【フォルクスワーゲン ゴルフ6 対 アルファロメオ ミト 徹底評価】ザ・対決 比較試乗

ROUND2：達人によるコダワリ評価

松下 宏 小さくて軽く、誰でも買える価格帯、そして燃費がよいということを信念としてクルマを評論。大本命といわれている車種さえ外してでも自らの信念を貫き通す熱いハートをもつ。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員としても、その信念は変わらない。 片岡 英明 学校の先生から自動車雑誌編集者経て、モータージャーナリストになったという異色の経歴を持つ。元教師ということもあり、分かりやすい評論に定評がある。さらに、クルマの細部まで見逃さない観察力はハンパではなく、徹底的に調べ上げてしまうほど。最新のクルマから、ヒストリックカーまで幅広い知識をもつ。 国沢 光宏 歯に衣を着せぬ原稿で、なにかと話題の自動車評論家。歯切れの良い文章も分かりやすく、多くのファンをもつ。カートップやベストカーなど多数の自動車雑誌に寄稿するだけでなく、WRCなどのTV解説まで幅広い活動を行なっている。

エンジン Engine フォルクスワーゲン ゴルフ6 アルファロメオ ミト 松下 宏 ゴルフ6などに搭載されるTSIエンジンは今どきのエンジンとして文句なしの性能。ターボによって大排気量エンジン並みのトルクを発生すると同時に燃費にも優れるからだ。 良く回るのはアルファのエンジンらしいが、低速ギアではすぐに吹け切ってしまい、扱いやすさはとくに良いとはいえない。ゴルフ6用とは特性が大きく異なるエンジンだ。 片岡 英明 ターボのみの搭載となるコンフォートラインでも十分な動力性能といっていい。ツインチャージャーのハイラインともなると、さらに刺激的で鋭い瞬発力を見せてくれる。 アルファロメオには珍しく、ターボながら低回転域から豊かなトルクを発生する。ダイナミックモードを選ぶと鋭いレスポンスと湧き出てくるようなトルク感を満喫できる。 国沢光宏 すでに高い評価を得ている1.4リッターのTSIエンジンは、2.4リッター級エンジンと同等のパワーを出す。国産車から乗り替えると、振動の少なさに驚くだろう。 こちらも1.4リッターながら、ターボ過給で2リッター級エンジンと同等のパワー。エンジンに代表される官能的な評価では質実剛健なゴルフ6を凌ぐ。燃費はゴルフ6に届かず。

ミッション Transmission フォルクスワーゲン ゴルフ6 アルファロメオ ミト 松下 宏 7速のDSGは従来のモデルにあった低速時のギクシャク感が解消されて変速フィールがグンと良くなった。シフトの素早さや燃費の良さは相変わらずで、好感がもてる。 6速MTだけの設定というのは、日本での使い勝手を考えるとどうか。アルファのセレスピードもミトにはマッチするとは思えないが、MTだけの設定では台数は望めないだろう。 片岡 英明 7速のDSGはDレンジのままでも変速レスポンスがとても鋭く、意のままの加速をアシストしてくれる。さらにハイラインに付くパドルシフトは使い勝手がいい。 6速MTは操作フィールがよく、小気味よい変速ができる。ターボのトルクバンドを維持しやすいギア比の設定である。クラッチペダルの踏力も適度で、疲れない。 国沢光宏 これまた高い評価を得ているツインクラッチのDSGを採用。変速ショックは一段と滑らかになり、それでいてスポーティ感もまったく損なわれていない。理想のミッションです。 アルファロメオ(フィアットを含む)は質の良いATをもっていない。ただ妙なATよりもこの6速MTのほうがずっと楽しいと思う。シフト操作時のタッチも素晴らしい。

足回り Suspension フォルクスワーゲン ゴルフ6 アルファロメオ ミト 松下 宏 乗り心地と安定性のバランスの良さはいかにもドイツ車らしい印象。グレードによってタイヤサイズとブランドが異なるが、16インチのエコタイヤより17インチのほうが好感がもてる。 足まわりではないが、エンジンとともにステアリングの重さが可変式になっていて、ダイナミックを選ぶとシャープなフィールになる。硬めの乗り心地は、アルファらしいものだ。 片岡　英明 全体的にガッシリとした剛性感があり、ステアリングを通して路面情報も的確に伝わってくる。スタビリティ能力も群を抜いて高くて、運転時の安心感は絶大である。 これは理屈ぬきに楽しい。コーナーでは気持ちよくノーズが狙った方向を向き、意のままに走ることができる。スイッチひとつで、3つの走り味を試せるのもいいところだ。 国沢光宏 ドイツ車といえば硬めの乗り心地をイメージするかもしれないが、新型ゴルフ6のサスペンションは驚くほど滑らかに動く。気持ち良い足まわりのお手本みたいなものだ。 普通に走っている限り、純粋に楽しい。絶賛する同業者も多いようだ。ただし、限界特性は私の好みじゃありません。テールの流れを自由にコントロールできる味付けがいい。

デザイン Design フォルクスワーゲン ゴルフ6 アルファロメオ ミト 松下宏 ワッペングリルは廃止したものの、ひと目でゴルフ6と分かる明快なデザインを採用。機能を表現したシンプルで、クリーンなデザインは普通に良くできたものといえる。 3ドアハッチバックの外観デザインはいかにも印象的で、バンパーに食い込む盾型のラジエターグリルなど、アルファらしさがいっぱいに表現されている。好きな人には絶好だ。 片岡英明 ゴルフ6らしいオーソドックスな手堅いデザインではあるが、5代目より洗練度は高まっている。インテリアを含めて、まとまりのいいデザインだが、やはり面白みは薄い。 コンパクトで3ドアモデルだけの設定となっているが、ひと目でアルファロメオ一族とわかる明快なデザインである。ネオクラシック路線で、インテリアの色づかいも上手だ。 国沢光宏 ゴルフ5のスキンチェンジ(要は基本骨格は変わっていない)ということもあって、少しばかり新鮮味が薄い。そいつを除けば常識的だし、トラッドでいいと思います。 まったく受け付けないデザインであります。「熊猫」という中国車によく似ている。こらもうアルファロメオの狙いなんだと思う。スタイルを見ただけで購入意欲がまったく湧かず。

プレミアム度 Premium フォルクスワーゲン ゴルフ6 アルファロメオ ミト 松下 宏 ゴルフ6の基本は実用車にあるが、モデルチェンジを重ねるごとに徐々にプレミアム性を高めてきた。インテリアの質感の高さや静粛性の高さなどがプレミアム性を表現する。 アルファロメオブランド自体がフィアットに対してプレミアムイメージをもつものの、全体的なプレミアム性の高さはさほどではない。ゴルフ6との比較でも上位にあるとはいえない。 片岡　英明 言ってしまえば、Cセグメントのファミリーカーではあるが、ボディパネルの精度の高さ、インテリアの質感ともにクラスレベルを超えている。シートの造りもいい。 サイズは小さいが、アルファロメオならではのカリスマ性がある。デザインにも走りにもスペックや数字では表せない、オーラや洒落っ気をそこかしこから漂わせている。 国沢　光宏 やはりゴルフ6のネームバリューは強い。ただし、最近はトヨタ プリウスに肉薄されてしまっている感じ。存在感が弱くなりつつある。もはや高級車というイメージは薄い。 さすがのアルファロメオも、ミトのサイズになってくると、少しばかりショッパくなってきます。小さく見えるというデザインテーマもプレミアム度の足を引っ張っている。

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