izuru_endo_title101

「もやもやクルマ選び」第6回 フィアット 500X(チンクエチェント X)

レアでマニアックなだけがクルマじゃない。新型車たちにも、世間から忘れられた中古車たちにも、クルマ好きのぼくらをワクワク「もやもや」させる悩ましい魅力を持つクルマがたくさんあります。第6回はフィアット500のSUV版として注目を集めるフィアット 500X(チンクエチェント エックス)をお送りしましょう。


◆有名アニメでも活躍した知名度の高い「チンク」顔

copyright_izuru_endo_2016_05_fiat500x_1280_740

1957年に登場し、イタリア中を埋め尽くしたフィアット500(チンクエチェント)。戦前に「トポリーノ」と呼ばれた初代フィアット500が存在するため、「ヌオーヴァ(イタリア語で新しい、の意)500」とも呼ばれるこの小さなクルマは、日本では丸餅ともあだ名されるころんころんのボディを持ち、リアに500ccの空冷直2エンジンを搭載したかわいらしいクルマです。そのデザインエッセンスをふんだんに盛り込み、2007年にデビューした新世代の「フィアット500」は、素晴らしいデザインと小型車作りに長けたフィアットが手がけていることもあって、日本を含め世界中で大ヒット作となりました。

>> 過去のイラスト記事一覧はコチラをクリック

新しい500のエンジンは1.2リッターもしくは1.4リッターの直4で、現在では0.9リッターの直2も追加されていますが、車名の500はもはや排気量を現すものではありません。また、フィアット500はそれまでの実用性を一義としたフィアットの小型車とは少々方向性が異なり、BMW・ミニ的なプレミアムコンパクトのようなイメージも与えられています。事実、このフィアット500はリアシートも狭く、トランクルームもミニマムです。


◆強い個性と知名度ゆえの悩み


フィアット500はこの強いキャラクターがゆえに売れているのですが、いっぽう、この性格がフィアットを悩ませているところもあるように思います。というのも、フィアットには500以外にもパンダやプントなどもあるのですが、たとえば日本のように「外国車を記号、アイコンとして認識する」国では、500以外はアイコンとしてのパンチが500を相手にすると弱くなってしまうのです。

>> 過去のイラスト記事一覧はコチラをクリック

そうなると、家族が大きくなったりした場合、500よりも大きなクルマが欲しい、でも500のようなデザイン性の高いクルマが欲しい、500に替わるクルマが欲しい、となっても、残念ながら500よりも大きいプントにはなかなか手が出ないのが現実です。また、ライバルであるミニには5ドアのSUV、「カントリーマン」が用意されていて、こちらも順調に売れているのでした。


◆悪路走破性を備えたチンク顔の本格派4WD


copyright_izuru_endo_2016_05_fiat500x_1280_740(クリックで拡大)そんな中、500にリアドアを設け、ボディを拡大、しかも4WDも用意した「500X」が2014年ワールドプレミア・2015年ラインナップに追加が行われたのです。まさに「大きな500」である500Xは、前述のように「500では小さくなった。でも500のようなクルマがない!」と悩むオーナーさんにはまさに朗報なのではないかと感じました。もちろん、はじめてフィアットを買う方にも、500Xはちょうどいいのではないでしょうか。適度なサイズ、高い実用性、優れた燃費、そしてこのルックスなのですから!しかもプラットフォームはアメリカのジープ・レネゲードのもの。4WD版では高い悪路走破性まで備えているのです。

※500Xの前に「500L」というMPV(ミニバン)も登場していますが、こちらは日本未導入となっています。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

>> 過去のイラスト記事一覧はコチラをクリック