スズキSクロス

<スタイリッシュで実用性も十分だが、燃費と安全性能が物足りない>

スズキ SX4 Sクロススズキは、人気コンパクトSUVマーケットに、満を持して新型スズキ SX4 Sクロス(SX4 S-CROSS)を送り込んだ。

Sクロスは、2013年3月のジュネーブショーで世界初公開された。基本的に欧州戦略車ということもあり、ハンガリーのマジャールスズキ社で2013年8月より生産を開始。欧州や中南米、大洋州、アフリカ等へ輸出されている。日本で発売されるSクロスも、ハンガリーで生産され日本へ輸入される。

2013年当時、欧州を中心にコンパクトSUVの人気が高まっていた。そのため、Sクロスもデビュー当初から、日本へ導入が期待されたモデルだ。しかし、スズキはSクロスをすぐに日本に導入しなかった。その訳は、コンパクトカーのスプラッシュをハンガリーから輸入し販売した経緯があったのだが、ほとんど売れなかった経験がある。こうした経緯があることから、国内マーケットの動向を慎重に注視。日産ジュークやホンダ ヴェゼルなどの売れ行きを見なが導入を決定したようだ。導入タイミングも絶妙で、話題となっていたコンパクトSUVであるマツダCX-3の発表前。まさに、満を持して日本導入とした感がある。

Sクロスのボディサイズは全長4,300×全幅1,765×全高1,575mm。全高は1550㎜を超えており、都市部に多い立体駐車場の全高制限はクリアしていない。このあたりは、日本での使い勝手を重視したマツダCX-3とは違う。

搭載されるエンジンは、M16A型1.6Lだ。このエンジン型式は、スイフトスポーツと同じだが、スペックは異なっており117PS&151Nmとなっている。また、使用する燃料もレギュラーガソリンとなっている。組み合わされるミッションは、低燃費化に効果がある変速比幅が大きい副変速機付きCVTのみの設定。この排気量設定は少々微妙。自動車税を考えると、税金の安い1.5Lエンジンという選択になるが、Sクロスは欧州戦略車ということもあり1.6Lになっている。

Sクロスの燃費は、2WD車が18.2km/L、4WD車は17.2km/L。これも微妙な数値。1.5Lのジュークジュークより優れているものの20.6㎞/Lを誇る1.5Lガソリンのヴェゼルには引き離されている数値だ。これは主に、アイドリングストップ機能が装備されていないことが大きな理由だ。スズキの得意とする軽量化技術で、SX4に比べ車両サイズを大きくしながらも50㎏も軽量できたのに、燃費性能が少々物足りないのはもったいない状態だ。

スズキ SX4 Sクロススタイリングは、なかなか洗練された上品さをもつ。ボディの面の張りもSUVらしく力強いもので、大きく見えるデザインになっている。また、ディスチャージヘッドランプを装備し、ポジションランプにはLEDを使用するなど高級感も上手に表現している。

そして、Sクロスの美点は、SUVに必要なラゲッジスペースが420Lと大きいことだ。CX-3が350L、ヴェゼルが404Lなのでクラストップレベルのラゲッジスペースを誇る。広い室内など、実用性は非常に高いレベルにある。こうした技術は、軽自動車で鍛えた高効率パッケージを得意とするスズキのならではのもの。

また、欧州ではFF車が多いコンパクトSUVだが、Sクロスには本格的な4WD機能が搭載された。4モード走行切替機能、車両運動協調制御システムの、3つのテクノロジーからなるスズキ独自の新しい4WDシステム「ALLGRIP」を採用した。この4WDシステムは、4モード走行切替機能があり、AUTO、SPORT、SNOW、LOCKの4つのモードを選ぶことで、さまざまな走行シーンにおいて、優れた走破性と走行安定性を実現する。

スズキ SX4 Sクロスさて、スズキ SX4 Sクロスの選び方。1グレードの設定なので、2WDか4WDのいずれかを選ぶしかない。価格は、2WDが2,041,200円、4WDが2,257,200円となっている。価格帯は、他メーカーのガソリン車と同じ価格帯といえる。ただし、自動ブレーキの用意が無く、燃費性能もアイドリングストップ機能が無いことなどにより、少々物足りなさがある。こうなると、価格が同じなら他のガソリン車という選択が出てきてしまう。

ただし、1995mmというトップクラスの室内長と420Lというラゲッジスペースは、完全にライバルをリードする。こうした室内やラゲッジの広さを重視するのであればSクロスという選択になるだろう。それだけに、燃費性能や安全装備がイマイチなのが惜しい。こうした部分が改善されれば、かなり完成度の高いコンパクトSUVといえるだろう。

■スズキ S-Cross(Sクロス)価格:2WD 2,041,200円 4WD 2,257,200円