トヨタは2008年10月15日、全く新しいジャンルの超小型車「iQ(アイ・キュー)」を発表した。わずか3.0m弱の全長で4人の定員を持つ超高効率パッケージングが何よりの特長だ。4人乗りの一般的な軽自動車が全長約3.4mなのに比べると、iQは驚異的な短さである。フロントに搭載されるエンジンは、現時点では燃費に優れた直列3気筒 1.0リッター1機種のみ。
- この記事の目次 CONTENTS
- 新たな市場を創造する意欲作
- 滑らかで高級感もあるエクステリア
- 十分な空間が確保できるインテリア
- 異例づくしのパッケージングと安全性能
- さらなる超高効率パッケージングを実現
- 装備面はシンプルに必要な装備だけセレクト
- iQの価格
- ボディカラーはiQらしいシックな色合いを中心
- 強敵は「軽自動車」
新たな市場を創造する意欲作
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横滑りを防止させるS-VSCや、世界初のリアウィンドウカーテンシールドエアバッグを始めとする9エアバッグを贅沢に標準装備するなど、小ささへの不安を払拭させる安全性能の向上にも力を入れている。気になる価格だが、140.0万円から160.0万円(共に消費税込み)までと、コンパクトカーとしては「ちょっとプレミアム」なのも異例だ。
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あらゆる面で他に類を見ない新種のプレミアム・コンパクト「トヨタ iQ」は、この小ささこそイマドキのカッコよさなのだと強く主張している。ちなみに「iQ」の名前は、個性(individuality)・革新(innovation)・知性(intelligence)をあらわす「i」と、品質(quality)・立体(cubic〜スペルは違うが言葉の響きから想起〜)・新しい価値観やライフスタイルへのきっかけ(cue)を表す「Q」から構成される、とトヨタでは説明する。そのものズバリな「知能指数(IQ)の高さ」も想起させるiQ。新たな価値観を主張し、新たな市場を創造する、実に意欲的なモデルの誕生だ。なお発売は2008年11月20日からとなる。
滑らかで高級感もあるエクステリア
全長約3mの超小型車「iQ」。その小さな外観を見てまず思い起こされるのは、2シーターのシティコミューター「スマート フォーツー」だろう。
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ドイツ・メルセデスベンツがエンジニアリングを担当した超小型車スマートは、コンパクトながらメルセデスの一員らしく安全性も抜群。小排気量のエンジンをリアに搭載する独創的なパッケージングで、さらにオシャレな内外装でまとめられている点もポイントが高い。狭い街中での路上駐車が当たり前の欧州でその小ささやプレミアム度が注目され、デビュー10年ですっかり独自のポジションを確立している。今回デビューしたトヨタ iQの企画が、間違いなくこの「スマート」に触発されたことは否定しようがないだろう。しかしトヨタは、また違ったアプローチでこのプレミアム・コンパクトカー「iQ」を実現させている。それが、「小さいけれど4人乗り」という価値観だ。
サイドから見ると・・・
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iQをサイドから見ると、全長の短さ以外にも他のクルマと大きく違う点があることに気がつく。それは、車体の先端および後端と各タイヤとの間隔(専門用語では「オーバーハング」という)が、驚くほど短いということ。前後のタイヤが、車体の四隅ギリギリまで追いやられているのだ。これはつまり、短い全長のほとんどを客室キャビンにして、どうにかこうにか4人を乗せるっ!という設計思想の現れである。もちろん、年々厳しさを増している衝突安全性能や、肝心なエンジン・駆動系などのメカニズム配置など、自動車として必要な要件なども同時に満たさなければならないのは言うまでもない。ホイールベースは2000mm。2人乗りのスマートが1865mm(ちなみに全長も2720mmと、実はiQに比べ随分と短い)なのに対し、長く寸法が取られていることが判るだろう。
前から見ると・・・
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今度はiQを前から見てみる。そうすると、全長とは違って随分とワイドなことに気付くだろう。実はiQ、1680mmという車幅を持っているのだ。これは、日本の軽自動車(車幅:1480mm以下)や、あるいはスマート(同1560mm)などに比べると随分と幅広で、小型車ヴィッツ(1695mm)並みの幅なのである。
タイヤはボディサイズに対して存在感が大きい
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そして、エクステリアデザイン全体を眺めてみる。車体の四隅でグッっと踏ん張ってるタイヤは15インチで、ボディサイズに対して存在感が大きい。魚の目玉のように左右へ押し出されたヘッドライトと、V字型に飛び出しているボンネットフードが「エンジンはココで飛び出さんばかりにぎっしりと詰まってますよ」とばかり、iQの高効率パッケージングを静かに主張している。
「2008-2009グッドデザイン賞」のベスト15を受賞
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ボディ自体は所々にエッジが効いていて、ちょっといかり肩。しかし面質自体は滑らかで高級感もある。そのデザイン文法はまるで、レクサス車をほうふつとさせるほどだ。ポップでキュートなスマートとあえて差別化したかのようにiQは「モード系」なのだ、といったらホメ過ぎか。小さいクルマはどこかかわいらしさがなくてはならないという不文律があるとしても、そんな価値観は全く無視しているのは確か。でもそんなツッパッた感じが、このクルマの場合またちょっとかわいらしかったりもするのだから、やっぱりデザインというのは面白い。ちなみにiQ、デビューを前にして早くも「2008-2009グッドデザイン賞」のベスト15を受賞している。
十分な空間が確保できるインテリア
さて、実際のところiQで最も気になる点はインテリアだろう。「全長3m以下の大きさで定員4人乗りって、ホント!?」と誰もがそう思っているはずだ。
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もちろんそれにはカラクリがある。4人乗りと言っても大人3人+子供1名、という構成でまとめられているのだ。ステアリングのない助手席を思い切って前に出し、その分で後席1名分のスペースを確保しているというワケ。なーんだと言うなかれ。それだってミリ単位、どころかミクロン単位での攻防が行われている。クルマのインパネ内というのも、実は見えない部分にもいろんなものが詰まっているものだ。
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例えばエアコンユニット。各部の大幅な小型化を図った上に、通常は助手席前に置かれるブロアモーターをエアコン機本体に組み込むことで、インパネ中央部内にコンパクトにまとめられている。
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助手席は290mmものスライド量を確保し、乗車人数に合わせたアレンジが可能。
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助手席前のスペースを大きくえぐることで、乗員の足元空間を確保している。
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これが後席の足元スペース。見ての通り十分な空間が確保されている。
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前席からの操作も可能な後席チップアップ機能。シート下にはアンダートレイを用意し収納もある。
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いっぽうで5:5分割可倒も可能。定員2名時には最大232リッターの荷室容量を確保する。
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リアシート後ろのわずかなスペースは4名乗車時32リッターの容量。傘やアタッシュケースくらいは入る!?
異例づくしのパッケージングと安全性能
とにかく、異例づくしなパッケージングを持つiQ。したがってほとんどのパーツが専用部品で構成されている。その意味でも、iQは非常に贅沢な造りだ。多くの車種間で車台プラットフォームを共通化しコストダウンを図るのがイマドキのクルマ造りの鉄則と言われる中で、独自プラットフォームを持つiQがプレミアムなプライスとなるのも理解出来る話ではある。
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とはいえコスト管理の厳しいトヨタのこと、おそらくはこのパッケージングを利用した新しい「革新的な」小型車を造る計画があるの「かも」しれない。もちろんトヨタでは公式にそんな発表はしていないのだが、今後の展開もちょっと気になるところだ。
さらなる超高効率パッケージングを実現
新型「iQ」に搭載されるのは、新開発の直列3気筒1.0リッター「1KR-FE」型エンジン。最高出力68ps(50kW)/6000rpm、最大トルク9.2kg-m(N・m)を発揮する。組み合わされるのはSuper CVT-i(自動無段変速機)。搭載するにあたり小型化・軽量化を図るとともに、従来のトランスミッションとは逆に出力軸を車両前方に置くことで、さらなる超高効率パッケージングを実現させた。もちろんレギュラーガソリン仕様。
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リアシート下ではなく、薄型化され床下に搭載されるタンク容量は32リッターだ。ちょっと小さいようにも思えるが、JC08モード燃費21.0km/L(10.15モード燃費は23.0km/L)から単純計算すると670km以上走ることになるから、実際の燃費が数割ダウンするとしても実用上全く問題ないことがわかる。
装備面はシンプルに必要な装備だけセレクト
プレミアムな「iQ」だからといって、装備面では比較的シンプル。昔前の高級車のようにこれでもかと多彩な豪華装備をウリにするワケではなく、必要な装備だけをセレクトしている印象だ。カーナビも全車でオプションとなっている。しかし安全装備の面では抜かりはない。
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膝部を持ち上げることで助手席乗員の前方移動を防ぐSRSシートクッションエアバッグ。
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後方からの衝突安全性に寄与する世界初のSRSリアウィンドウカーテンシールドエアバッグを始めとして、助手席のシートクッションエアバッグ、運転席のニーエアバッグなど、全部で9つのエアバッグを全車で標準装備している。
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燃費やエコ走行を表示させるマルチインフォメーションディスプレイを備えたメーター。
iQの価格
価格は、ベーシックな「100X」が140.0万円、スマートキーやオートエアコンが装備された「100G」が150.0万円、これにレザー&ファブリックシートを装備した「100G レザーパッケージ」で160.0万円(共に消費税込み)。
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「100G」グレード以上にはオートエアコンが標準装備される。
ボディカラーはiQらしいシックな色合いを中心
ボディカラーは新色「ジェイドグリーンメタリック」など、プレミアムなiQらしいシックな色合いを中心に全部で9色が設定される。販売はトヨタ ネッツ店の専売。月間販売目標台数は2500台としている。
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ボディカラー:ジェイドグリーンメタリック(新色)
強敵は「軽自動車」
日本では、「軽自動車」という独自の超小型車が存在する。これはiQにとって大きな強敵のようにも思える。確かに軽自動車は100万円少々で、小さいながら大人4人がしっかり乗れるスペースを確保されていて走りも確か。実用上全く問題のない乗り物だ。実際、近年ますます市場規模が拡大していて、「クルマは軽で十分」と合理的に考えるユーザーが確実に増えていることがわかる。
しかし黄色いナンバーの合理的な実用車では満足せず、クルマに「+アルファ」の価値観を求める層がいるのも確か。これまで記してきたように、トヨタが主張する独自の世界観がユーザーに広く受け入れられるかどうかが、iQ成功の鍵となる。非常に意欲的な超小型車「iQ」、果たしてこの日本市場ではどのように受け止められるだろうか。実に興味深いところだ。