izuru_endo_title101

悩ましき2台 BMW 1シリーズ と メルセデス・ベンツAクラス

クルマ選びって楽しいですよね。でも、最後に選ぶ決め手ってなんだろう?って思うこと、ありませんか。このコーナーは、クルマ選びで悩み疲れたそんなアナタの背中をドーンと押しちゃいます。迷える子羊よ、存分に迷いたまえ・・・・

今回は永遠のライバルとも言えるドイツのBMWとメルセデス・ベンツのエントリーハッチバックモデル対決をお送りします。その2台とは、BMWらしく走りにこだわった1シリーズと、初代からコンセプトを大幅に変更してCセグメントに進出してきたAクラスです。

どちらもコンパクトなサイズのハッチバックですが、高級車メーカーがここ近年で生み出したハッチバックたちの違いを検証してみましょう。


◆これまでなかったジャンルへの進出


日本でも有名で多くの台数が販売されているドイツのプレミアムブランド、「BMW」と「メルセデス・ベンツ」。3シリーズと190/Cクラス、5シリーズとミディアム/Eクラス、7シリーズとSクラスなど各サイズの車種で熾烈なライバル関係を持つのはご存知の通りです。そんな中、それまで3シリーズ/Cクラスがこの2社にとって最小だったラインナップに変化が生じます。それがメルセデス・ベンツが1997年に発表した「Aクラス」でした。それまでのエントリーモデルだったCクラスは、カテゴライズでは「Dセグメント」に属するのですが、初代Aクラスはその2つ下、「Bセグメント(日本で言えばノート、デミオ)」に投入され、話題を呼びました。

一方BMWは2004年、強豪ひしめくVW・ゴルフのいるカテゴリ、「Cセグメント」に1シリーズを送り込みました。特記すべきは実用性が問われるこのカテゴリには不利な後輪駆動(FR)レイアウトで登場したことです。そして2012年、3代目となったAクラスもCセグメントに移行、ゴルフならずとも1シリーズとも戦うこととなりました。小型ハッチバックのBMWとメルセデス・ベンツ。20年以上前では考えられない車種ですが、いまや両社にとっても主流の販売車となりつつあります。

>> 過去のイラスト記事一覧はコチラをクリック


◆あくまでもFRレイアウトにこだわる1シリーズ

copyright_izuru_endo_2016_09_1er_1280_906

前述のようにBMW1シリーズで注目は、FRレイアウトだったことです。それほど全長が取れないカテゴリの中でも長いノーズと短いオーバーハングのスタイルはFRらしいバランスを見せます。そのため室内空間は必要十分、決して広大とはいえないのですが、BMWはあえてこのセグメントにもFRで勝負を挑むあたりに、BMWというメーカーの走りへのこだわりを感じます。
1シリーズは2011年に2代目となり、この2代目も2015年にマイナーチェンジを受けましたが、もちろんFRレイアウトは継承していますが、狭さが指摘された初代とくらべ、車体も大きくなった2代目1シリーズは後席、トランクともに拡大されています。

2015年のマイナーチェンジでは内外装デザインのブラッシュアップのほか、エントリーモデルの116iが118iに名称変更されたと同時にエンジンが1.6リットル4気筒ターボから、欧州各メーカーで流行の3気筒ターボ(1.5リットル)へとダウンサイジングを果たしました。118i、これまで同様4気筒ターボを持つ120i、そして3リットル直6を押し込んだM135iがラインナップされています。スタンダードの118iは300万円を切るの価格なのも魅力的です。2016年5月にはクリーンディーゼルエンジンを搭載した「118d」も投入されました。


◆大胆なデザインが魅力のAクラス

copyright_izuru_endo_2016_09_a-class_1280_890

初代Aクラスは小さな電気自動車用(燃料電池車)として開発された経緯から、二重フロア構造を持った背の高い小型車として登場しています。ですが実際には燃料電池車としてメインで販売されることはありませんでした。2004年に登場した2代目も、基本的にはキープコンセプトで開発されましたが、2012年に発表された3代目Aクラスではそれまでのキャラクターから一転、CセグメントにアップするとともにVW・ゴルフ、BMW・1シリーズ、ボルボ・V40などと真っ向から勝負することとなりました。

初代、2代目と同様に3代目Aクラスも横置きのFFレイアウトを取るのがライバルである1シリーズとの大きな違いです。二重構造フロアの廃止によってスタイリングは1.5BOXハッチバックとなり、内外装はデザイン言語も最新のメルセデス・ベンツのトレンドを組み入れたことで一気にスポーティに進化しています。小さなウインドウ、長いフロントノーズ、流麗なルーフラインなどによってクーペ的な美しさもあり、グリル、ヘッドライト、サイドに走る急角度のキャラクターラインなどの各部の大胆なデザイン処理も特徴です。1.6リットルターボのA180、2リットルターボのA250、そして同じ2リットルながらもツインスクロールターボで318psまで武装したAMG A45の3種類がラインナップされています。

>> 過去のイラスト記事一覧はコチラをクリック


◆決め手は、どこに!?


永遠のライバルともいえるBMWとメルセデス・ベンツ。その両社がどちらも手抜き無く威信をかけて開発している1シリーズとAクラスは、どちらも捨てがたい魅力があります。内外装ではBMWらしい繊細さとカッチリ感を強くにおわせる1シリーズに対し、全体的にフレッシュさが特徴のAクラス、操縦感覚では1シリーズのハンドリングは楽しく、やはりFRレイアウトなのだなと思わせますし、Aクラスのシートの良さは長距離での快適さを予感させます。Aクラスより室内が狭いなど、実用面では1シリーズは少々不利かもしれません。つまり、この2台は性格がまったく異なるのです。


◆迷える子羊よ、迷いは消えただろうか


ということで、迷っているアナタ、いかがでしたでしょうか。気になったらぜひ現車に乗り、触れ、いろいろ感じてみてくださいね。
くるま選びは楽しくもあり、そして悩むもの。これからもいろいろな視点でのクルマ選びをこのコーナーで提案出来たら、と思います。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

>> 過去のイラスト記事一覧はコチラをクリック