クルマでしか行けないVol.36 市原の中房総国際芸術祭を満喫@市原湖畔美術館
桜の花もそろそろ見ごろを迎え、どこかに飛び出していきたくなるような暖かな日差しが続く3月下旬。何か出かける理由はないかとニュースサイトを閲覧中に興味深い記事を発見しました。

「千葉県市原市で中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス開催」。
一体何だろう? と疑問に思いさらに詳しく調べてみると、過疎化の進む市原市がアートというコンテンツを通じて地域を活性化させるというもの。
舞台は市原市全体。廃校になった小学校や使われなくなった駅の詰所が、現代美術の作家たちによって新しい命を吹き込まれ新たな役目を与えられたとあり、筆者の興味を掻き立てます。
こうなっては何をしても手がつきません。結局、市原市を彩るアートを一目見ようとクルマを走らせることになりました。

市原市までは、東京から京葉道路を走り館山自動車を抜けておよそ1時間。市原ICを降りるとそこはすでにアート×ミックスの会場です。

街の至るところで見かけるノボリ
8か所のエリア(里見エリア、月崎エリア、上総大久保エリア、養老渓谷エリア、上総牛久エリア、高滝エリア、月出エリア、広域)にわけられた会場の中で、まずは月出エリアに向かいます。

ここには、月出小学校を改装して地域住民が「遊・学・匠・食」に触れ合う工房として生まれ変わった月出工舎があります。教室は工房や作品の展示場となり、1階にあった職員質と保健室は地元の米粉を使った団子を味わうことのできるオープンカフェへと姿を変えていました。


『月と団子』という名のcafé。店内の中央には地元で
収穫された米が作品として展示され、そのインパクトに
訪れる人の目を惹きつけます
甘すぎないみたらし団子はしっかりとした食感で
噛むほどに団子の素朴な甘さが口に広がります
また、プールには「風」をモチーフにした藍染めの作品、そして校庭には「木」をモチーフにした釜戸がつくられ、まるでアミューズメント施設のよう。

風をモチーフにして藍染めでつくられた作品は
差し込む光と浮かび上がる影の様子まで作品に見えてきます
裏山を間伐し森の中に光を与えながら作られたオブジェ
木々の息遣いが聞こえてきそうです
地域のコミュニティーの場として活躍する『火処』。
釜戸をつかった調理法などが学べ、「やきいも学」という
興味をそそるワークショップが定期的に開催されています
月出エリアから10分程北に進んだところにあるのは月崎エリア。
月崎駅のすぐ横にある詰所は、森の音や動物たちの声を聞くことのできる森ラジオステーションに。
木屑や芝が敷き詰められた独特な雰囲気を醸し出す詰所内では、懐かしいラジオがいくつも並び何十年も前に実際に使われていたヘルメットや工具が違和感なく飾られていました。

線路やホームの修繕をする人が休んでいた詰所も
作家の手によって作品へと生まれ変わりました
敷き詰められたウッドチップで、
詰所内は木の香りが漂います

懐かしいカセットデッキ、周波数をあわせて市原の森の中に
設置されたマイクから聞こえる川の音や小鳥のさえずりを楽しみます
月崎エリアを後にした筆者。次に向かった先は、昨年8月にリニューアルオープンした市原湖畔美術館です。

市原湖畔美術館のある高滝湖が見えてくると何やら湖の真ん中に浮かんでいます。クルマを停めてじっくり見てみると浮かんでいるのは飛行機。「どうして飛行機なんだろう?」と考えながら市原湖畔美術館を目指します。

高滝湖に浮かぶ飛行機型の船では定期的に
ワークショップが開催されています

まず、目に飛び込んできたのは、広い芝生と湖畔にそびえ立つ高さ30Mの揚水機。
驚きはまだまだ続き、館内では市原市にまつわる作品に加え、いちはらアート×ミックスに賛同するカタチで企画展示の作品が、所狭しと並べられています。

市民の生活を支えた揚水機も、
美術館の横にあると作品に見えてくるから不思議です
市原湖湖畔美術館を見守る巨大なトンボのオブジェ
「アルフレド&イザベル・アキリザン」の作品『ドリームハウス』は
地域の方がつくった段ボールのハウスを集積したもの
「現代美術というと難しく思う人もいますが、まずは造形物のインパクトを楽しんでください。その後に作品に込められた意味を知りながら、『なんでこんなことを考えたのかな』『こんなこと考える人がいるんだ』と考えるとさらに楽しめる世界なんです」と、市原湖畔美術館の渡辺さんは現代美術の触れ合い方を教えてくれました。

「ピクニック気分で気軽に足を運んでください」と渡辺さん
最期に向かった先は里見駅近くの里見エリア。旧里見小学校では教室ごとにそれぞれの作家が作品を展示しています。
まずは校長室。扉を開けた瞬間、目の前は一面氷の世界。まるで大きな冷凍庫にいるような寒さの中、校長室を覆う氷のアート。校長先生への皮肉ともとれる作品に思わず笑みがこぼれます。

入った瞬間に体が震えだす校長室。ゆっくり見たくても5分持ちません
次に足を踏み入れた教室は壁一面にお菓子もパッケージやドーナツを並べて作られたお菓子の教室。シャンデリアには見慣れたパインアメが! 
その他、ミラーボールが回り宇宙を感じさせる教室や教具が天井からつるされた教室など、様々な発想に触れ気が付くともう夕方。

暗幕に囲まれた教室ではアルファベットやカタカナの光が飛び交います
教具が吊るされた教室
一見、見えないテーブルに並べられている錯覚に陥る不思議な作品
お菓子でデコレーションされた教室は色使いも鮮やか

シャンデリアの周りを走る小湊鉄道の模型
数ある車両の中でラッピングされた車両は1車両のみ
いつ、どこを走っているかわからないので見かけた人は幸運
1日ではまわりきれないボリュームにまた訪れることを心に誓った筆者。
新しい発想や刺激で心満たされ近い家路へと向かいました。

<アクセス>
市原湖畔美術館
住所:千葉県市原市不入75−1
TEL : 0436-98-1525
OPEN:平日:10:00 – 17:00
土・祝前日:9:30 – 19:00
日・祝:9:30 – 18:00
休館日:月曜日[祝日の場合は、翌平日]年末年始[12/29〜1/3]
HP: http://lsm-ichihara.jp/