トヨタ、ホンダが相次いで発表!新世代燃料電池自動車
水素をエネルギー源として空気(酸素)と反応させることで発電する燃料電池自動車は、世界中の自動車メーカーが開発競争に躍起になっている。水素をエネルギーに排出されるのが水だけなので、有害な排出物を一切発生しない究極のエコロジーカーであるからだ。
トヨタやホンダではすでにひと世代前の燃料電池自動車を一部の関係先にリースしてきたが、今年になってさらに新しい世代の燃料電池自動車を相次いで発表している。
先に発表したのはホンダで、FCXクラリティと呼ぶ新型車を発表し、その本気度を内外に示した。何せ、将来を見据えて生産ラインまで用意して専用ボディのクルマに仕上げてきたのだから、気合の入り方が凄い。
トヨタもほぼ同時期にFCHV-advと呼ぶ新しい燃料電池自動車を発表したが、こちらはクルーガーのボディに燃料電池のシステムを搭載したもので、FCXクラリティに比べるとやや見劣りする部分があるのは止むを得ないが、燃料電池そのものの性能ではトヨタも負けていないようだ。燃料電池の開発ではトヨタとホンダが世界でも最先端を走っているのではないかと思われる。
発進加速に力強さを発揮!トヨタの燃料電池システム
FCHV-advを走らせるのは普通のクルマを走らせるのとそう変わらない。リヤのラゲッジスペースの下にニッケル水素電池や水素タンクを搭載しているが、室内スペースには普通のクルーガーと変わらない感じだ。
システムをスタートさせるのも取り敢えずイグニッションキーを回す形。セルモーターを動かすような位置まで回すとシステムがスタートして発進可能であることを示すREADYの文字がインパネ内に表示される。シフトレバーをDレンジに入れれば、普通のクルマと同じように走り出す。
このときの発進加速が相当に力強い。トヨタの燃料電池システムのパワーは130ps程度というから1.8Lエンジン並みの実力だが、トルクは260N・mを発生するというから、2.5L〜3.0級エンジンに匹敵する実力である。このトルクによって加速するので一気に速度に乗っていく。
FCHV-advは電池やシステムの重さによって車両重量は1880kgに達している。そのボディをグイグイと押し出していくように加速していく力強さは相当なもの。これはガソリンエンジン搭載車では味わえない電気自動車系の加速感である。
軽快感に欠けるフィールもあった「クルーガー」な足回り
クルージングに入ると、とても静かな走りになる。高速走行に入ると、風切り音やロードノイズが入ってくるが、エンジン音がないのでガソリン車とは違った静かな室内空間が得られるのだ。
発進加速が極めて力強いものだったのに比べると、80km/h〜100km/hあたりの区間加速はちょっと緩慢な感じもあったが、自然で滑らかな加速フィールは悪いものではない。
足回りは重量増に対応したチューニングが行われているものの、基本的にはクルーガーのもので、SUV系らしいどっしりした感じの乗り味。特に優れた乗り心地ではない。コーナーなどでは重さの関係からか軽快感に欠けるフィールもあった。
燃料電池システムに十分な性能を実感!
今回の試乗では、ドライバーを交替しながら、郊外路、高速道路、市街地など、合計100kmほどにわたってさまざまな走行シーンでの走りを試したが、全般的な印象はとても良く走るクルマであるというものだった。燃料電池というシステムが、クルマを走らせるものとして十分な性能を持つものであることが良く理解できた。
燃料電池車は水を排出するだけに、極低温の地域では水が凍結して燃料電池の性能が発揮できなくなるが、FCHV-advでは水のコントロールによる低温始動性の向上を図り、零下30度でも良好な始動を可能としたという。
燃料電池車が実際に市販されるには、現在はまだ台当たり1億円程度とされるコストを100分の1くらいにまでに下げる必要がある。コストの中で大きなウエイトを占める触媒用の白金の使用量も大きく減らさないとたくさんの燃料電池車を作ることができない。
さらに燃料電池車が現実のものにするには、燃料となる水素の製造・輸送・供給などのインフラが整備される必要もあるが、いずれにしても燃料電池車がそう遠くない時期に現実のものになりそうなことが分かった。5年はともかく10年くらいであれば、生きているうちに燃料電池車のカーライフを楽しむことができるので、大いに期待しておきたい。