トヨタ サイ
<真面目にセダンを作り続けるトヨタだが、やっぱりサイは高価過ぎたのか?>
トヨタ サイトヨタはミドルサイズのセダンでハイブリッド専用車であるサイをマイナーチェンジし発売を開始した。

サイは2009年に、ハイブリッド専用車としてデビュー。2.4Lエンジンを搭載するハイブリッドシステムなど、基本部分をレクサスHS250hと共通とした高級セダンだ。そのため、サイに対する期待は高かった。それは、トヨタが多く持つセダン車に乗る顧客の受け皿として、また、他社のセダン顧客や輸入車セダン顧客を奪取する役割を担っていたからだ。
ハイブリッド車は、なんでも売れると思っていたトヨタだが、サイの販売台数は、わずか1年で勢いを失った。2012年になると、1,000台以上販売する月は稀な状態。セダンマーケットの激減などもあったとはいえ、トヨタにとって想定外な結果となった。

なぜ、サイは売れなかったのか? デザインが不評だったことに加え、かなり強気な価格設定がされていたことも理由に上げられる。当時、人気のGグレードで370万円で、もう少し良い装備となると400万円に近くなる。同じトヨタ車と比べると、マークXの2.5L車で高級グレードであるプレミアムは300万円を切る292万円と大幅に安いのだ。コストがかかるFR車は、乗り味やパフォーマンス的にもFF車より高級とされる。

しかし、サイはマークXを圧倒する高価格となっている。いくらハイブリッドとはいえ、これだけの価格差があると、優れた燃費による経済性の差で、価格差を埋めることなどほとんど不可能な状態だ。さらに、マークXだけならまだしも、クラウンのエントリーグレードである、クラウン2.5アスリートが357万円なので、新型クラウンよりも高価なセダンとなっていた。高級車としてのパフォーマンスも、当然クラウン&マークXが上でその上サイより安いとなると、サイを選ぶ理由があまりないのだった。

ほとんど売れなくなったサイは、マーケット側から見れば、このまま初代で姿を消すのかとも思われた。それもそのはず、2011年9月にサイより100cc排気量をアップしながら、燃費でも上回るハイブリッドシステムを搭載したカムリ ハイブリッドが登場したからだ。サイズもカムリの方が、サイよりも一回り大きい。それでいて、ハイブリッドGパッケージの価格は、322万円と安い。クルマも大きく燃費も良く、価格も安いのなら、カムリ ハイブリッドという選択になるのも当たり前だ。そんなカムリ ハイブリッドも1,000台弱/月という販売台数で低迷しているくらいだからだ。

トヨタ サイ今回マイナーチェンジされたトヨタ サイが、大幅なデザイン変更されたのも必然といえる。不評だった要因でもあったし、トヨタのハイブリッド車ラインアップの中でも、価格も高く、ハイブリッドシステムも最新ではないとなれば、差別化するのはデザインしかないというのも当然だ。

大幅なデザイン変更という点では、今回のマイナーチェンジではよく頑張った。ボンネットからバンパー、ヘッドライト、フェンダーなどが大きく刷新されている。とくに、ヘッドライトまわりのデザインは個性的だ。ほぼ車両の全幅をカバーする超ワイドサイズヘッドランプを採用。精悍で鋭い眼差しでキレのあるデザインになった。ライト点灯時には、白色LEDの閃光が切れ目なく中央から両サイドへ力強く発散し、夜にはひと目でトヨタ サイであることをアピールする。

マイナー前のサイのイメージを一切感じさせない大幅なスキンチェンジといえる。ただ、さすがに全体のシルエットだけは変わっていない。フロントやリヤなど、部分部分はカッコよくなったが、全体のシルエットを見ると・・・、そんな感じになる。

インテリアも同様に、大きく変化した。センタークラスター、フロントコンソールを含むインストルメントパネルを一新。木目調加飾やメッキ加飾をアクセントにしながら、ハイブリッド車らしい近未来感と高級感を上手に融合させた。また、高価な価格帯のクルマである理由をよりアピールするために、ディテールにもこだわり高級感を演出。ステッチ加工を施したシフトノブやアームレスト、メーターフード、無垢のアルミから削り出したオーディオノブなど、細部へもこだわることで、上質感を追求している。

最近のトヨタ車は、クラウンなどにもタッチパネル式を多用している。ナビやエアコンのタッチパネルは、ドライバーの視線移動が大きくなり、動いて絶えず揺れている車内でタッチパネルを操作するのは非常に難しく危険を伴う。サイは、リモートタッチ式と呼ばれるノブを使って操作するので、操作感がイマイチだが安全性としては正しい選択だ。欧州車のほとんどが、ダイヤル式なのはそういった理由からだ。

真面目なトヨタは、デザインだけといった見た目の分かりやすさだけで、マイナーチェンジを終わらせていない。基本性能部分では、吸遮音材の増強や遮音ガラスの採用、エンジンマウントの改良など、車室内の騒音低減大幅にアップ。ラージクラスの高級セダンを凌ぐ静粛性へ向上させている。

トヨタ サイ さらに、ボディのスポット打点追加によりボディ剛性を強化。さらに、燃費向上や走行安定性向上のため、空力特性までも見直され、エアロスタビライジングフィンを装備。さらに、ボディの振動を吸収し走行安定性に寄与するフォーマンスダンパーも前後に追加した。その結果、マイナー前のサイトは違うクルマに感じるくらいボディ剛性がアップし、ハンドリングなどは高い安定性と楽しい走りを上手く表現している。

さて、注目のハイブリッドユニットは、2.4Lハイブリッドシステムとなり、キャリーオーバーとなった。制御の変更などにより、JC08モード走行燃費22.4km/ Lと、マイナーチェンジ前に比べ1.4㎞/Lほど向上した。しかし、残念ながらカムリ ハイブリッドに搭載される2.5Lのハイブリッドシステムの燃費23.4㎞/Lには届いていない。これは、ハイブリッドシステムの変更となると、多額なコストがかかることになり、結果としてさらに高額な価格設定となることを避けたものだ。

サイの不振理由の一つは、高額な価格にある。これほど変更して価格据え置きなら、絶賛したいところだが、Gクレードで12万円アップの382万円となっている。G“Aパッケージ”は、 4,210,000円! 装備は良いとはいえ、メルセデス・ベンツCクラスやBMW3シリーズまでもが狙える金額になっている。この価格設定をどう考えるかで、サイを買うのか否かを決めてもいいだろう。

サイの選び方は、G 3,820,000円か、G“Aパッケージ” 4,210,000円のどちらかとなる。S 3,210,000円とS“Cパッケージ” 3,310,000円という、安く見えるグレードもあるが、装備はシンプルで今時ナビも装備されていない。小さな高級車ということで選ぶのなら、Gクレード以上がおすすめだ。

■トヨタ サイ価格
・S 3,210,000円
S“Cパッケージ” 3,310,000円
・G 3,820,000円
G“Aパッケージ” 4,210,000円



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