
メルセデス・ベンツGLAの位置付け
2014年に登場したメルセデス・ベンツGLAは、グローバルで非常に重要な戦略車種だ。メルセデス・ベンツは、CセグメントのAクラスをベースとしたFF(前輪駆動)車の派生車を幅広く用意。5ドアハッチバックのAクラスの他にBクラス、4ドアセダンのCLA、そしてSUVのGLAがある。メルセデス・ベンツは、販売台数の多いCセグメンに積極的に参入することで、さらなる成長を目指しているのだ。とくに、最近人気の高いコンパクトSUVなので、GLAは戦略上重要な車種と言える。
Aクラスがベースのわりに、想像以上の走破性を誇るGLA
そんなGLAだが、マイナーチェンジ前のデザインは、あまりSUV感がなく、やや全高が高いAクラスといった印象だった。全高は1,505㎜と低くスタイリッシュなデザインで、最低地上高も150㎜と、SUVとしてはそれほど高くなかったのだ。スバルXVなどは200㎜もあるので、GLAはオンロード重視のSUVかと思われた。
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オンロードでは、背の高いSUVにありがちな腰高感も感じさせず、Aクラスのような軽快感も併せ持つのだ。オンロードとオフロード問わず、高い走行性能は、さすがメルセデス・ベンツといったところだ。
日本の立体駐車場には入らないボディサイズ
ただ、日本での使い勝手という面では、少々微妙な部分もある。そのひとつがボディサイズ。全高は1,505㎜と低く、SUVながら多くの立体駐車場に入るサイズになっている。しかし、全幅は1,805㎜。多くの立体駐車場の制限が全高1,550㎜、全幅1,800㎜以下となっているので、わずか5mmオーバーでこうした立体駐車場が使えないのだ。わずか5mmとはいえ、こうした立体駐車場を使う人にとっては、車庫証明が取れないなどのデメリットが発生する。もう少し、日本マーケットのことを考えてくれれば・・・。最小回転が大きく、扱いづらいGLA
そして、もうひとつの難点が、最小回転半径。GLAの最小回転は5.7mと大きい。この数値は、トヨタ アルファード/ヴェルファイアといった大型ミニバン並み。コンパクトSUVなのに、小回りが苦手という本末転倒な状況になっている。狭い道や駐車場が多い日本では、やや扱いにくいのだ。<関連記事>
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よりワイルドでたくましいデザインとしたマイナーチェンジ

このフロントデザインに合わせて、ボトム部サイドに移設され大きくなったフォグランプや、よりアンダーガードデザインが強調されたフロント/リアバンパーが採用された。さらに、リアコンビネーションランプは新型Eクラスにも採用されている「クリスタルルック」が装備された。
単なるデザイン変更だけではなかった。なんと、SUVらしいデザインとしながら、空気抵抗を軽減。SUVとしては、優れているCd値0.29を実現。空気抵抗などの低減もあり、エンジンスペックや車重に変更が無いものの、GLA180の燃費値は16.0㎞/Lから16.4㎞/Lへ向上している。
BMW X1の影響? 買い得感のある新グレードGLA 220 4MATICを追加
新型GLAには、4WD である4輪駆動システム「4MATIC」車の設定もある。売れ筋は、FF(前輪駆動)のGLA180だ。従来のGLA250は、かなり高めの価格設定になっており4,870,000円となっていて、かなり高価だったためだ。そこで、今回、従来より安価な価格としたGLA220 4MATICを導入した。価格は4,490,000円。
これは、ただ単に安いモデルを導入して販売台数を伸ばしたいいというより、ライバル車対策でもある。ライバル車となるBMWのX1 xDrive18dの価格が4,490,000円とかなり安い価格で登場したからだ。そこで、GLA220 4MATICを追加し、価格を同じ4,490,000円としたのだろう。
このGLA 220 4MATICは、GLA 250と基本的に同じ直4 2.0Lターボエンジンの出力をやや抑えたものを搭載。最高出力135kW(184PS)、最大トルク300N・mを発生する。
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物足りない先進予防安全装備

安全装備面では、先進予防安全装備である自動ブレーキ「アクティブブレーキアシスト(緊急ブレーキ機能)」や、長時間走行時のドライバーの疲労や眠気を70以上のパラメーターで検知して注意を促す「アテンションアシスト」を全車に標準装備した。
さらに、車間距離を適切に維持するとともに、先行車が停止した場合は減速して停止する渋滞追従機能を備えた「ディスタンスパイロット・ディストロニック」やドアミラーの死角範囲をレーダーによってモニターして危険性を警告する「ブラインドスポットアシスト」、ドライバーの疲労や不注意による走行車線の逸脱をステアリングを微振動させてドライバーへ警告する「レーンキーピングアシスト」などを含む先進の安全運転支援システム「レーダーセーフティパッケージ」を設定した。
たくさん安全装備が用意されているように感じるかもしれないが、GLAの先進予防安全装備は、歩行者検知式ではない旧式のものなのだ。メルセデス・ベンツCクラスなどのFR系には、世界トップレベルの予防安全装備がほぼ標準装備化されている。Eクラスなどは、自動で車線変更ができるまでに進化している。
しかも、400万円以上の価格帯なのに、コンパクトカーのデミオにも標準装備化された「ブラインドスポットアシスト」がGLAではオプション。FR系のモデルとは、あまりにも先進予防安全装備に差ができている。
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メルセデス・ベンツGLAを買うならどのグレード?
新型メルセデス・ベンツGLAの選び方。まず、4WDシステムである4MATICが必要か否かということが重要だ。これだけで、グレード選びがほぼ決まる。FFで十分というのであれば、GLA 180となり3,980,000円。4MATICが必要ならGLA 220 4MATICかGLA 250 4MATICということになる。GLA 250 4MATICは5,130,000円とかなり高価な価格設定になっているので、GLA 220 4MATICの4,490,000円で十分だろう。
ハイパフォーマンスモデルであるメルセデスAMG GLA 45 4MATICもあるが、こちらは7,920,000円。サーキットも走れるようなSUVに仕上がっている特殊なモデルで趣味性が高い。
GLAは、人気のSUVということもあり、比較的リセールバリューが高くなることが予想できる。短期の乗り換えでもメリットがあるだろう。
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メルセデス・ベンツGLA価格
車両価格は以下の通り。
GLA 180
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3,980,000円
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GLA 220 4MATIC
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4,490,000円
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GLA 250 4MATIC
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5,130,000円
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メルセデスAMG GLA 45 4MATIC
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7,920,000円
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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表 大岡 智彦 氏CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。