日産 フェアレディZ エクステリア

ブランド価値を高めるための品質改善への取り組みを徹底

 日産に限らず自動車メーカー各社は、不具合やクレーム、リコールなどを低減する品質への取り組みを熱心に続けている。日本の自動車が世界中で良く売れているのは、品質が高くて故障の少ないクルマが安いことが大きな理由だから、品質への取り組みは手を抜くことができないテーマだ。
 でも、クルマが進化し、複雑化していくに連れて、新しい不具合が発生する可能性が発生することが考えられるから、品質向上や不具合の解消への取り組みは自動車メーカーにとっての永遠のテーマでもある。
そんな中で、日産のフィールド・クォリティセンター(FQC)を取材する機会があったので、その一端をレポートしたい。リコールも絡むテーマということもあって、写真などで紹介できるものがないのが残念だが、興味深い話をいろいろと聞くことができた。
 日産のFQCでは、ユーザーから不具合の指摘があったものについてはすべて対応するという方針で取り組んでいるという。とはいっても、ユーザーの立場からすると、不具合を申し立てても取りあってもらえなかったという声があるのも事実。数年前にR35スカイラインのユーザーがボンネットフードの左右のチリ(隙間)合わせについて申し立てた不具合は、話がこじれてユーザーが自分で立ち上げたホームページ上で日産自動車や販売会社の対応を批判するといった例もあった。
 その例はともかく、最近はメーカーがユーザーからの申し立てへの対応を誤ると、東芝のお客様相談室の無様な対応のように、社会から幅広い批判を受けることにもなりかねない。だからこそ、ユーザーからのクレームについては、どんなことでも対応するというのがFQCの立場だという。
 日産のFQCは厚木のテクニカルセンター内のほか、北米に2個所とヨーロッパの計4個所に置かれていて、世界中から集められた不具合事例の解析と改善を行っている。その中には実にさまざまな事例があるが、品質を高めることが日産ブランドを高めることにつながるとか、品質改善には王道も終わりもないという信念に基づいた対応が行われている。

徹底的な検証と解析によってさまざまな不具合に対応する

不具合の事例をいくつか紹介しよう。
●バンパーのひび割れ?
 どんなクレームにも対応するという姿勢を象徴する事例がバンパーに生じた微細な塗装のクラック(ひび割れ)にあった。関係者から『これがそのバンパーです』と言われて目を近づけてみたが、何が不具合なのか全く分からない。角度を変えて光の当たり方が変わったときに、本当に目に見えないような細かなひび割れが入っていたのが分かるといった本当に些細なものだった。
 でも、クルマを買ったユーザーは自分でていねいにワックスがけをするなどして手入れをしながら、いろいろな角度からクルマを見たとき、このひび割れを発見したと思われる。ぱっと見て分からない程度のひび割れなのだから、まあいいじゃないと言いたくなるくらいの不具合だが、それでも対応するのが日産の姿勢だという。
 この不具合は、バンパーを車体に取り付けるとき、ネジを強く締めすぎると特定の部分に力がかかり、細かなひび割れにつながることが分かった。結果としてバンパーの取り付けネジの位置を変更するなどして不具合が発生しないような改善が行われた。

●エアクリーナーが燃える?
 アメリカで走行中のアルティマで火災が発生し、中には全焼したような例もあったのは、エアクリーナーの素材に問題があることが分かったそうだ。エアクリーナーの設計変更が行われたとき、素材が難燃性の低いものに変わっていた。これが火災につながったことが、エアクリーナーの中にあったタバコの吸殻から分かった。
 最近アメリカでは禁煙が進み、建物内ではほとんどタバコが吸えなくなった。喫煙者は自分のクルマの中でしかタバコを吸えなくなったが、最近のクルマには灰皿を備えていないのが普通になっている。このため吸ったタバコの吸殻を道路に捨てるドライバーがいて、それが後続車のエアクリーナーの中に吸い込まれ、クリーナーから車両火災につながったことが判明したという。

●音が出たり出なかったり
 カーオーディオから音が出なくなったという不具合に対しては、オーディオメーカーに部品を戻してチェックしてもらったが、普通に音が出て不具合が再現しないとして日産に戻されてきた。日産としては、販売会社で音が出ないことを確認している件なのでオーディオの基盤の検証を重ねたところ、単体では音が出るものの、クルマのダッシュボードに取り付けた状態で試すと音が出なくなることが分かった。
 そこでオーディオの基盤を徹底的に検証すると、取り付けのためにネジを締める力が加わると、基盤の一部がゆがみ、ハンダ付けの部分が接触不良になることが分かった。単体でのチェックでは、接触不良の部分が接触した状態になっているため、不具合が出ないのだが、取り付け状態では不具合になるという事例だった。

 このように、簡単には分かりにくいような不具合も、FQCでのさまざまな角度からの解析によって分かる例がたくさんあるという。FQCには4輪シャシーダイナモから、さまざまな道路での走行状態を再現できる加振機まで設置されていて、いろいろな形で検証を行っている。
 異音の発生などは、今はコンピューターによる解析でモニター画面に表示できるようになっていて、道路状況や速度などによって変わる音の発生を可視化している。
 注目されるのは、このFQCが独自の予算を持って収益部門として運営されていることだ。不具合対策などというと、ともすれば後ろ向きの部署と考えられがちだが、日産のFQCは必ずしもそうではない。むしろFQCの調査によって判明した不具合事由を次のクルマの開発に生かすことで、FQCの活動がコスト低減につながっているという。
 日産だけでなくほかの自動車メーカー各社も同様の取り組みをしているが、過去のリコール事例なども含めてかなり具体的に紹介したのは日産が初めてだ。厚木のFQCでは、日産自動車の開発・生産関係者からサプライヤーの関係者が集まる場所に、過去のリコール事例や大まかなコストなども表示されていて、日産グループ全体の力でそれを減らしていこうという姿勢が見て取れた。
 先のバンパーの例のように、品質について厳しく迫るユーザーがいるからこそ、日本車の品質が向上し、世界で通用するようになったというのは良く聞く話だが、日産のFQC関係者からもそうした話が聞かれた。

リコール対応の仕組み作りはあまりにも日本的な印象だが

 最後に、リコールについての対応システムもしっかりした仕組みを作ったという話を紹介しておこう。
 日産では、リコールにするかどうかの判断を、FQCを中心とした技術系の部長級のスタッフだけによる会議で決めるシステムにしたという。経営者による判断でリコールにするかどうかを決めるようにすると、リコールのコストが収益に及ぼす影響にまで頭が行って、結果として判断を鈍らせかねないためだ。こうした仕組みについては国土交通省からも評価されているという。
 話を聞くとこれは確かにもっともな仕組みだと思うが、同時に極めて日本的な仕組みだとも思う。
 日本では企業不祥事があるたびに、ミドルに責任を負わせてトップが責任を取らずに逃げ切るというのが一般的なパターンだった。ところが三菱自動車のリコール問題については、歴代の社長が法廷に引きずり出されて有罪判決が下され、会社から賠償請求されて個人資産まで失うというような展開になった。
 三菱自動車の例はごく例外的な事例だったが、日産のリコール対応の仕組みは、三菱のようにトップが責任を問われることを避けるのも目的のひとつだったようにも思える。その意味で日本的な仕組みだと思うのだし、日本的な仕組みだからこそ国土交通省からも評価されたのだろう。
 まあ、これはこれで運営した上で、将来的にうまくいかない面があったら、そのときにまた仕組みを考えたら良いと思うが、欧米だったらこのような仕組みにしたかどうか。
 というのもキリスト教に起源を持つフランス語に『ノブレス・オブリージュ』という言葉がある。高貴な地位にある者にはそれにふわさしい責任があるといった意味の言葉だ。その趣旨に即して考えたら、リコールのような重要な問題は企業経営に責任を持つ者が判断するほうが適しているともいえるのではないか。ルノー系の日産がこの言葉を知らないとは思えないが、日産はあくまでも日本の自動車会社ということなのだろう。

達人プロフィール: 松下 宏
職業:自動車評論家
中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員としても、その信念は変わらない。そのため、大本命といわれている車種さえ外して...

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