izuru_endo_title101

「もやもやクルマ選び」第8回 スズキ イグニス

レアでマニアックなだけがクルマじゃない。新型車たちにも、世間から忘れられた中古車たちにも、クルマ好きのぼくらをワクワク「もやもや」させる悩ましい魅力を持つクルマがたくさんあります。第8回は新しいジャンルのクルマのヒットメーカーであるスズキが提案するクロスオーバー、「イグニス」をお送りします。


◆新しいジャンルを生み出し続けるスズキ


そう、スズキって実は「新しいジャンル」をどんどん生み出しているメーカーなんですよね。古くは軽自動車に本格的な4輪駆動のメカニズムを用いた「小さなジープタイプ4WD」のジムニーを開発し、1980年代には四駆なのにライトなイメージで都会風の洗練さも持ち合わせたエスクードを、続いて1990年代には1ボックスバンではない、背の高い乗用車として登場したワゴンRはトールワゴンというジャンルを作り、いまや背の低い軽自動車のほうが珍しい時代に。

その他にも「かわいい系」の軽自動車としてアルト・ラパンを、最近ではSUVイメージを前面に押した軽のクロスオーバー「ハスラー」を発売。ライバルの軽自動車メーカーはスズキが作った新しいジャンルをフォローする、という図式が続いています。


◆小粒でもピリリ!スズキの魅力を凝縮

copyright_izuru_endo_2017_02_ignis_1280_880

そんなスズキが新たに提案した一台が、2016年に登場したこの「イグニス」です。ポジションはこれまた新しい「コンパクトカー」のクロスオーバー。スズキはかつて、軽クロスオーバーを目指した「kei」をベースにした「スイフト」や、イタリアのフィアットと共同開発したクロスオーバー、「SX4」などコンパクトカーのクロスオーバーは幾度も発売していますが、イグニスはさらにスポーティさやアグレッシブさをこれまで以上に盛り込んだ意欲作。

クロスオーバーであるため高い地上高や張り出したフェンダーが特徴ですが、SUVらしい黒いフェンダーなどの意匠は用いず、ふつうの、ちょっとカッコイイコンパクトカーの背が高い姿、とでもいえる独特のスタイリングを持ちます。この「見たことあるようなクルマだけど、やっぱり見たこと無い」というジャンルのクルマこそ、スズキの真骨頂のひとつです。

>> 過去のイラスト記事一覧はコチラをクリック

このコーナーでも取り上げたソリオ、ソリオバンディットをベースにして開発されていますので、イグニスにもスズキお得意のマイルドハイブリッド標準装備。燃費性能にも優れています。全長3.7mながら後席の居住性も充分。新旧スズキ各車のデザインモチーフをぎゅっと凝縮して散りばめつつも、どことなくワイルドな見た目のデザインも高いレベル。ついついどこかに行きたくなってしまうようなSUVらしいワクワクさも兼ね揃えたイグニスは、小型車好きのボクも多いに注目しています。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

>> 過去のイラスト記事一覧はコチラをクリック