ホンダN-ONE

<全高を立体駐車場に対応する1,550㎜以下にたローダウン、スポーツモデルのモデューロXを追加>

ホンダN-ONEホンダは、軽自動車のN-ONEをマイナーチェンジし発売を開始した。N-ONEは、ホンダのNシリーズの第3弾のモデルとしてデビュー。1967年に発売されたホンダ初の軽乗用車「N360」をモチーフにしたモデルだ。ホンダのM・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想を受け継ぎ、センタータンクレイアウトを採用。大人4人がくつろげる広い室内を実現し2012年11月に登場した。

N-ONEの全高は1,610㎜。アルトやミラといったモデルは、全高1,500㎜程度のモデルと比べると随分背が高い。これは、センタータンクレイアウトというプラットフォームの影響があるものの、あえて全高を高くした。これは、アルトやミラといったモデルは、価格が優先されるカテゴリーという判断からだ。このクラスは儲からない。そのため、N-ONEは全高を高め、少しでも立派に見せた。そして、自らプレミアムな軽とし差別化を図る。また、ルーフをボディ色とは異なる色に塗り替えるオシャレな2トーンカラースタイル仕様も用意。現在の2トーンカラーブームの火付け役となっている。

ホンダN-ONEそんなプレミアムな軽、N-ONEはデビュー直後はヒットモデルとなる。1万台/月を超える販売を記録した。しかし、徐々に販売台数は落ち、ここ最近では1,000台/月を売るのもやっとという状況になっている。2015年に入り、軽自動車税の増税により軽自動車マーケットは冷え込んでいる。そうした影響もあるのだろう。しかし、それ以上にスズキ アルトの出来が良く、加えてスポーツモデルのターボRSも人気を得ている。ホンダが捨てたはずの背が低い廉価な軽自動車が見事に人気車種となり、N-ONEの顧客層とさえ競合しているのだ。

また、見映えを重視し車高を高めたことも裏目に出たようだ。本来、軽自動車はそれほど立体駐車場の高さ制限1,550㎜の影響を受けないのだが、N-ONEはやや違うようだ。都市部のダウンサイザーの受け皿需要も多く、N-ONEが欲しくても駐車場の制限で購入できないという顧客層もいたのだろう。そんな背景もあって登場したのが全高を1,545㎜としたN-ONEローダウンなのだ。この全高1,550㎜というのは、意外と重要で車種は違うが、日産ジューク も立体駐車場での使い勝手を考慮し全高を1550㎜にしたアーバンセレクションを投入している。

ホンダN-ONEN-ONEローダウンは、単純にサスペンションだけで車高を下げることができなかったため、新デザインのルーフ、スポイラー、ローダウンサスペンションとなかなか手の込んだ仕様となった。そこまでしてでも、1,550㎜以下にしたかったのかという切迫した状況にあったことを感じさせる。当然、車高が下がれクルマの重心高も下がる。そうなると、ルックスだけでなく走行性能も大きく変化していることが予想され、よりスポーティな走りに期待したいところだ。

その他のマイナーチェンジの内容は、装備の充実や見映えの変更だ。フロントグリルやフロントバンパーに上質でワイド感を強調するメッキモールを全タイプに追加。また、サイドビューを引き締めるドアサッシュモール、上質な肌触りのコンビシート(プライムスムース×ジャージ)を追加(Premium、Premium Tourer、Premium Tourer・LOWDOWNに設定)。装備類では、オートリトラミラー、ナビ装着用スペシャルパッケージ+ETC車載器をGを除くタイプに標準装備した。

さらに、新グレードであるスポーツタイプのコンプリートカー「Modulo X(モデューロ エックス)」を追加した。N-ONEは、ワンメイクレースも行われていることもあり、スポーティな軽自動車と言うイメージもある。モデューロXは、そんなスポーティなN-ONEのイメージリーダー的新グレードといえる。

モデューロXは、専用のエアロバンパー、フロントグリル、サイドシルガーニッシュなどのエクステリアパーツに加え、高剛性バンパービーム、専用デザインマフラー、サスペンション、ブレーキパッド、アルミホイールなどを装備。さらに、EPS、CVT(Sレンジ)を専用セッティングとすることで、上質で軽快な走りを実現した。

今回のマイナーチェンジで、ホンダN-ONEは、従来のプレミアムな軽というよりは、スポーティ色をより鮮明にし他社との差別化を図っている。ある意味、ホンダらしい戦略ともいえる。ただし、激戦軽自動車マーケットは一筋縄ではいかない。注目のN-ONEプレミアムツアラーローダウンの価格は約170万円。アルトターボRSが130万円なので、価格差は40万円もある。この価格差だと単純にライバルと言う構図にはなりにくいのだが、単にスポーツな軽が欲しいという顧客にとって、クルマのパフォーマンスが重要な選択要素になってくる。確かに装備や質感という部分は確かにN-ONEプレミアムツアラーローダウンが上回るが、870㎏の車重にパワーは64ps&104Nm。対するアルトターボRSは、670㎏の車重に64ps&98Nmとなっている。車重が200㎏も違う。これだけ違うと、速さと言う点ではアルトターボRSが勝る。N-ONEプレミアムツアラーローダウンには、もっと明確に高価な理由が欲しいところでもある。マーケットは今後、プレミアムな軽からプレミアムでスポーティな軽となったN-ONEに、どんな結果を与えるのか楽しみだ。

■ホンダN-ONE(エヌワン)価格
・G・LOWDOWN FF 1,418,000円
・Premium Tourer LOWDOWN FF 1,698,000円
・Modulo X FF 1,898,000円