謳歌するクルマ

 爆発的に売れて来たわけでもない。大きさを誇る種類のクルマでもない。ツーリングカーレースでも活躍してはいるが、このクルマの本領ではないでしょう。ただ、今では3シリーズとほぼ同じくらいのボディにV8を奢るという、やはりこのクルマが高級車である点は疑う余地の無い事実でしょう。
 実は最近街で見かけるクルマで、「なんだかいいなあ」という気持ちにさせてくれるのが実はレクサスSCなのです。しっかりデザインされているがこの時季屋根をおろして走るこのクルマはとても「うきうきしている」感じがあふれている。
 しかし、このクルマの「能」は愛想を振りまくことではないのです。気にすれば気にするほど、眺めれば眺めるほどに、このクルマの背負っているものを気にしないでいられません。それは日本車の今であり、ひいては未来の高級車像までも思いやっているかのようです。それでも決して悲哀を呈することなく、ことあるごとに配色の追加・変更など繰り返され、和やかにも華やかな進化を遂げています。高級車は止まらない、立ち止まらない、当然です。前身のソアラの誕生から既に8年を経た今、一番芳醇な時期を迎えたといってよいでしょう。
 今週は筆者が今どうしても気になっているレクサスのクーペ、SC430に浸りたいと思います。
レクサスSC430 2006年式3,976,350円 面構え画像

※下記は8月16日現在のガリバー 中古車の在庫で、既に販売が終了している場合があることをご了承ください・・

'06年式 レクサス SC430 「3,976,350円」

そもそも、これはトヨタである。

レクサスSC430 2006年式3,976,350円 前方画像

 このクルマに限らず、「レクサス」に関する記述を見ると、できるだけトヨタの影をひそめた感じになっているような気がしています。トヨタの圧倒的な存在感、そこに新しくブランドを展開する。それも相当の高級車ブランドとしての「レクサス」を展開させる。なかなか一筋縄ではいかないのでしょう。
 しかし、高級車とは、こういう「体」ではなく、もっと「系譜」を重んじられるべきではないかと思うのです。誕生したいきさつ。今までの歴史。どんな人が選んだか。などなど、ついつい語りたくなること、がどれだけあるかでは無いでしょうか。
(これ即ち、「車庫譚」の極意です。然るに高級車の登場頻度が多くなる傾向にあるのです。もっとも大なり小なり、クルマは「語るもの」なのですが…)
 そう考えると、このクルマは紛れも無くトヨタの高級車の「系譜」に乗ったクルマなのです。トヨタとレクサスを繋ぐ鍵であり、レクサスにあってもっとも歴史的背景の色濃く残る車種であり、即ち、歴史の浅い高級車ブランドの将来を拓く上で、とても重要なキャラクターを持っているのです。
 

レクサスSC430 2006年式3,976,350円 
 後姿は「余韻」の体現。日本文化の美徳です。前を切り拓くのではなく挑戦性ではなく、通り過ぎた過去を懐かしむことの尊さ、懐古性の強いデザインではないでしょうか。
レクサスSC430 2006年式3,976,350円
 ちょっと他では選べない、「はっとするような」色の組み合わせが可能なのもレクサスSC430の好ましい点です。膨大な組み合わせが存在します。ソアラ時代より相当自由度を拡大。高級車としての「覚悟」でしょう
レクサスSC430 2006年式3,976,350円
 ウエストラインがかなり高い場所にあるデザインですが、決して形式ばったデザインではなく、どこか懐かしい、そして大胆な曲線を採用しています。

記憶していてください。ソアラであったということを。

クーペとして、オープンカーとして、自然なデザイン。

 このクルマは、レクサスラインナップにおける、「お目付け役」ではないかと思っています。なぜなら、その出自が「あのソアラ」だからです。
 長いこと、トヨタの乗用車は、オーナーカーとしてはクラウンがフラッグシップとして君臨。「いつかはクラウン」というコピーも手伝い、クラウンは長い間トヨタの、そして日本における、実質的な「いいクルマ」の代名詞でありました。
 しかし、次第に日本が豊かになってくると、輸入車が次第に身近になってきました。すると、日本のクルマは遅い。安易な発展主義ではなく、日本人の健全な上昇志向は、「アウトバーンでも200キロで普通に走れるクルマ」が不文の目標になっていきました。
 ソアラは初めてアウトバーンで200キロのスピードが出せる日本車でした。
 価格は2ドアながらクラウンのロイヤルサルーンGよりもはるかに高価。その代わり、その時点でのトヨタが盛り込めるすべての技術を盛り込まれる大役も、代々のソアラの役目でした。3代目モデルからは「レクサス SC」の名で、遂に世界へと羽ばたくのです。
 やがてセルシオの誕生で「技術の玉手箱」の役目は終わりますが、「高級車には技術以上のものを盛り込んで」と開発されたのがこのSC430のタイプの4代目ソアラです。海外ではもちろん当初から「レクサス SC」名でしたが、このソアラ、全車オープントップとし、比較的珍しかった格納型ハードトップや、旅はパンクに負けてはならないとランフラットタイヤも採用されました。
 ですから、日本でレクサスを展開するに際し、このクルマだけが従来モデルの継続販売でしたが、実はこのクルマを本来の形で販売するために、レクサスブランドを展開したといっても過言ではないのです。

今は昔

局面を魅せるデザインは明るいボディーカラーこそがふさわしい。

 このクルマにこそふさわしいのではないでしょうか。「今は昔」トヨタ製のV8はより大きなものに進化しています。パワーやエミッションでも優位性はあるのかもしれません。このクルマには日本では最後のセルシオになる、先代の30系セルシオに搭載されていた4300ccのエンジンがそのまま搭載されています。
 静かで、燃費も良く、耐久性にも優れたこのエンジン。今でも断然現役です。
 今となっては、むしろこのクルマにだけ採用されている専用のパワーユニットとなりました。余分な脚光を浴びなくなったという意味では「宴の後」というかんもあるでしょう。
 いずれにしてもどこかすがすがしく、そして雄々しいような、優雅な貴婦人のような印象。レクサスSC430は歌舞伎役者の女形に似ているかもしれません。
 上品で大胆でちょっと妖しい。こんなクルマなかなかありません。
 目に留まるクルマ。足を止める姿。日本車だってやるじゃないか!

車でなくクルマに乗りたいあなたへ。

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達人プロフィール: CORISM編集部
職業:自動車情報サイト「CORISM」編集部
今ネットで最も注目される(自称)新進気鋭の自動車メディアサイト『CORISM』編集部。07年より日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員にも任命されるなど、着々とメディアとしてのパワーを拡大しつつあるのは確かだ。