スズキ イグニス

<マイルドハイブリッド機能搭載で、価格はやや高めながら燃費は28.8km/L!>

スズキイグニススズキは、SUVのクロスオーバー車となるコンパクトカー新型スズキ イグニスの発売を開始した。

この新型イグニスのコンセプトは「シンプルアイコニック、シンプルスタンダード」。アルトの眼鏡をかけたような独特のヘッドライトデザインが特徴だ。また、Cピラーまわりのデザインもアルトと酷似。ここまで、アルトテイストにしなくても、と思うくらいだ。そのため、SUVとのクロスオーバー車とはいえ、あまりSUV感が無い。どちらかというと、アルト風のコンパクトカーをベースに、ややフェンダーに力感を与え車高を高めたといった印象が強い。いかにもSUV的なルックスを好むタイプの顧客には、少々物足りないかもしれない。

イグニスのボディサイズは、全長3,700×全幅1,660×全高1,595mm。全長はソリオクラス。スイフトの全長が3,850㎜なので、スイフトよりやや小さい。ただし、クロスオーバー車ということもあり、全高は1,595㎜とやや高く最低地上高は180㎜となっている。180㎜といく最低地上高は、フォルクスワーゲンのクロスアップ!が155㎜なので、十分にラフロードにも対応するレベルにある。日本の降雪地域などでも使い勝手はよい。

こうした最低地上高の高さや、背高のデザインとなったことで、前席ヒップポイントは615mmと高めに設定されている。アイポイントが高くなるため見晴らしも良く、ボディもコンパクトなので運転はしやすい。さらに、高めのヒップポイントなので腰の上下動が少ないので、乗り降りのしやすさにも貢献している。とくに、高齢者は乗り降りしやすいと感じるだろう。スズキは、クロスオーバー車を作りたいというよりは、こうした使い勝手の良さをアピールしたいのではないかと感じるほどだ。

スズキイグニスインテリアは、シンプルにまとめられている。だが、外観以上にインテリアの方がSUVテイストが強く、力強い面構成となっている。また、メーターの針は真下を向いており、スポーツカー的要素もプラス。さらに、色で遊び心を表現しており、センターコンソールの前部とインサイドドアグリップ部分に、アクティブな印象のオレンジやメカニカルな印象のチタンカラーの高輝度塗装を車体色に合わせて採用している。

イグニスのパワーユニットは、ソリオなどに搭載されている1.2Lのマイルドハイブリッド。ISG(モーター機能付発電機)と専用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたもので、全グレードに搭載した。マイルドハイブリッドなので、モーターのみのEV走行はできない。最長30秒間のモーターアシストによってエンジンの負担を軽減し燃費を向上。この結果、最も燃費の良いグレードで28.8㎞/Lという低燃費性能を実現している。

スズキイグニス燃費が良いことだけがマイルドハイブリッド機能のメリットではない。ISGを使うことで、アイドリングストップからのエンジン再始動が非常に静かで振動が少ないのだ。そのレベルは、まるで高級車レベル。アイドリングストップは、市街地走行では信号の度に何度も繰り返される。周囲のコンパクトカーや軽自動車が「カリカリ、ブオーン」と大きな音を立てるのに対して、イグニスはほとんど騒音や振動を感じさせず再スタートが可能なのだ。

イグニスは、クロスオーバー車である。4WD車には、多彩な機能がプラスされている。基本的にESP(横滑り防止装置)の機能を利用したもので、エンジンブレーキでは減速できないほどの急な下り坂などで、ブレーキペダルを踏まなくても自動的に車速を約7km/hにコントロールする機能ヒルディセントコントロールを用意。雪道やぬかるみなどの滑りやすい路面での発進時に、エンジントルクやブレーキが効果的に作動するように制御させることで、スムーズな発進をサポートするグリップコントロールも用意されている。4WDらしい走破性を確保している。

微妙なのが安全性能。ソリオハイブリッドには標準装備されていたサイドエアバッグが、イグニスでは残念ながらオプション設定。スズキのサイドエアバッグ嫌いはここでも顕在化している。セーフティパッケージ装着車のみに標準装備となり、その代りというべきかソリオにはないカーテンエアバッグが装備できるようになっている。

イグニスのセーフティパッケージは、歩行者検知式の自動ブレーキ(デュアルカメラブレーキサポート)に誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、エマージェンシーストップシグナルが装備される。このクラスでは、高性能な安全装備。オプション価格は97,200円。もはや、欧州では歩行者検知式自動ブレーキが標準装備化しないとEURO NCAPで好成績が取れないのだから、日本でも全車標準装備化が望まれる。このクラスでは、歩行者検知式自動ブレーキは、まだ少ないので価値ある安全装備だ。

スズキイグニスイグニスの選び方。全車がマイルドハイブリッド機能付きなので、グレード選びは装備の違いによるものだけになる。グレード構成は、最も上級なグレードがMZ、MX、MGの順となる。エントリグレードのMGは、もはやレンタカーか営業車ともいえるくらいのシンプルな装備なので、一般の顧客は得ればない方がいい。そうなると、MZかMXのどちらかを選ぶことになる。

イグニスMZ(1,641,600円)とMXの価格差は約14万円。装備差はLEDヘッドランプ類、オートライト、クルーズコントロール、本革ステアリング類、パドルシフト、ラゲッジシェルフ、IRカット機能付きフロントガラス、プレミアムUV&IRカットガラスといったところ。今時、軽自動車でも標準装備化が進んでいるオートライトまで最上級グレードにならないと装備されないなど、中間グレードのMXでも少々物足りない装備内容だ。また、夏場の暑さを考えるとIRカットガラスは欲しいし、イグニスの目力をアピールしたいのならLEDヘッドランプ類も欲しくなる。そうなると、やはりやや高価になるが、満足度が高いグレードはMZということになる。

さらに、これで終わりではなく、このMZにオプションであるセーフティパッケージ(97,200円)を選択しなくてはならない。今時、自動ブレーキが無いクルマはありえない。自らの交通事故リスク軽減のためにも必須アイテムだ。この装備をプラスすると、イグニスMZの価格は約174万円となる。さらに、全方位モニター付メモリーナビゲーション142,560円をプラスすると約188万円。やっぱり、クロスオーバー車なのだから、4WD機能をプラスしたいということになると200万円を超えるコンパクトカーとなる。イグニスは、コンパクトカーだが、安いクルマではない。

■スズキ イグニス価格

・イグニスHYBRID MG 2WD 1,382,400円/4WD 1,519,560円
・イグニスHYBRID MX 2WD 1,501,200円/4WD 1,638,360円
・イグニスHYBRID MZ 2WD 1,641,600円/4WD 1,778,760円