クルマでしか行けないVOL.19 奥多摩で味わうきのこ釜めし
夕暮れが早く感じるようになった、11月初旬。
ハロウィンが終わり、街はオレンジから少しずつ赤、緑、白のクリスマスカラーへ。冬はもう目の前といった雰囲気です。

しかし、もう少しだけ秋を満喫したい、どちらかというと食欲の秋を満喫したい!と冬の訪れを渋る筆者は、秋の味覚でもある「きのこ」をまだ食していないことに気づきました。

これはなんとしても秋が過ぎ去る前に味わっておかなくては!
ということで、きのこ料理を検索。

最近は、ZUND‐BARさんの塩ラーメンや万葉うどんさんのカレーうどん
といった麺類が続いたので、口が求めるのはご飯もの。

そんな筆者の目をくぎ付けにする一品を発見!それは、奥多摩にある『釜めし なかい』さんのきのこ釜めしです。食べたい!と思ったら、もういても立ってもいられません。早速、奥多摩を目指してクルマを走らせます。

首都高速から中央自動車に入り八王子ICへ。411号線滝山街道を北上し、多摩川を渡る手前で都道45号線に進路を変えさらに北へと向かいます。
流れる景色の中に草木の緑にくわえて紅葉をした葉の黄や赤が増えると、クルマが徐々に山の奥へと進んでいることを感じさせてくれます。
せっかくなので途中でクルマを停め、色づく山を見渡しながら森林浴。

赤、緑、そして空の青が視界いっぱいに広がります
この奥に名店があるなんて、
知らなければ引き返してしまいそう
紅葉狩りを楽しんだ後、一直線の道を進むこと数分、目の前に表れたのは力
強く書かれた「なかい」の3文字。

細く曲がりくねった道を進むと見える看板
駐車場はさらに細い脇道の先に

暖簾をくぐり扉をゆっくりと開け店内に足を踏み入れると、使い込まれたいろりがお出迎え。

先に入っているお客様の会話や笑い声の奥から、「いらっしゃいませ!」と威勢のいい声が聞こえてきます。

なんと、お昼時を過ぎた15時にもかかわらずお店はほぼ満席とのこと。さすが名店。更に期待が高まります。

中庭を見渡せる和室の席につき、念のためメニューに目を通しますが、注文するのはもちろんきのこ釜めしです。

趣のある建物はもともとご自身で住まわれていた家に
手を加えて今のカタチになったそうです
待つこと15分、どんぶりほどの陶器のお釜が目の前に置かれます。

ひとつはお目当てのきのこ釜めしと、そしてもうひとつは一口大に切りそろえられた白菜が浮かぶ水炊きです。箸休めとして刺身コンニャクとゆでまんじゅうも並びます。

定番のきのこ釜めし。
どの季節におとずれても味わうことができます
白菜を一口含むと口の中にはほんのりと
甘さがひろがります
もちもちとした食感の刺身コンニャクは
口の中をさっぱりとしてくれます
釜めしの蓋をあけ、立ち上る湯気が消えるとそこに見えるのは、ご飯に盛られ艶やかに輝くプルプルの煮しめじ。その色を見るだけでしっかりと味が染み込んでいることが伺えます。ほんのりと漂う醤油の香りに我慢は限界。煮しめじの山を崩すように一口目をいただきます。

食欲を掻き立てるプルプルと輝く煮しめじ
「しめじって弾けるの?!」まるで、煮しめじが生き物かのように口の中でぷりんっ!ぷりんっ!と弾けては、口に中を醤油とダシの味をいっぱいにしてくれます。ごはんにも醤油の味付けをされていますが、こちらは見た目よりあっさりとしていて、煮しめじの味と相性バッチリ。

数口食べたところで、次は水炊きへと箸を伸ばします。こちらはレモンを絞っていただききます。白菜のシャキシャキとした食感を楽しんだあとに広がる甘さ! 汁もあっさりとしていて、こちらも煮しめじの醤油味にピッタリ。名店と呼ばれることにも納得です。

「お店をはじめてから約30年。もっとお店を大きくしたり、もっとたくさんのお客様にきてもらったりすることも大事なことかもしれませんが、変わらないということも必要だと思います。当時と変わらない味を守りながらお出しした釜めしを『おいしいね』といってもらえることが一番うれしいです」と、聞かせてくれたのはご主人と二人三脚でお店を守ってきた宮野さん。今は2人の息子さんがお店を切り盛りしていると教えてくれました。

「自然と味を楽しんでください」と聞かせてくれた宮野さん
中庭のベンチに腰をかけて釜めしの余韻に浸りながらあたりを見渡すと、赤く色づいたもみじやかえでが目にとまります。

中庭では、徐々に色づくかえでやもみじの下で
秋の匂いを感じることができます
「11月の中旬から下旬になると、赤ではなく朱に染まった葉が見られますよ。その季節が1年でもっとも忙しい時期なんです」と、笑顔の宮野さんに見送られてお店を後にしました。

念願の釜めしでお腹も満足し、気さくに話かけてくれた宮野さんの笑顔に心も満足した1日でした。

<アクセス>
釜めし なかい
住所:東京都西多摩郡奥多摩町大丹波175
TEL:0428-85-1345
OPEN:11:00~19:00
定休日:木曜日 第2水曜日