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<新型プリウス、東京モーターショーで一般公開! 4代目プリウスの実力とは?>
【新型トヨタ プリウスプロトタイプモデル主要諸元(社内測定値)】

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

<新型プリウス、東京モーターショーで一般公開! 4代目プリウスの実力とは?>

新型トヨタ プリウスの詳細は、すでに公表されているが、ついに東京モーターショーで一般公開された。発売直前のモデルが公開されているということもあり、会場ではトヨタ プリウスへの注目度はひときわ高い。トヨタは、この4代目プリウスの日本での正式発表を2015年12月と公表している。

新型プリウスの特徴は、まずトヨタ車初のTNGA(Toyota New Global Architecture)が採用されこと。TNGAは、豊田社長の提唱するもっといいクルマをテーマとした技術のひとつ。本来はプラットフォームなど、基本骨格部分を多くの車種で共通化し、コスト低減を図る目的をもつ。TNGAはさらに、より走行性能を高めるなどの工夫が施されている。

このTNGAにより、4代目新型プリウスは運動性能の高い低重心のプラットフォームが使われた。その結果、新型プリウスの重心高も大幅に下がっり、トップクラスになるようだ。低重心化は、クルマの運動性能に大きく係わる部分。カーブなどでは、より速く安定した走行などが可能となる。今までのプリウスは、燃費志向が強いモデルだったが、TNGAの採用により、走りの質の高さもプラスされることになる。

低重心化には、かなりこだわったようだ。とくに重いパワーユニット系は10mm下げられ、先代プリウスでは荷室付近にあったバッテリーが、アクアと同じようにリヤシート下に設置された。大きく重いバッテリー積載位置が大きく下げられた上に、車軸内に収められたこともあり、前後の重量バランスも向上している。

さらに、従来型に対し全高を20mm下げ、ルーフピークを170mm前に出した。さらにノーズ先端を70mm、フード後端を62mm低くするなどし空力性能を高めた。その結果、クラス世界トップレベルのCD値0.24を実現している。当然、着座位置であるヒップポイントも59㎜下げられている。ヒップポイントを下げても、フードも下がっているので、ドライバーからの視界は良好だという。

ただ、ヒップポイントが下がり運動性能は向上したかもしれないが、簡単に割り切れるものではない。従来のプリウスは、ユニバーサルデザインと呼ぶべきなのか、ヒップポイントがやや高く乗り降りがしやすかった。プリウスオーナーは、高齢者が多く乗降性の良さは重要。実際に東京モーターショーで展示されていたプリウスに何度か乗り降りしたが、少々腰への負担は大きい。もっといいクルマ=スポーティという単純なものではないよう気がする。こうしたパッケジングになり、やや乗り降りしにくくなった新型プリウスを高齢なオーナー達はどう評価するのか注目したい。

新型プリウスのデザインは、かなりユニークなものとなった。デザインコンセプトは「アイコニックヒューマンテック」。ひと目でプリウスと分かり、直感で分かる先進機能を表現したという。理屈はともかく、好き嫌いが分かれるデザインとなっている。すでに発売されているFCVのミライにも似たテイストをもつ。万人受けするデザインでまとめてきたトヨタとしては、なかなかチャレンジしたともいえるだろう。

インテリアは、広がりがあり乗員を包み込むような優しさを感じるデザインとなった。フロントシートは、先代モデルに比べより疲れにくい設計が施された。

新型プリウスのハイブリッドシステムは、基本的に先代モデルをより進化させたものとなった。進化バージョンとはいえ、エンジンの最大熱効率は40%と世界トップレベル。その他の部分でも、ダウンサイジング化や効率向上など大幅な改良が施されている。

こうした大幅な改良の結果、新型トヨタ プリウスの燃費は40.0㎞/Lとなった。技術の進化と深化には、素晴らしいものがある。ただし、少々イメージを悪くしているのが燃費表示だ。この40.0㎞/Lという数字を出すモデルは、一部グレードに限られているこうことだ。つまり、宣伝や販促用に燃費40.0㎞/Lとアピールしたいがためのオトリモデルということになる。現行のプリウスも同様。実際に我々が買うグレードは、40.0㎞/Lに達していないモデルになるわけなので、営業目線が強すぎる設定なのが残念でならない。他メーカーもやっていることとはいえ、売れ筋グレードが40.0㎞/Lに達していないとはいえ非常に素晴らしい燃費性能なのだから、誇りをもって堂々とアピールすればいいと思う。まだ公表されていないものの、実際の売れ筋グレードは35~38㎞/L程度の燃費になると予想した。

また、実燃費向上についても進化している。新型プリウスでは、エンジンの暖気を早めるシステムも導入。従来のプリウスは、エンジンの冷間時燃費が悪かった。そのため、通勤・通学の送り迎えで短い距離での使用では、燃費が悪かった。こうしたシステムが導入されることで、実燃費も向上するだろう。

従来型のプリウスで評判が悪かった走行フィーリング面も改善された。ハイブリッド制御を改良。発進加速フィールを向上させ、少ないアクセル操作でダイレクトな加速感を実現。搭載されるバッテリーは、ついにリチウムイオン電池が搭載される。また、ニッケル水素電池も用意されており、こちらは進化型となった。リチウムイオン電池は、進化型のニッケル水素電池より、さらに小型軽量化されれている。どんな性能差があるのかは、今のところ不明だ。

新型プリウスの安全装備面は、ようやく一定のレベルに達する。トヨタの自動ブレーキ関連の安全装備である「トヨタ セーフティセンスP」が用意される。トヨタ セーフティセンスPは、単眼カメラとミリ波レーダーの組み合わせ。車両だけでなく、歩行者も検知する。事故を本当に減らしたいとトヨタが考えているのなら、標準装備が理想。こうした装備ひとつで、トヨタの本当の考え方が見えてくるので標準草加化か否か注目したい。

4代目プリウスでは、初の4WD車が設定された。従来のモデルには4WDの設定が無く、降雪地域の顧客が選びにくかった。今回の4WD車が用意されることで、降雪地域の顧客に対してエコカー減税のメリットと走破性という両方のメリットを提示できるようになった。販売面では、期待できる装備と言える。

さて、新型プリウスの価格だが、今のところ不明。ハイブリッドシステムは、大幅に手が入れられているので価格アップは確実。TNGAの採用でコスト低減が期待できるが、トヨタはハイブリッドは売れ利益も取れるということもあり、かなり強気の価格設定をする可能性が高い。また、3代目プリウスはホンダのインサイトとの価格競争もあり、かなり安くマーケットに送り出した。その結果、トヨタ車全体の価格バランスを崩したしまった経緯があり、プリウスはマイナーチェンジで大幅に値上げしたほど。その値上げでも、販売台数には大きな影響を与えなかったほど売れた。そうした自信からも、4代目新型プリウスではかなり価格アップするのではないかだろうか。そこで、先代プリウスより、20~30万円はアップするとみた。4代目新型トヨタ プリウスのエントリグレードの価格は243~253万円前後からと予想してみた。こうなると、上級グレードは300万円前後。ナビなどのオプションを装備すると、350万円くらいになりそうだ。

【新型トヨタ プリウスプロトタイプモデル主要諸元(社内測定値)】

全長(mm)/ 全幅(mm)/ 全高(mm) 4,540 / 1,760 / 1,470<1,475>
ホイールベース(mm) 2,700
室内長(mm)/ 室内幅(mm)/ 室内高(mm) 2,110 / 1,490 / 1,195
エンジン種類 直4DOHC
総排気量(cc) 1,797
最高出力(kW[PS]/rpm) 72 [98] / 5,200
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 142 [14.5] / 3,600
モーター最高出力(kW[PS]) 53 [72]
最大トルク(N・m[kgf・m]) 163 [16.6]
バッテリー リチウムイオンまたはニッケル水素
< >内の数値はE-Four(電気式4輪駆動方式)搭載車の値