ザ・対決 スズキ ワゴンR スティングレー VS ダイハツ ムーヴ カスタム
軽自動車編
スズキ ワゴンR vs ダイハツ ムーヴ

 因縁の対決というのは数々あるけれど、代々にわたって勝負し続けているのが、スズキ ワゴンRとダイハツ ムーヴ。広いパッケージングを武器にして、ミニバンのように使えるだけに、各社とも力を入れているジャンル。そのなかでも元祖ワゴンRと後追いながらしっかりとした違いを見せつけるムーヴが高い支持を得ている。ただ人気が高いと言ってもそこにあぐらをかいていられるわけもなく、条件は限られているだけに、お互いに切磋琢磨。その結果、走りも含めてかなりの充実を見せる。ここのところの不況で、目の肥えたユーザーもダウンサイジングで軽自動車に流れてきている。ちょうどモデルチェンジの時期がまったく違うだけに、モデル的にはムーヴが少し古くなってしまうが、それがどう対決結果に影響するのか、興味があるところ。

PHOTO/森山良雄 構成・文/近藤暁史
モデル/

ROUND1:ファーストインプレッション

スズキ ワゴンR スティングレー
スズキ ワゴンR リヤ
サスペンションの見直しで
さらにロングホイールベース化

 軽ナンバー1を掲げて、軽自動車作りではトップを走ってきたスズキ。ダイハツの猛攻を受けつつも、満を持してリリースしてきたのが、5年ぶりにフルモデルチェンジした4代目ワゴンRだ。スタイル的には3代目からのキープコンセプト感は強いが、ひと目でワゴンRとわかるスタイルを実現している。インテリアは面をより強調して質感をアピールしつつ、しっかりと作り込むことで、軽自動車とは思えない出来のよさを見せつける。もちろん、開放感も上々だ。気になるパッケージングは、まずホイールベースを40mm広げて走行安定性をアップ。それに合わせて、室内長を105mmも拡大することに成功している。その結果、前後乗員間隔を140mmも拡大することで、よりゆったりと座ることができるようになった。エンジンはもちろんNAとターボの2本立て。NAは低速トルクをアップさせて扱いやすさを増しているだけでなく、CVTと組み合わせることで23.0km/Lという低燃費を実現している。一方のターボは新開発で、高過給圧化で64馬力の高出力を実現した。こちらもCVTとの組み合わせだ。また今回からスティングレーがエアログレードとして、カスタムに代って登場。押し出しの強いフロントマスクやブラックで統一された内装など、じつに精悍なスタイルで、ひと味違ったワゴンRの魅力をアピールする。CVTにはハドルシフトが付くのもスティングレーならでは。


[エコ&燃費]
 NAの23.0km/Lという数値はもちろん立派な数値だが、ターボでも21.5km/Lを記録しているのはさすがだ。新開発ということもあるが、CVTの制御も大きく関係しており、違和感がない程度に回転をうまく抑えた結果だ。

[安全性能]
 前席エアバッグをすべてにおいて標準装備化しているのだが、一方でABSは廉価グレードでオプション扱いにしているのは、メーカーの安全意識の低さを強烈に感じさせる。ボディは歩行者傷害軽減対策もされている。

[取材時実測燃費]
12.7km/L

[ワゴンR価格帯]
90.825〜167.16万円

ダイハツ ムーヴ カスタム
ダイハツ ムーヴ リヤ
古くささはまったくなし
ワゴンR永遠のライバル

 言わずもがな、スズキのワゴンRと人気を二分するダイハツのムーヴ。モデルチェンジ時期がまったく違い、2〜3年ごとに交互にくるのもまたその争いに拍車をかけている。今回はワゴンRが新型になったばかりということで、ムーヴのほうが古くはなってしまうのだが、正直なところ、時代遅れ的な印象はまったくない。
「クラスを超えた新次元へ進化」というコンセプトを掲げて登場しただけに、まずシャーシを新開発。タイヤを可能な限り四隅に押しやりつつ、エンジンをできるだけ前方に追いやり、その分をパッケージングに回している。その結果、室内はじつに広大だし、実感として実際に乗り込んだ瞬間にその広さが十分に体感できる。とくに後席足下は大型サルーン並みといっても過言ではない。
 そして走り。エンジンはダイハツ自慢のトパーズNEOエンジンで、新開発ではないものの、可変バルブシステムのDVVTを採用するなど、各部を徹底的にブラッシュアップ。さらにスズキに先んじてCVTを組み合わせることで、燃費や駆動伝達力向上だけでなく、小型化による軽量化といった効果もある。さらに前述のタイヤ配置により、ロングホイールベース化しているのも特徴で、その数値はなんとあのソニカ以上と、操安性や乗り心地の向上に貢献。まさに理詰めでクラスを超えていると言っていい。ラインナップ的には、以前より人気のカスタムも標準グレードとともに用意されており、ターボの設定や丸目を強調したフロントマスクなど、より一層の差別化が図られている。

[エコ&燃費]
 ダイハツが満を持して開発・採用したのが世界初となる、自己再生機能をもつインテリジェント触媒。燃費はNAで23.5km/L、ターボで21.5km/Lと現在でも立派な数値といっていい。また実用燃費のよさにも注目だ。

[安全性能]
 ムーヴも一部ABSがオプション装備という安全意識が低いグレードが存在する。ABSのような基本的な安全装備は全車標準にするべきだ。だが一部のグレードでは軽初の7サイドエアバッグ、プリクラッシュセーフティシステムや車線逸脱警報機能など、高級車にしかないような装備を選ぶこともできる。


[取材時実測燃費]
16.6km/L

[ムーヴ価格帯]
101.85〜167.475万円

スズキ ワゴンR スティングレー TS(FF)
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
3395×1475×1675mm
車両重量
880kg
エンジンタイプ
直列3気筒DOHCターボ
総排気量
658cc
最高出力
64ps(47kw)/6000rpm
最大トルク
9.7kg-m(95N・m)/3000rpm
ミッション
CVT
10・15モード燃費
21.5km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/ アイソレーテッド・トレーリング・リンク
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ドラム
税込価格
155.4万円
ダイハツ ムーヴ カスタムRS(FF)
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
3395×1475×1615mm
車両重量
880kg
エンジンタイプ
直列3気筒DOHCターボ
総排気量
658cc
最高出力
64ps(47kw)/6000rpm
最大トルク
10.5kg-m(103N・m)/3000rpm
ミッション
CVT
10・15モード燃費
21.5km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ドラム
税込価格
155.4万円
スズキ ワゴンR ターボエンジン

トルクの数値的にはムーヴに劣るものの、実用域のトルクは十分で扱いやすい特性。ただ、実燃費はもう少し改善の余地があるといえそうだ。

スズキ ワゴンR 15インチホイール

ワゴンR スティングレーの最上級モデルであるTSは、15インチのアルミホイールが標準装備となる。デザインもスポーティで好印象。

ダイハツ ムーヴ ターボエンジン

低速域から太いトルクを生み出すエンジンは非常に扱いやすい。燃費がいいのも見逃せないポイントで、ターボエンジンとは思えないほど。

ダイハツ ムーヴ 16インチホイール

カスタムRSは、なんと16インチの大径タイヤ&ホイールを装着する。乗り心地も快適で、スポーティな走りを楽しむことができる。

スズキ ワゴンR インパネ

モデルチェンジで大幅に質感の増したワゴンRのインテリア。小物の収納スペースも豊富で、実用性の高さは文句のつけようがない。

スズキ ワゴンR シフトレバー

新型ではCVTメインのラインナップに変更された。スティングレーTSはパドルシフトも備え、スポーティな走りを味わうことができる。

ダイハツ ムーヴ インパネ

斬新なイメージのインテリアは、広々感も十分。最近のダイハツ車は質感の高さも驚くほどで、1クラス上のコンパクトカーも凌ぐほどだ。

ダイハツ ムーヴ シフトレバー

ワゴンRと同様、インパネシフトを採用する。CVTは滑らかでレスポンスの鋭い走りを実現している。実用燃費も文句なしのハイレベルだ。

スズキ ワゴンR フロントシート

小物の収納スペースは充実しているので、実用性はとても高い。サイドのサポートも十分で、スポーティな走りを楽しむことができる。

スズキ ワゴンR リヤシート

パッケージングを一新し、先代モデルと比べて大幅に居住スペースは拡大された。だが、それでもムーヴを凌ぐほどではないのは残念だ。

ダイハツ ムーヴ フロントシート

シートはサイズも大きめなので、ゆったりとくつろぐことができる。クッションの厚みも十分で、快適なだけでなくしっかり体を支えてくれる。

ダイハツ ムーヴ リヤシート

ムーヴの後席の広さは驚くほど。1クラス上のコンパクトカーも凌ぐほどで、大柄な男性でも余裕で足が組めるスペースが確保されている。

スズキ ワゴンR クーペ メーター

大きなスピードメーターを中央に配したメーターは非常に見やすい。ブルーの照明も印象的で、インフォメーションディスプレイも備えている。

スズキ ワゴンR ラゲッジ

ラゲッジスペースは十分な広さが確保されている。開口部も大きくとられているので、大きな荷物の積み込みも容易に行なうことができる。

ダイハツ ムーヴ メーター

オレンジの文字盤がスポーティな印象を与えてくれる。インフォメーションディスプレイの表示は非常に大きく、各種の情報が確認しやすい。

ダイハツ ムーヴ ラゲッジ

ラゲッジスペースはワゴンRと同等で、実用性の高さは同レベル。ムーヴはリヤゲートが横開きなのが特徴で、力の少ない人でも扱いやすい。

スズキ ワゴンR ラゲッジ

リヤシートは左右分割で倒すことができる。長尺物の積み込みも可能で、使いやすい。

スズキ ワゴンR ラゲッジ

リヤシートをすべて収納すれば、非常に広いスペースが現われるので大きな荷物も余裕で積める。

ダイハツ ムーヴ ラゲッジ

リヤシートの収納は非常に簡単だ。またフロアもフラットになるので大きなものも楽に積める。

ダイハツ ムーヴ ラゲッジ

最大時のラゲッジスペースは、ワゴンRにも負けず劣らず大きな容量を確保している。

スズキ ワゴンR vs ダイハツ ムーヴ

ワゴンRはエンジンスペックの数値こそムーヴにわずかに劣るが、実用上大きな差は感じられない。乗り心地も非常に良く、快適なドライブが楽しめるが、実用燃費はもう少し伸びて欲しいところ。ムーヴは効率のいいエンジンとCVTのマッチングもよく滑らかな走りが味わえる。燃費の良さも驚くほどで、財布と地球に優しいのは魅力だ。