジ後の2代目シエンタなら、安全性能も十分なレベルなので、物足りなさはそれほど感じないだろう。

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3代目トヨタ シエンタ 価格・スペック

3代目トヨタ シエンタ価格

1.5Lハイブリッド FF(前輪駆動)車

  5人乗り 7人乗り
X 2,380,000円 2,420,000円
G 2,650,000円 2,690,000円
Z 2,870,000円 2,910,000円

1.5Lハイブリッド 4WD(E-Four)車

  5人乗り 7人乗り
X 2,578,000円 2,618,000円
G 2,848,000円 2,888,000円
Z 3,068,000円 3,108,000円

1.5Lガソリン FF(前輪駆動)車

  5人乗り 7人乗り
X 1,950,000円 1,990,000円
G 2,300,000円 2,340,000円
Z 2,520,000円 2,560,000円

3代目トヨタ シエンタ燃費、ボディサイズなどスペック

代表グレード シエンタハイブリッドZ 7人乗り FF
ボディサイズ 全長4,260mm×全幅1,695mm×全高1,695mm
ホイールベース 2,750mm
最低地上高 140mm
最小回転半径 5m
車両重量 1,370kg
総排気量 1,490cc
システム出力 85kw(116ps)
ミッション 電気式無段変速機
WLTCモード燃費 28.2km/l
バッテリー 種類 ニッケル水素
サスペンション 前/後 ストラット/トーションビーム
タイヤサイズ 185/65R15

シエンタのカタログ情報

トヨタ,シエンタ
現行モデル
令和4年8月(2022年8月)〜現在
新車時価格
195.0万円〜310.8万円

シエンタの在庫が現在323件あります

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ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員