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「気になるくるま」第1回 V8インターセプター ブラック・パーシュート・スペシャル(1979〜)

ひとことでくるまと言っても、その種類たるや、膨大なもの。誰にも知られていないようなマイナーなものから、みんなの憧れのようなスーパーカーまで、実に様々です。そんなクルマたちの中から、マニアックカー・マニアでもある遠藤イヅルが、独断と偏見で選び出したくるまたちをイラストとともにみなさんにお送りいたします。第一回は、いきなり劇中車(笑)。近未来の世紀末を描いて世界中に衝撃を与えたオーストラリアの映画、「マッドマックス」に登場した「V8インターセプター」です!


映画「マッドマックス」初期2作品の主役

今年2015年に30年ぶりのシリーズ4作目となる「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が公開されて話題となっている「マッドマックス」。近未来が殺伐とした暴力的な世界として描写され、「世紀末は荒廃している」という世紀末感を新たに創り出し、日本でも漫画「北斗の拳」がこの世界感に多大な影響を受けていると思われるのは有名なところです。


さて、そのマッドマックス。作風の衝撃と並んで思い出されるのが、劇中に登場する主人公マックスが乗るスーパー・パトカー、その名も「V8インターセプター(ブラック・パーシュート・スペシャル)」と呼ばれます。暴走族に同僚や妻子を殺されたマックスは、暴走族専門の特殊警察「M.F.P.(Main Force Patrol)」本部からこのマシンを盗み出し、暴走族と死闘を繰り広げます。


真っ黒なボディに、グリルレスのフロント、ボンネットからはスーパーチャージャーが突き出て、ボディサイドには左右4本ずつのマフラー。太いタイヤとオーバーフェンダー、ルーフとテールに大型のリアスポイラーを装え、設定では最高出力600ps!とされていました。その迫力と衝撃は、V8インターセプターというくるまを世界中のファンの脳裏に焼き付けました。


同じ大陸風味でも実は・・・

ところで、くるま好きとして気になるのは、V8インターセプターのベース車両。外観やチューン具合がアメリカ車をイメージさせますが、観察力に優れた人はこれが「右ハンドル」であることに気がつきます。そう、これは、アメリカ車ではないのです。ではどこの、なんて言うくるま?答えは、マッドマックスがオーストラリアで製作された映画である、というところにあります。


V8_interceptor(クリックで拡大)そのくるまの名前は、フォード・ファルコン。同名のくるまは1970年頃までアメリカにもありましたが、ベースになったファルコンは豪州フォードオリジナルで「XB系」と呼ばれ、1971年に兄弟車のフューチュラ/フェアモントとともに登場。アメリカ・フォードの中型車用シャーシ(ホイールベース111インチ:2820mm)の上に2ドア/4ドアのボディが架装されています。エンジンは3.3ℓ/4.1ℓの直6OHV、そして5.0ℓ/5.7ℓのV8OHVが用意され、ファルコンの高性能版「GT」は304psを誇りました。


劇中のV8インターセプターは1973年型のファルコンXBがベースとなっており、低予算の映画ながらも改造費の多くはこれに掛けられたとのこと。それにしても、復讐の鬼と化した主人公が壮絶なバトルを繰り広げるという場面に、このマシンの無表情さ、そして黒いカラーリングは凄みがあり、まさに最適な役者でした。マッドマックスという映画も、このくるまが無かったら、ここまでメジャーにはならなかったかもしれませんね。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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