「気になるくるま」第8回 アウディ90(2代目 B3系 1987)
ひとことでくるまと言っても、誰にも知られていないようなマイナーなものから、みんなの憧れのようなスーパーカーまで、実に様々です。そんなクルマたちの中から、マニアックカー・マニアでもある遠藤イヅルが、独断と偏見で選び出したくるまたちをイラストとともにみなさんにお送りいたします。第8回は、エアロルックのはしりであるアウディ80(3代目)の上級版だったアウディ90をお送りいたします。
1964年にVWグループの一員となったアウディ。VWより上位の車種を作り続けていましたが、その代表格が1972年に登場した中型サルーン、アウディ80でした。VWパサートと多くの部品を共通化した縦置きエンジンのFF車で人気車となりました。1978年には2代目にスイッチ、初代のジウジアーロデザインから自社デザインになりましたがクリーンかつ端正であることは引き継がれ、一回り大きくなった車体には広大な室内とトランクスペースを内包していました。1982年には直列5気筒モデル「80-5E」も追加されましたが、1984年にこの5気筒モデルは「90」と改称されています。
◆独製サルーンのステータスを得た「クワトロ」
そして3代目アウディ80が1986年にデビューしました。斬新なデザイン、最先端の技術、高品質な仕上がりから、BMW3シリーズ、メルセデス・ベンツ190シリーズと肩を並べる西ドイツ製の優秀なサルーンとしてステータスを得ることに成功。今回ご紹介する新しい90は80に送れること1年、1987年に登場しました。
80の上級仕様というスタンスは変わらず、コンパクトなボディに100と同じエンジンを積み、80よりもさらに高い仕上がりや充実した装備を持っていたことから、80の派生というイメージが強かった初代90よりも大幅にセールスを伸ばしています。
80から本格的に独立した車種として、初代90には見られなかった4気筒1.6リットルと2リットルのエンジンも用意され、ワイドバリエーション化も図られていますが、やはり主体は2.3リットルの5気筒エンジン。1988年にはDOHC化され「90 クワトロ20V」として発売を開始しています。クワトロの名前が物語る通り、アウディの個性でもある「悪路走破のためではない4WD(クワトロ)」を採用、高いスタビリティを誇りました。
1991年の80のフルモデルチェンジ時に90は再び80の一員に取り込まれて名称が消滅しますが、ややこしいことに北米では80が90の名前で販売されることになりました。そのため、3代目90は、初代、2代目とはスタンスがまったく違うクルマだったことに注意が必要です
なお、アウディ80は1995年に「A4」に発展。そのA4もすでに2016年現在で5代目になっています。ですが、縦置きFF、クワトロシステムといったアウディの特徴はずっと引き継がれています。
【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!