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<単にガソリン車としてではなく、RSの名を冠したスポーティモデルとして差別化>
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ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

<単にガソリン車としてではなく、RSの名を冠したスポーティモデルとして差別化>

ホンダ は、ロールーフ型の都市型多人数乗用車ホンダ ジェイドに、直噴1.5Lダウンサイジングターボエンジンを搭載したジェイドRSを追加し発売を開始した。

ジェイドは、2015年2月に発売されたばかりの6人乗りモデル。全高を1,530㎜と、ほとんど一般的なセダンなどと変わらない全高にした多人数乗車モデル。この全高が都市型と呼べる所以で、全高1,550mmまでという都心部に多い立体駐車場でも使えるメリットがある。

デビュー当時、ジェイドのパワーユニットは1.5L直噴エンジン+ハイブリッドシステムのみの設定だった。この組み合わせは、SUVのヴェゼルと同じ。パワフルな直噴エンジンにすることで、やや大き目のボディをもつジェイドの車重に見合ったものとしている。システム出力は152psで、2.0Lガソリン車同等の実力となっている。燃費は、さすがハイブリッドとというもので、25.0㎞/Lという低燃費性能を誇る。

ハイブリッド車人気の国内マーケットだが、ジェイドはすでに苦戦中だ。月販3,000台の目標をすでに割り込んでいる状況。それには、訳がある。まず、ロールーフミニバンは完全に人気を失っている。ストリームが姿を消し、オデッセイが全高を高くしスライドドアを装備したのもそのためだ。多人数乗車モデルは、スライドドアをもち、全高が高く室内が広くないと売れない。

ホンダは、ロールーフ型を好む顧客がわずかながらいるというが、ホンダの想定していた以上にマーケットはシュリンクしていた。その上、ジェイドはハイブリッド車ということもあり、強気の価格設定で売れ筋グレードのハイブリッドXの価格が292万円と高額。この価格は、両側スライドドアをもつ本格派ミニバンのトヨタ ノア&ヴォクシーハイブリッドとほぼ同じ。ホンダのステップワゴンよりも高価だ。こうなると、ますます難しい状況になる。本来なら、価格の安いガソリン車が欲しかったところだ。

ホンダの営業サイドも、そうしたライアップにガソリン車が必要なことくらい分かっている。しかし、ジェイドのデビュー時に、今回の1.5Lターボを搭載したモデルをハイブリッド車と同時に出せなかった理由がある。それは、ステップワゴンの存在。人気のミニバンであるステップワゴンに、ホンダ初の1.5Lダウンサイジングターボエンジン搭載とし、話題にしたかったからだろう。そのため、ジェイドRSの発売はステップワゴンの後になったようだ。

そんなジェイドRSのエンジンスペックは150ps&203Nmで、ステップワゴンと同じ。スペック的には、2.0Lガソリン車相当。ホンダが2.4L相当と言っているのは、エンジンの低回転でのトルクが2.4L車並みということだ。エンジンの低回転時には、それなりの力強さを感じる。

ジェイドRSの燃費は18.0㎞/L。ハイブリッド車と比べると燃費は約30%ダウン。ただし、ライバルとなるトヨタ ウィッシュの2.0Lの燃費が14.4㎞/Lなので2.0Lガソリン車よりも20%ほど燃費が良い。

外観のデザインは、ハイブリッド車との差別化が若干図られている。フロントグリルは、メッシュタイプの専用デザインを採用。さらにテールゲートと同様、フロントグリルにもRSエンブレム装着。「フォグライトガーニッシュ」、「アウタードアハンドル」、「テールゲートモール」にはダーククロームメッキを、ホイールには「17インチ ノイズリデューシングアルミホイール」を採用した。

インテリアは、ブラウンとブラックの2色を用意。シートはファブリックとプライムスムースのコンビシートとなった。本革ステアリングとブラックシートには、レッドステッチを施し、マニュアル感覚のシフト操作を可能とするパドルシフトを装備。アクセルペダルとブレーキペダルは、RS専用デザインとした。

ジェイドRSは、こうした見た目だけでなく、クルマの方向性も変えられている。RSというグレード名は、ホンダのスポーティグレードに使われる。その名前からも分かる通り、ハイブリッド車との差別化もあり、よりスポーティなセッティングになっている。サスペンションは、ハイブリッド車に対してフロントの剛性を15%、リアの剛性を20%アップ。さらに、スプリングやダンパーなどには、RS専用のセッティングを施している。こうした仕様の変更により、ジェイドRSは安定感のある走りとハンドリング性能を実現している。

そのハンドリング性能のより向上させるために、電子制御システム「アジャイルハンドリングアシスト」を採用。ブレーキ制御を活用することで、コーナリング時に狙ったラインをトレースしやすく、少ないステアリング操作でスムーズな車両挙動を可能とした。こうした技術の他に、ボディを補強やアンダーフロアパネルに補強部材のトンネルブレーズを追加し、フロア回りの剛性を強化している。

ジェイドRSは、ハイブリッド車より安い2,530,000円という価格になった。評価したいのは、単に安価なガソリン車ではないということ。走りを重視したガソリン車という個性で、新たな顧客を発掘する可能性があるモデルといえる。強いて言うのなら、ボディ補強までやったのであれば、1.5Lターボもステップワゴンと同じスペックではなく、ややパワフルに変更するなどのパフォーマンスアップがあってもよかったかもしれない。また、ジェイドRSは1.5Lターボなので、自動車税が34,500円と2.0Lより年間5,000円の節税になる。

■価格

ホンダ ジェイドRS:2,530,000円