シビックvsマツダ3

2021年9月に11代目となる新型シビックが発売された。今回はホンダ シビックと同様に人気のCセグメントカーであるマツダ3を徹底比較した。乗り心地や性能面のみならずリセールバリューについても考察したので購入の検討材料にしてほしい。

この記事の目次 CONTENTS
ホンダ シビックのこれまでの生産モデル
マツダ3のこれまでの生産モデル
ホンダ シビックの特徴
マツダ3の特徴
1.燃費比較
2.価格比較
3.購入時の値引き術
4.デザイン比較
5.室内空間と使い勝手
6.安全装備・運転支援機能の比較
7.走行性能の比較
8.リセールバリュー比較
9.まとめ・総合評価
ホンダ シビックの 価格・燃費・サイズ・グレード
マツダ3 価格の価格・燃費・サイズ・グレード

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

ホンダ シビックのこれまでの生産モデル

ホンダ シビック ホンダ シビック

ホンダ シビックは、2021年9月にフルモデルチェンジし11代目となった。シビックは歴史あるモデルというだけでなく、ホンダの技術力を象徴するモデルでもあった。

初代シビックは、1972年に誕生した。初代シビックのエンジンには、ホンダ独自の排ガスクリーン技術CVCCを搭載し、当時世界一厳しい米国マスキー法(排出ガス規制法)を世界で最初にクリアしている。このCVCC技術は、ホンダが北米で躍進するきっかけとなった。

日本で高い人気を誇ったのは、3代目となる通称「ワンダーシビック」だ。
搭載したDOHC16バルブエンジンは、ホンダらしい高回転までスムースに回り、パワフルなエンジンで脚光を浴びた。モータースポーツでも活躍し、人気モデルとなった。
3代目シビックは、1983-1984日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。その後、しばらくシビック人気は続いた。

だが、販売台数は7代目シビックから低迷した。
8代目シビックはボディサイズを拡大している。北米での要望や1クラス下のフィットとボディサイズが近かったためだ。ハッチバックも廃止され、一気に存在感を失った。
そして、9代目シビック以降は、一部特殊な車種を除き日本から撤退することになった。

そのまま、シビックは二度と日本マーケットには投入されないように思われた。だが2017年に10代目シビックが登場した。セダンと5ドアハッチバックを設定し、7年振りに日本マーケットに再投入されたのだ。ホンダの国内営業は10代目シビックでセダン復権と息巻いたが、2020年に販売を終了している。ホンダ国内営業の諦めの早さを感じさせた。

そして、2021年9月に11代目シビックが登場する。さすがにセダンの設定はなく、ハッチバックのみの設定となった。プラットフォームやエンジンは10代目シビックベースの進化バージョンだ。デザインも大きく変更され、走行フィーリングはまったく異なるものとなった。
2022年には、本命のハイブリッドとタイプRが投入される予定だ。

マツダ3のこれまでの生産モデル

マツダ3ファストバック マツダ3ファストバック

マツダ3は、2019年に登場した新型車だ。2019年のフルモデルチェンジを機に、車名をアクセラから欧州などで使われていたマツダ3へと変更した。初代アクセラから数えると、マツダ3は4世代目になる。

初代マツダ アクセラは、2003年に登場したCセグメントのコンパクトカーだ。5ドアハッチバックとセダンが用意され、エンジンは1.5L、2.0L、2.3Lが設定されていた。このシリーズには、2.3Lターボエンジンを搭載したパワフルなマツダスピードもあり、スポーティな走りが話題となった。

2代目アクセラは、2009年に登場した。初代アクセラのイメージも残しつつ、現在のマツダ車に通じる個性的なデザインとなった。アイドリングストップ機能なども用意され、環境性能も向上させている。このモデルにも、初代で人気だったマツダスピードが設定された。

マツダのデザインテーマである魂動デザインが採用されたのが、2013年に登場した3代目アクセラだ。躍動感あるデザインと、スポーツカー並の加速力を誇り人気を得ている。
エンジンには新開発の2.2Lディーゼルエンジンやトヨタから技術供与を受けた2.0Lハイブリッドも用意された。モデル途中で1.5Lディーゼルも投入されている。
ちなみに2.0Lハイブリッドの販売台数は極めて少ない。そのためか、マツダ3にはハイブリッド車の設定はない。

2019年、4代目へのフルモデルチェンジを機に、車名を欧州などと同じマツダ3へ改名した。
好評だった2.2Lディーゼルエンジンは姿を消し、1.5Lディーゼルのみとなった。しかし、次世代ガソリンエンジンである2.0Lの「SKYACTIV-X」を搭載している。世界初となるマツダ独自の燃焼方式「SPCCI( Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」を採用した。ディーゼルエンジンとガソリンエンジンのいいとこ取りで、低燃費でありながら大トルクを実現している。

ホンダ シビックの特徴

11代目ホンダ シビックの開発コンセプトは「爽快シビック」だ。「人中心」の開発思想ですべてを磨き上げ、“人の気持ちよさや楽しさ”を徹底的に追求し、開発された。先代にはセダンの設定があったが、11代目からは5ドアハッチバックのみとなっている。

シビックのボディサイズは、全長4,550mm×全幅1,800mm×全高1,415mmだ。ホンダはシビックをCセグメントとしているが、全長4,500mm越えの全長は、このクラスではやや大柄である。1クラス上のモデルのような立派な見栄えが魅力だ。
プラットフォーム(車台)は先代モデルの進化版だが、先代より全長を30mm、ホイールベースを35mm拡大した。そのため、室内スペースは広い。
エンジンも1.5Lターボと先代モデルと同じだ。だがホンダのエンジンらしく気持ちよく高回転まで回るよう進化している。ミッションは、CVTの他に6MTが用意された。

マツダ3の特徴

マツダ3は「日常が鮮やかに輝くパーソナルカー」をコンセプトに、デザイン、走行性能、静粛性、質感などの基本要素に磨きをかけた。

注目は、デザインだ。マツダのデザインコンセプトである魂動デザインはより進化し、シンプルで美しいスタイルとなった。

パワーユニットの選択肢は豊富で、しかも個性的だ。1.5Lと2.0Lのガソリンに加え、1.8Lディーゼルが設定された。超パワフルな2.2Lディーゼルは搭載されていない。さらに新開発の2.0LスカイアクティブXも用意された。世界初となるマツダ独自の燃焼方式「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」にマイルドハイブリッドシステムも組み合わせ、低燃費でパワフルなパワーユニットとなっている。

ボディ形状は、従来通りセダンと5ドアハッチバックの2タイプだ。グレードにより異なるが、ミッションは6速ATの他、6速MTの設定もある。

1.燃費比較

ホンダ シビックの評価は 2.0
マツダ3の評価は 3.0

燃費は、ハイブリッド車に今後期待したいシビック

シビックとマツダ3の燃費は以下の通り(FF、WLTCモード)。

  • シビック1.5Lターボ(CVT) 16.3km/L
  • マツダ3ファストバック 1.5Lガソリン(AT) 16.6km/L
  • マツダ3ファストバック 2.0Lガソリン(AT) 15.6km/L(セダン15.8km/L)
  • マツダ3ファストバック 1.8Lディーゼル(AT) 19.8km/L(セダン 20.0km/L)
  • マツダ3ファストバック 2.0Lガソリン e-SKYACTIV X (AT) 17.4km/L

ホンダ シビックは、2022年にハイブリッド車が投入されるとはいえ、現状パワーユニットの選択肢が1つという寂しい状態だ。1.5Lターボエンジンはハイオク仕様である。昨今のガソリン高騰が続く現状では、なかなか選びにくい。

マツダ3のガソリン車は、マイルドハイブリッドシステムなども無い純ガソリン車だ。燃費値はまずまずといった数値だが、クルマの電動化が急速に進んでいる状態では、少々選びにくい。

ディーゼルエンジンは、力強さと低燃費を両立している。だが急速に進むクルマの電動化を考えると、10年後を考えると心もとない。
ディーゼルエンジンに使う軽油は、レギュラーガソリンより20円/L前後も安価だ。ガソリン高騰時代には、経済的に大きなメリットとなる。燃料費という視点では、ハイブリッド車に近い。
e-SKYACTIV Xは、ガソリン車よりも燃費がよいが、ディーゼル車ほどではないという微妙な燃費値だ。あまりに最新技術を駆使したこともあり、車両価格はディーゼル車よりも高価である。こうなると、燃費視点では選びにくいパワーユニットといえる。

2.価格比較

ホンダ シビックの評価は 2.0
マツダ3の評価は 3.0

コストパフォーマンスでシビックを圧倒するマツダ3

価格は以下の通り

  • ホンダ シビック(FF、CVT) 3,190,000円(LX)~3,539,800円(EX)
  • マツダ3 ファストバック(AT) 2,221,389円(FF、15S)~3,688,463円(4WD、X Burgundy Selection)

ホンダ シビックは、LXとEXのシンプルな2グレード構成だ。主に豪華装備による差がついている。

  • アダプティブドライビングビーム
  • パワーシート
  • リヤベンチレーション
  • ワイヤレス充電
  • スエードシート
  • ボーズサウンドシステム

エントリーのLXでも、装備は充実しているものの、純ガソリン車で約320万円という価格は、もはや輸入車並だ。安価とは言い難い。

マツダ3の場合、レザーシートが標準装備されているマツダ3の2.0L、Lパッケージでも約270万円だ。一般的にはガソリン車よりディーゼル車の方がコスト高になり価格は高くなりがちだが、リーズナブルな特別仕様車であるマツダ3の1.8Lディーゼル、XD ブラックトーンエディションは、約284万円である。多少の装備差があるとはいえ、高コストなディーゼル車なのにシビックより安価だ。レザーシートが装備されたXD Lパッケージでも約297万円と、いかにシビックが高価な価格設定か分かる。ガソリン車とディーゼル車では、マツダ3のコストパフォーマンスが光る。

ただし、マツダ3のなかでも世界初のSPCCI技術を搭載した2.0L e-SKYACTIV Xを搭載したモデルは、他のグレードと比べるとかなり高価になる。
レザーシートが標準装備されたX Lパッケージで約338万円と、シビックの上級グレードであるEXに近い価格だ。世界初の技術を搭載していても、一般的な1.5Lターボを搭載したシビックより安価なので、シビックと比べるとマツダ3のコストパフォーマンスは優れていると言える。ただ、トヨタ カローラスポーツなどと比べると、やや高価な印象となる。

3.購入時の値引き術

ホンダ シビックの評価は 3.5
マツダ3の評価は 2.5

値引きに期待大なシビック

ホンダのディーラーは、高級車を売るのが苦手な傾向がある。300万円を余裕で超える価格のシビックも同様だ。デビュー直後のモデルだが、上手く競合すれば十分に大幅値引きが期待できるだろう。

効果的なのは、価格帯が近い同じCセグメントのモデルと競合させることだ。
シビックは少々高価格帯なので、マツダ3ではe-SKYACTIV Xを搭載したX Lパッケージあたりと競合させるとよい。マツダ3のコスパの良さをアピールしながら、支払総額が近くなるなら購入対象になると伝えて、値引きの要求をするとよい。

また、価格帯の近いフォルクスワーゲン ゴルフやトヨタ カローラスポーツハイブリッドの最上級グレードなども加えて競合させると効果的だ。
シビックは、熱心なホンダファンやMT車好きのマニアが好むクルマだ。そのため、シビック指名買いと営業マンに悟られたら値引きだとほぼ難しくなるので、先に競合車の見積りを取り、本命はシビックではないと営業マンに思わせることが重要だ。車種にこだわりはそれほどなく、よいクルマが安く買えれば、といった感覚で商談することが大切だ。

マツダ3も基本的にシビックと同様だ。ただ、マツダディーラーは値引き抑制をしている。簡単には値引きに応じないので、ゴルフやカローラスポーツ、インプレッサなどと競合させるのと同時に、長期戦に持ち込みたい。営業マンやディーラー店舗では、ノルマなどの都合上焦る時期がある。こうしたタイミングを待つのも大幅値引きのコツだ。売り手側の都合を逆手に取れば、大幅値引きが期待できる。そのためには、1ヶ月以上時間をかけて商談する必要がある。

4.デザイン比較

ホンダ シビックの評価は 4.0
マツダ3の評価は 4.0

手堅いデザインとなったシビック

ホンダ シビックの外観 ホンダ シビックの外観

先代ホンダ シビックは、まるでロボットのようなアグレッシブなデザインだった。しかし11代目シビックは、先代とはまったく異なるスッキリ感あるデザインへ変更している。
デザインコンセプトは「Sokai Exterior」だ。走る楽しさを想像でき、爽快な移動や生活の拡がりまでをも予感させるデザインとした。

ホンダ シビックのフロントフェイス ホンダ シビックのフロントフェイス
ホンダ シビックのリヤエンド ホンダ シビックのリヤエンド

デザインへのこだわりは細部にまで及ぶ。ホンダ車の多くは、タイヤはフェンダーの内側に入り、フェンダーとタイヤの隙間は大きい傾向にある。タイヤとフェンダーのラインをできる限りツライチにする欧州車とは逆のデザインで、カッコよいシルエットという面では、やや物足りないものだった。
そこで、ホンダはリヤフェンダーの端を従来の約90°内側に折っていたのを、180°まで折る技術を採用した。これにより、フェンダーギリギリまでタイヤを外側に出すことができ、よりワイドでローなシルエットとしている。

インテリアデザインのコンセプトは「Fine Morning Interior」だ。最高に爽やかな1日のはじまりを提供するデザインとした。

ホンダ シビックのインパネ ホンダ シビックのインパネ
ホンダ シビックのメーター ホンダ シビックのメーター

インパネデザインは、水平基調でシンプルにまとめられている。ダッシュボード部分のノイズは無く、前方の視界もよい。シンプルながら、パンチングメタルのエアコンアウトレットは、なかなかユニークなデザインで高級感もある。

ユニーク性重視ならマツダ3

マツダ3ファストバックの外観 マツダ3ファストバックの外観

マツダ3のデザインは「Car as Art(アートとしてのクルマ)」というデザインの哲学を追求している。独自の「魂動デザイン」をさらに進化させ、日本の美意識に基づく「引き算の美学」を表現した。

マツダ3ファストバックのフロントフェイス マツダ3ファストバックのフロントフェイス
マツダ3ファストバックのリヤエンド マツダ3ファストバックのリヤエンド

ハデなキャラクターラインを使わないなど、不要な要素を削ぎ落し、滑らかなボディにまとめ上げている。その結果、ボディサイドは光の当たり方により異なる繊細な映り込みが、豊かな生命感を表現している。

マツダ3ファストバックのインパネ マツダ3ファストバックのインパネ
マツダ3ファストバックのメーター マツダ3ファストバックのメーター

マツダ3のインテリアも「引き算の美学」に基づいてデザインされた。水平基調のインパネデザインとし、シンプルな造形とした。その上で、質感と運転に集中できる心地よい空間という機能性を融合している。コックピットにある操作機器などはドライバーを中心に配置された。
シフトレバー周辺には新開発の「2層成形シフトパネル」を採用した。透明感と外観同様の光の移ろいによる豊かな表情を併せ持つ上質さを誇る。

シビック、マツダ3両車共にシンプル系のスポーティなデザインといえる。シビックは、より多くの人に好まれるクセの少ないデザインで、多くの人に好感を得られるだろう。対するマツダ3はややクセがある。美しいデザインだが、ある程度好き嫌いが出てしまうデザインだ。

5.室内空間と使い勝手

ホンダ シビックの評価は 3.5
マツダ3の評価は 3.0

室内・荷室はシビック。狭い所での取り回しはマツダ3

シビックとマツダ3のボディサイズと荷室容量は以下の通りだ。

  全長×全幅×全高 ホイールベース(最小半径) 荷室容量
ホンダ シビック 4,550mm×1,800mm×1,415mm 2,735mm(5.7m) 452L
マツダ3 4,460mm×1,795mm×1,440mm 2,725mm(5.3m) 334L
ホンダ シビックのリヤシート ホンダ シビックのリヤシート
マツダ3のリヤシート マツダ3のリヤシート

シビックは全長とホイールベースも長いことから、後席の居住性などはマツダ3より広く感じる。また、マツダ3より圧迫感も少ない。後席に座る乗員の快適さでは、シビックがやや優位だ。

ホンダ シビックのフロントシート ホンダ シビックのフロントシート
マツダ3ファストバックのフロントシート マツダ3ファストバックのフロントシート

前席の開放感もシビックの方がやや勝る。横方向の広さ以外はほぼ同等レベルと言えるが、シビックは視界が良いため、さらに広さを感じられる。タイト感のあるスポーティさが好みなら、マツダ3がおすすめだ。

ホンダ シビックの荷室 ホンダ シビックの荷室
マツダ3ファストバックのフロントシート マツダ3ファストバックの荷室

使い勝手面でもシビックが勝る。シビックの荷室容量はクラストップレベルだ。マツダ3との差はかなり大きい。
ただ、シビックの最小回転半径は大型ミニバンのアルファード並みだ。さすが、道路がやたらに広い北米が主戦場のクルマである。日本の狭い道や駐車場で、やや扱いにくいだろう。せめて、5.5mくらいにはして欲しいところだ。マツダ3の最小回転半径は5.3mだ。シビックと比べると狭い場所での取り回しでは、マツダ3が優位になる。

6.安全装備・運転支援機能の比較

ホンダ シビックの評価は 3.0
マツダ3の評価は 3.0

ホンダ シビックに搭載されている予防安全装備パッケージ「ホンダセンシング」は全車に標準装備されている。
自動ブレーキは、歩行者や車両、自転車にも対応する。その他誤発進抑制機能など、計13もの予防安全装備や運転支援機能を装備している。運転支援機能のトラフィックジャムアシストは、0km/h~約65km/hの速度域でも、先行車との車間を保ちながら自車の走行車線を維持し、自動でアクセル・ブレーキ・ステアリング操作をアシストする。高速道路などでの渋滞時にドライバーの疲労軽減に寄与する便利な機能だ。

マツダ3の予防安全装備も自動ブレーキなどの基本機能は、全車に標準装備されている。自動ブレーキは昼夜の歩行者と昼間の自転車に対応し、誤発進抑制機能なども標準装備だ。シビックのトラフィックジャムアシストと同等の機能をもつクルージング&トラフィック・サポートの装備は、グレードにより異なる。

どちらの車両も、基本的な予防安全装備は平均レベルだ。だが予防安全装備機能は微妙に異なる。以下の機能はマツダ3に標準装備だがシビックには用意されていない。

  • 後側方車両接近警報(車線変更時に頼りになる)
  • 後退時車両接近警報(バックで出庫時に死角となる場所から接近してくる車両を検知する)

日々役立つ機能なだけに、シビックにも用意して欲しい装備だ。

7.走行性能の比較

ホンダ シビックの評価は 4.5
マツダ3の評価は 3.5

ホンダ シビックのエンジンルーム ホンダ シビックのエンジンルーム

ホンダ シビックの走行性能は、このクラストップレベルの実力を誇っていた。先代からのキャリーオーバーである1.5Lエンジンに、俊敏な応答性をもたらす斜流ターボチャージャー&低損失配管や4 in 2エキゾーストポートなどが採用された。
出力は182ps&240Nmだ。トルクが20Nmほどアップした程度だが、別のエンジンかと思えるくらいに進化している。

先代は、一定の回転数になると急激にトルクを立ち上げ、いかにもターボ車らしい荒々しいフィーリングだった。しかし、新型シビックには変なトルクの盛り上がりもなく、スムースにレヴリミットまで回っていく。その自然なフィーリングは、自然吸気エンジンかと勘違いするくらいだ。従来、ダウンサイジングターボエンジンは、低回転域でのトルクはあるが高回転域ではパンチの欠けるフィーリングになる傾向が強い。だがホンダのL15C型VTECターボエンジンは、一切感じさせなかった。燃費性能は少々物足りないが、よいエンジンに仕上がっている。

ハンドリングも機敏ではないものの、ドライバーが思い描く走行ラインを忠実にトレースしてくれる。単なる機敏さで走りの楽しさをアピールするのではなく、クルマとの一体感が自然で、ドライバーに違和感を与えないハンドリングだ。最近のホンダはこうした傾向が強く好感度は高い。

こうした気持ちよいハンドリングを実現するために、ボディ剛性をアップした。前後のサスペンション取り付け部まわりを強固な環状骨格としている。ねじり剛性を先代モデルに比べ19%向上し、サスペンションのポテンシャルを効果的に引き出した。
この優れたボディもあり、乗り心地は快適だ。しなやかなフットワークを見せ、大きな路面の凹凸もトントンっと何事もなかったように駆け抜けていく。このフットワークは、このクラストップレベルの実力だ。

マツダ3ファストバックのエンジンルーム マツダ3ファストバックのエンジンルーム

対するマツダ3の魅力は、エンジンの選択肢が豊富なことだ。
ガソリンエンジンは、1.5Lと2.0L、2.0e-SKYACTIV Xの3タイプから選べ、1.8Lディーゼルも用意されている。自分の使い方や好みで、最適なエンジンが選択できる。
1.5Lエンジンの出力は、111ps&146Nmだ。街乗り中心ならこれで十分だろう。
2.0Lの出力は156&199Nmである。速くもなければ、遅くもない、ごく普通のエンジンだ。無難と言えば無難だが、あえて積極的に選ぶ理由もない。

2.0e-SKYACTIV Xも同様だ。非常に高価なパワーユニットなのだが、出力は190ps&240Nmである。出力だけ見るなら、既存の2.5Lエンジンを搭載して安価な設定にした方が良いようにも感じる。しかも、ハイオク仕様なので、燃費が少し良くてもあまりメリットもない。このエンジンは、SPCCIという世界初の技術を体感したいというマツダファン用で、一般向きではないように思う。

マツダ3のパワーユニットで最もバランスがよいのが、1.8Lディーゼルだ。出力は130ps&170Nmと十分である。先代アクセラに搭載されていた激速の2.2Lディーゼルほどでないが、街乗りからロングツーリングまで無難にこなす。乗りやすいし燃費も良い。

マツダ3のハンドリングは、キレキレでとてもスポーティだ。少しのステアリング操作でも、クルマは機敏に反応する。ハンドリング面は、シビックとは大きく異なる。キビキビ走るモデルが好きな人にとっては、ベストな選択といえる。

フットワークは、シビックに軍配が上がる。マツダ3の乗り心地は、どうしても荒れた路面でゴツゴツとした乗り心地になる。
これは、主にサスペンション形式によるものだ。シビックのリヤサスペンションは、マルチリンクを採用している。マツダ3は、トーションビーム式だ。トーションビーム式は、左右輪がつながっているので、片輪のみが凹凸を通過したときでも、反対側の車輪に影響が出てしまう。コスト的には安価なのだが、乗り心地面で厳しい。また、高速域でスタビリティ面でも不利傾向になる。
そのため、乗り心地やスタビリティ面では、シビックが上回っている。

8.リセールバリュー比較

ホンダ シビックの評価は 4.0
マツダ3の評価は 4.0

リセールバリューは、先行き不透明感のあるシビック

先代ホンダ シビックの新車販売は低迷した。新車で売れなかったからといって、必ずしもリセールバリューが悪くなることがないのも中古車の不思議な部分だ。シビックも同様で、中古車価格はホンダファンなどの支えられているようで、6速MT車を中心にかなり高値を維持している。CVT車は、ややMT車よりリセールバリューが低い。
2018年式シビック6速MT車の中古車相場は、250~290万円程度だ。新車価格が約280万円だったので、ほとんど変わらない。先代モデルでこれほど高値なら、多少無理をしてでも新型を買った方がよい。より高リセールバリューが期待できるグレードは、上級グレードのEXだ。

ただし、この高いリセールバリューも長期的には不透明感がある。2022年、シビックに待望のハイブリッド車が投入される。人気のハイブリッド車なので、それなりに売れる可能性がある。ハイブリッド車登場から3年以上が経過すると、11代目シビックの中古車流通量が増え、リセールバリューを全体的に押し下げる傾向になる可能性があるからだ。

現行モデルがまだ高年式のマツダ3

マツダ3のリセールバリューは、ハッチバックのファストバックがセダンよりも高めの傾向となっている。ハッチバックは、良好なリセールバリューといえる。
中古車相場は、2019年式のXDプロアクティブツーリングセレクションで、230~260万円位だ。新車価格が286万円なので、新車よりやや安価な程度である。オプションの有無も若干あるものの、高額な価格帯の車両であれば新車を買った方が良いくらい、高い中古車価格を維持している。

マツダ3はまだ現行モデルで高年式のみなので、中古車価格が高値なのは仕方がない部分もある。あと2~3年経過すると、前期型は中古車価格が下がる可能性が出てくる。
マツダ3でより高いリセールバリューが期待できるのは、ディーゼル車のXD系だ。さらに、レザーシートが標準装備されたLパッケージやBurgundy Selectionなども高値が付きそうだ。オプションでは、ボーズサウンドシステムなどもプラス査定になるだろう。

9.まとめ・総合評価

シビックとマツダ3ともに今後のパワーユニットに期待したい

走行性能や室内・荷室の広さなど、トータルバランスではホンダ シビックが一枚上手だ。ただその分、価格も高いのが悩みどころである。しかも、単なるガソリン車で燃料はハイオク仕様だ。未来は電動化に進んでいるのに、今更単純なガソリン車というのも、少々選びにくい。
対するマツダ3のディーゼル車は、価格や装備、燃費性能などでバランスがよいので、現実的な選択肢としてはベストだろう。
ただし、マツダ3も燃費がよいディーゼル車とはいえ、いずれ姿を消していく化石燃料車であることには変わりない。せめて、姉妹車関係にあるMX-30のマイルドハイブリッドシステムくらい搭載して欲しいものだ。

  シビック マツダ3
総合得点(40点満点) 26.5 26.0
1.燃費 2.0 3.0
2.価格 2.0 3.0
3.購入時の値引きしやすさ 3.5 2.5
4.デザイン 4.0 4.0
5.室内空間と使い勝手 3.5 3.0
6.安全装備 3.0 3.0
7.走行性能 4.5 3.5
8.リセールバリュー 4.0 4.0

ホンダ シビックの 価格・燃費・サイズ・グレード

ホンダ シビックの価格

 
  • LX FF CVT/6速MT 3,190,000円
  • EX FF CVT/6速MT 3,539,800円

ホンダ シビックの燃費、サイズ、グレードといったスペック

 
代表グレード シビックEX CVT FF
ボディサイズ(全長×全幅×全高) 4,550mm×1,800mm×1,415mm
ホイールベース 2,735mm
車重 1,370kg
エンジン型式 L15C型 直4 DOHC 16バルブ直噴ターボ
排気量 1,496cc
トランスミッション CVT
最高出力 182PS(134kW)/6,000rpm
最大トルク 240N・m(24.5kgf・m)/1,700-4,500rpm
燃費(WLTCモード) 16.3km/L
燃料 無鉛プレミアム
サスペンション前/後 マクファーソン式/マルチリンク式

マツダ3 価格の価格・燃費・サイズ・グレード

マツダ3 の価格

 
  • マツダ3 ファストバック(AT) 2,221,389円(FF、15S)~3,688,463円(4WD、X Burgundy Selection)
  • マツダ3 セダン(AT) 2,221,389円(FF、15S)~3,616,963円(4WD、X Lパッケージ)

マツダ3の燃費、ボディサイズ、グレードといったスペック

 
代表グレード マツダ3 ファストバック XD PROACTIVE(FF)
ボディサイズ(全長×全幅×全高) 4,460mm×1,795mm×1,440mm
ホイールベース 2,725mm
車重 1,410kg
エンジン型式 S8-DPTS型 直4 DOHC 16バルブ直噴ディーゼルターボ
排気量 1,756cc
トランスミッション 6速AT
最高出力 130PS(95kW)/4,000rpm
最大トルク 270N・m(27.5kgf・m)/1,600-2,600rpm
燃費(WLTCモード) 19.8km/L
燃料 軽油
サスペンション前/後 マクファーソン式/トーションビーム式