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「もやもやクルマ選び」第11回 ジープ レネゲード


レアでマニアックなだけがクルマじゃない。新型車たちにも、世間から忘れられた中古車たちにも、クルマ好きのぼくらをワクワク「もやもや」させる悩ましい魅力を持つクルマがたくさんあります。第11回は、伝統のブランドを守り続けるジープが送りだしたクロスオーバーSUVの「ジープ レネゲード」をお送りします。


◆FFベースでも悪路走破力はまさしくジープ


イタリアの巨人・フィアットがアメリカのBIG3の一角クライスラーに資本提携を開始したのは2009年のこと。2014年にはFCAという社名になっています。この両社のタッグによっていくつか車種が生まれていましたが、なかでもこの「レネゲード」は注目の一台となっています。

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直4エンジンを横置きしたFFベースの「クロスオーバーSUV」という点ではジープ・ブランドではすでに「コンパス」や「パトリオット」で採用されていますが、レネゲードは同ブランド初の小型サイズSUVであること、基本はFFでも4WDモデルの悪路走破力はジープの看板を背負うに値するほどに高いこと、生産がアメリカではなくイタリアやブラジル、そして中国であること、フィアット500Xが兄弟車となることなど話題に事欠かないクルマだからなのです。


◆ジープのアイコンが散りばめられた意匠


注目すべきはやはりその内外装デザイン。これまで以上に【ジープという偉大なアイコン】と【軍用車として登場したヘリテイジ】を全面に押し出しています。

テールライトの中などに見られる「×」の意匠は、第二次世界大戦で活躍し、ジープなくしてアメリカの戦争に勝利なし、とも言われた最初のジープ「ウイリスMB」の背面に積まれていた、20リットル入り燃料容器「ジェリ缶」に施されたプレス鋼板の強度を増すための意匠をモチーフにしたもの。

丸いヘッドライトや縦型スリットのフロントグリル、角形のフェンダー、切り立ったウインドウなどにもジープらしさが散りばめられています。

copyright_izuru_endo_2017_y011_renegade_1280_881(クリックで拡大)前述のようにフィアットのクロスオーバーSUVの500Xをベースとしているために、プラットフォームはフィアットが開発。1.4リットルエンジンはフィアットの直4「マルチエア」ですが、2.4リットル版はクライスラー製「タイガーシャーク」エンジンを搭載しています。4WDシステムはジープ・ブランドを持ち開発に長けたクライスラーが担当していますが、組み合わされるエンジンは2.4リットルのみとなっています。

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なお、まめ知識なのですが、フィアット500Xのプラットフォームの源流はフィアットがGMと組んでいた時代に開発されたもので、それをクライスラーが使用しているのはちょっと面白い話です。そしてもうひとつ。ジープは現在クライスラーが持つブランドですが、実はかつて存在したAMC(アメリカンモータース)というメーカーが所有していました。

レネゲードは北米のみならず欧州でも好調なセールスを記録しているほか、日本にも導入され、「お手頃に楽しめるジープ」として人気を集めています。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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