マツダ RXビジョン(RX-VISION)

<新世代ロータリーエンジンは「スカイアクティブR」。HCCI技術の投入で復活か?>

マツダRXビジョンマツダは、東京モーターショーでスポーツカーの「マツダ RXビジョン(RX-VISION)」を世界初公開した。

このマツダRXビジョンは、RXの名から分かるようにロータリーエンジンを搭載したスポーツカーRXシリーズであることを意味している。今でこそロータリーエンジン搭載車を発売していないが、マツダはロータリーエンジンを量産する唯一の自動車メーカーだ。と、いうのも、このロータリーエンジンは実用化できたのはマツダだけで、多くの自動車メーカーが開発を断念したという歴史をもつ。

ロータリーエンジン(RE)は、三角形のローターが回転することによって動力を生む、独特の構造をも。そのため、乗り越えなくてはならない多くの技術的課題があった。その技術的課題をを乗り越え、マツダ独自の技術として1967年に「コスモスポーツ」でREの実用化に成功。その後もマツダは、REを量産する唯一のメーカーとして、出力、燃費、耐久性などの性能向上に取り組んだ。

今回出展されたRXビジョンの車名RXシリーズの、初代モデルがRX-7(SA22C型)だ。その後、2代目RX-7(FC3S型)、3代目RX-7(FD3S型)へと進化。マツダのロータリーエンジンの象徴ともいえるピュアスポーツカーとして愛された。その他の車種では、バブル期に3ローターの20Bを搭載したコスモまで投入。マツダのREは一世を風靡した。

しかし、急速に進む低燃費化と低排出ガス化、安全性、スポーツカーの人気低迷などなど多岐にわたる要素が加わり、RX-7はマツダのラインアップから姿を消した。しかし、マツダは自然吸気REで4人乗りのRX-8を2003年に投入する。しかし、環境対策が解決できずRX-8もその後生産中止になった。その後、新型REを搭載した市販モデルはないままだ。

マツダは、REの生産をしていないものの研究・開発は進めていた。新世代技術として、バイフューエルのREを開発。通常は水素を燃料として使い、水素が無くなるとガソリンで走るというもの。しかし、この技術もFCVの登場で意気消沈気味だ。それでもマツダは、REの研究・開発を継続している。

マツダRXビジョン今回RXビジョンに搭載されるREには「SKYACTIV-R」という名称が付けられた。これは、SKYACTIV技術の開発時と同様に、「常識を打破する志と最新技術をもって課題解決に取り組む」という意味が込められている。マツダのREに新たな名称「SKYACTIV-R」と言う名が付けられたこと。そして、姿を消したRXシリーズの名を冠したコンセプトカーが出てきたことは、今後のREモデル投入を示唆したモノとも受け取れる。つまり、REが姿を消す理由となった燃費や排ガス問題がクリアできた、ということも考えられる。

実はマツダからSKYACTIV2とも呼ばれる次世代エンジン出るという噂がある。このSKYACTIV2には、新技術であるHCCI (Homogeneous-Charge Compression Ignition)予混合圧縮着火エンジンであることが濃厚なのだ。HCCIはディーゼルエンジンと同じく、自己着火するガソリンエンジンで、CO2削減とクリーンな排気を両立させる究極の燃焼方式とも言われている。

ただ、安定した自己着火させるためには、燃焼室内の温度をコントロールや自己着火の時期と燃焼期間の制御が重要とされており、多くの自動車メーカーが技術的課題を克服できておらず市販化されていない難しい技術でもある。SKYACTIV2では、このHCCI技術が技術的問題をクリアし市販化されるとの見方が強い。全域でHCCIなのかどうかなど、詳細は不明だ。

このHCCI技術とREが結び付く可能性もある。REのデメリットは、燃費と排ガス。HCCIのメリットは、超低燃費とクリーンな排ガスだ。REにHCCIのテクノロジーが使えれば、REのデメリットは無くなる。HCCIは、超希薄燃焼なので、スポーツカーのパワーユニットとして合っているのか? REならではの高回転型にできるのか? などなど、色々な疑問も出てくるのは事実。しかし、最初のロータリーエンジンも多くの技術的課題をクリアしてきた。マツダのREに対するこだわりが、こうした問題を解決してくれると思いながら、新世代のRE、SKYACTIV-Rに期待したい。

マツダRXビジョンさて、そんなRXビジョンのデザインは、マツダのデザインテーマ「魂動(こどう)-Soul of Motion」をコンセプトに最も美しいFRスポーツカーの造形に挑戦したコンセプトカー。FRスポーツカーの定番ともいえるロングノーズ&ショートデッキスタイルだ。スポーツカーの方程式ともいえるデザインプロポーションに魂動(こどう)デザインがプラスされた。

従来の魂動(こどう)デザインは、躍動感のあるキャラクターラインが特徴だったが、RXビジョンのボディは非常にシンプルにまとめられている。奇をてらうようなキャラクターラインなどは入っていおらず、柔らかで優美なラインで構成されていて美しい。

インテリアもシンプルにまとめられている。余計な装飾もなく、操作系もシンプル。このあたりは、いかにもショーカー的。タコメーターのレブリミットが8,000回転からということがREを搭載するモデルであることをアピールする。

マツダRXビジョンは、まだまだ初期段階のショーカーな印象が強いものの、RE+RX系のピュアスポーツモデルの復活を示唆するモデルとしては非常にインパクトのあるモデルとなっていた。