この記事の目次 CONTENTS
お勧め1 次期モデルが登場しなければ、さらなる高値に!?
お勧め 2 手軽に買えリスクも少ない軽オープンスポーツカー
お勧め 3 古いほど価値が上がる? 中古車でも高価すぎるスーパーカー

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

スポーツカーのMTモデルが密かに人気だ。世界的なCO2減の流れを受け、今後ガソリン車のスポーツカーが登場する可能性は極めて低い。最後のチャンスだからこそ、中古車価格は異常値ともいえるレベルに達している。
そこで今回は比較的新しく、10年落ちになっても高額査定が期待できる中古スポーツカーを3台厳選した。
*中古車価格は2022年9月時点のものです。

お勧め1 次期モデルが登場しなければ、さらなる高値に!?

スバル WRX STI(VA系)

WRX STI

VA系WRX STIは、2014年に登場した。登場前はインプレッサWRX STIと呼ばれていたが、このモデルからインプレッサの名が外されている。

搭載エンジンは、2.0L DOHC水平対向4気筒ターボだ。名機と呼ばれるEJ20型を搭載し、308psを発揮した。ミッションは、6速MTのみである。
スバルこだわりのAWDは、DCCD(ドライバーズ・コントロール・センター・デフ)を採用し、前後輪の駆動力配分を前41:後59に設定した。
AWDの設定は、ドライバーのスタイルや走行シーンによって自由に変更が可能だ。

  • AUTO-モード(シャープな回頭性が可能)
  • AUTO+モード(トラクション重視)
  • マニュアルモード(6段階の設定)

自分好みの設定も可能で、走る楽しさをアシストしている。

また、さらに走行性能を高めた限定車S207やS208、TYPE RA-Rなどが販売され、発売と同時に完売するなど非常に高い人気を誇った。

WRX STIの価格

スバルWRX STIの中古車価格は、高年式車両のほうが高い傾向にある。
2019年式だと、限定車であるRA-Rの新車価格が約500万円だったのに対して、中古車価格は約690~800万円だ。新車価格を大幅に超えている。
2018年のS208は、新車価格が約630万円だったのに対して、中古車価格は600~970万円程度となっている。ほとんどの車両が新車価格を超えている。

通常モデルの2019年式の場合、中古車価格相場は約510~660万円だ。新車価格が390~410万円だった。販売が終了していることもあり、通常モデルでも新車価格越えだ。

2022年現在の10年落ちである2012年式になると、一世代前のモデルであるインプレッサWRX STI(GR系)が対象だ。2012年式の中古車価格相場は、約210~300万円だ。新車価格は、360~370万円程度だったので、新車価格に対して約58~81%である。10年も経ったモデルが、これほど高いリセールバリューを保っている。

今後のWRX STIの中古車相場は、社会情勢次第ではあるものの、急激に値下がりすることは少ないだろう。長めの期間で中古車価格の流れを観察しつつ、比較的リーズナブルな価格で、走行距離も少なく程度のよいモデルであれば、即買いしてもよいだろう。多少高値でも、売却時も高値で売れるので大損することは無いと思われる。

懸念されるのは次期型WRX STIの存在だ。EV化の流れで、次期モデルは排ガスや燃費問題で登場しない可能性がある。純ガソリン車のWRX STIがこのVA系で最後になると分かった時点で、さらに中古車価格は高騰するかもしれない。

WRX STIの売却時のポイント

もし新車購入で高年式のWRX STIに乗っているのであれば、今が売却のチャンスだ。今後の相場は読みにくいが、今なら3年落ち2019年式でも程度がよいと新車価格並みで売却ができそうだ。新車価格並みで売却できれば、ほぼ3年間タダで乗れたことになる。これを元手に、新たなスポーツカーを買うというのもありだろう。

売却時に注意したいのは、低年式になると、過度なカスタマイズは逆にマイナス査定の要因になることだ。WRX STIを買っても、過度のカスタマイズはお勧めしない。
また、走行距離も少ない方が高査定になるのだが、外観を含め傷などが多いと「雑な扱いを受けてきた車両」と認識され、低めの査定になることもある。大切に乗ってきた車両であることアピールするためにも、内外装を綺麗にしておくことが重要だ。

 

お勧め 2 手軽に買えリスクも少ない軽オープンスポーツカー

ホンダS660

ホンダS660

ホンダS660は、2015年に登場した。世界でも最小レベルの軽オープンミッドシップスポーツカーだ。
S660は、1991年にデビューした軽オープンミッドシップスポーツカーであるビートの後継モデルでもある。ビートは、1996年に販売を終了しており、なんと約19年振りとなる後継モデルの登場で、スポーツカーファンの間では話題になった。

低重心・高剛性の専用プラットフォームには、660cc直3気筒エンジンを搭載した。出力は軽自動車の自主規制内の64ps、最大トルクは104Nmなのが惜しい。この自主規制がS660にとっては足かせとなった。
オープンボディであるS660の車重は、830~850kgとやや重い。そのため、64psの出力では少々アンダーパワーであり、S660の実力を出し切れていなかった。

S660の大きな魅力はハンドリングにある。前後重量配分は45:55に設定され、旋回性能は抜群だ。低重心化されたプラットフォームの恩恵で、路面にピタリと張り付くような走りは、小さくてもまさにスポーツカーといった印象を受ける。ミッションは6MTの他にCVTの設定もある。人気が高いのは6MTだ。

 

S660の価格

S660の中古車相場は、多くの年式で新車価格超えとなっている。
新車価格は200~230万円位だが、2015年式でも中古車価格は150~220万円。新車価格に対して、75~96%程度と非常に高値を維持している。
これは2022年3月に生産を終了し、後継モデルが無いことが大きく影響している。さらに今後、純ガソリン車で軽オープンスポーツカーは登場しないだろうという予想のもと、高値での売却を期待した転売ヤーや中古車店が買い漁ったことも要因だ。

高年式で特に人気が高いのが、モデル末期である2021年に投入されたモデューロXバージョンZである。走行性能を高め、さらに上質感もアップされた仕様だ。(通常のモデューロXも人気がある。)
このモデューロXバージョンZの新車価格は約315万円だ。2021年式の中古車価格は、340~440万円位と完全に新車価格を超えている。

スポーツカーの中古車価格は、その時のムーブメントが大きく影響する。そのため、現在のようなスポーツカー人気が続くということが前提だが、低年式になっても高値で売却できそうだ。2015~2017年式を200万円以下で購入し5年ほど乗ったとしても、かなり高値で売却できる可能性が高い。S660の人気が高まれば、買った値段に近い価格で売却もありえるだろう。
多くの場合、10年以上経過したクルマのリセールバリューはゼロに近い。S660の場合、買うときは高値だが、ほとんど値落ちしないので、それほどお金がかからず乗ることができるだろう。

S660の売却時のポイント

現在、S660に乗っているのであれば、売却のチャンスでもある。特に、高年式で程度のよい車両であれば、新車価格に近い価格で売却できる可能性がある。高査定が期待できるのは、モデューロXの6MT車、αの6MT車で走行距離が少なめの車両だ。

お勧め 3 古いほど価値が上がる? 中古車でも高価すぎるスーパーカー

日産GT-R

日産GT-R NISMOニスモ

日産GT-Rは、世界のスーパーカーと肩を並べるモデルとして2007年に登場した。V6 3.8Lツインターボエンジンにトランスアクスル4WDで構成された、ユニークな仕様だった。

GT-Rは、年々進化させることをユーザーに約束したのも新たな試みだった。
実際は毎年という訳にはいかなかったものの、2007年モデルと最新の2022年モデルでは、まるで別のクルマのような乗り味とパフォーマンスになっている。例えば、デビュー時のエンジン出力は480&580Nmだったが、最新モデルでは570&637Nmまでパワーアップされている。

初期のGT-Rは、ある意味スポーツカーらしく、とても快適とはいえなかった。ミッションの音やエンジン音などのノイズが大きく、足回りはガチガチに固められていた。
しかし年々進化し、最新モデルでは快適性、走りのパフォーマンス共に大幅に向上している。

GT-Rの価格

進化と並行して価格もアップした。
デビュー時エントリーグレードの価格は約780万円だったが、最新モデルでは約1,080万円となった。最新モデルで最も高価なモデルは、GT-Rニスモ スペシャルエディションで約2,460万円となっている。
GT-Rの中古車は、一時期は順調に値落ちしていた。しかし現在、以下の要因でGT-Rの中古車相場は上昇中だ。

  • 長期販売されていることから、いつ販売終了になるか分からない
  • 次期GT-Rは純ガソリン車では無くなる、電気自動車になるという憶測が入り乱れ
  • 今の内にGT-Rを楽しみたい、希少車として価値が上がると読んだ中古車業者などの買い漁り

こうした流れを受け、2022年モデルは即完売した。

中古車のGT-Rの流通量は少なく、中古車価格もかなり幅があるが、総じて超高値を維持している。
デビュー直後の2007~2008年式で、中古車価格は780~1,000万円程度となっている。この年式でも、ほぼ新車価格超えだ。もはや、異常値といえる。

2017年式の中古車価格相場はグッと上がり1,380~1,780万円程度という高値だ。新車価格を超えている。GT-Rニスモになると、新車価格が約1,870万円だったが、中古車価格は2,500万円以上だ。さらに、2022年式GT-Rニスモスペシャルエディションは、新車価格が約2,460万円だったが、新車コンディションの中古車になると5,000万円前後で売られているという異常事態だ。

GT-Rの中古車購入は、かなり価格変動が読みにくいだろう。この中古車価格高騰がいつまで続くかは分からないからだ。暴落したら、目も当てられない。
だが、まだまだ中古車価格が上がると読んで、GT-Rを楽しむのもよいだろう。売るタイミングは、中古車価格の変動を常にチェックしていれば、それほど大損はしないはずだ。
中古車価格の高騰がこれから3年維持されるという前提であれば、スーパーカーのGT-Rを楽しめるかもしれない。