ザ・対決 スバル エクシーガ VS マツダ プレマシー
3列シート・ドライバーズミニバン編
スバル エクシーガ vs マツダ プレマシー

 かなり成熟しているといっていい日本のミニバン。細かいジャンル分けがされているのだが、ストレスのない走りが楽しめて、3列シートを装備した、いわゆるドライバーズ系ミニバンと呼ばれるジャンルの人気は高い。トヨタのウィッシュやホンダのストリームだけでなく、走りのDNAを前面に出すマツダもプレマシーをラインナップするなど、各メーカーが力を入れている車種でもある。さらに、そこにスバルからエクシーガが加わった。スバルからの待望のミニバン。お馴染みの水平対向エンジンやシンメトリカルAWDなど、スバルらしい走りを楽しめるだけでなく、パッケージングもかなり煮詰められている。今回は、マツダのプレマシーとスバルのエクシーガを対決させてみることにしよう。エンジンも両車ともに2リッターということで、走りも含めてその評価が気になる。

PHOTO/佐藤靖彦 構成・文/近藤暁史
モデル/

ROUND1:ファーストインプレッション

スバル エクシーガ
スバル エクシーガ リヤ
スバルから待望のミニバン
走りも高いレベルを確保

 幾度となくモーターショーにコンセプトカーを出展していたものの、なかなか市販化に結びつかなかったスバルのミニバン。スバル50周年に合わせてついにその姿を現わした。これまでもドミンゴやオペルからザフィーラのOEM供給を受けて、トラヴィックとして販売したこともあった。また海外仕様でトライベッカという3列シートの大型SUVが存在するが、自社開発&国内向けにミニバンを作るのは初めてとなる。
 車高が高めで、3列シートということでミニバンになるのだが、実際のところはマルチパーパスステーションワゴンといってもいいほどで、しっかりとAピラーが立ったそのスタイルは、他のミニバンとは一線を画す。
 まずスバルといえば走り。エンジンは2リッターで、NAとターボを用意。実用性重視のNAに対して、胸のすくような気持ちのいい走り、つまりスバルらしい走りを強調したのがターボとなる。組み合わされるミッションはNAが4速ATで、ターボは5速ATだ。もちろん足回りは多人数乗車化による荷重の増加に対応すべく、すでに好評価を得ているSIシャーシをさらに煮詰めて採用。ストレスを感じさせないエンジンだけでなく、しっとりした乗り味を楽しむこどができるのは後発としても恥ずかしくないところだろう。
 そして肝心のパッケージングだが、ただワゴンに3列目を追加したのではなく、着座位置にもこだわり、すべての席でゆったりと座ることができる。またシアター状に配置したり、グラスルーフを採用するなど、開放感はかなりのもの。ただし、シートアレンジはシンプルで、派手さはないのは残念なところ。

[エコ&燃費]
 4WDだけでなく、NAにはFFも用意され、軽快な走りと省燃費を両立。不満はまったく出ないだろう。またターボにはSIドライブが装備されているので、燃費走行も可能だが、他車で不満の出ていたレスポンスの悪さはエクシーガでは解消されている。使用燃料もNAはレギュラーなのはうれしい。

[安全性能]
 SIシャーシ自体は高剛性だけでなく、衝突安全性についても高いレベルを誇る。ボディ骨格自体も歩行者保護までも視野に入れてしっかりと作られている。カーテンエアバッグが全グレードで選べたりする一方、アクティブセーフティについては横滑りを防止するVDCはターボのGTにオプション設定されるのみで他のグレードはオプション設定すらないなど、少々お寒い。

[取材時実測燃費]
10.2km/L

[エクシーガ価格帯]
199.5〜278.25万円

マツダ プレマシー
マツダ プレマシー リヤ
コンパクトと使い勝手を両立
マツダゆえに走りにもこだわる

 初代が登場したのは10年ほど前のこと。5ナンバーサイズのコンパクトボディに3列シートを装備したミニバンの先駆けとして君臨してきた。その人気は日本のみならずヨーロッパでも高く、2006年には10万台以上を世界で販売したというから、かなりの実力だ。ちなみに海外ではスライドドアの評価が高い(このクラスには異例の装備)とのことだが、走りに関しても速度レベルの高い欧州などで鍛えられたゆえに、ドライバーズミニバンの名に恥じない走りを披露する。
 まずその走りだが、マイナーチェンジで磨きをかけるなど、熟成がかなり進んでいる。すべてのグレードで直噴エンジンが設定され、直噴でないユニットも、2リッターは可変バルブタイミングのS-VTや電子制御スロットルを装備するなど、こだわりのユニットに仕上がっている。
 ミッションはというと、マツダといえば今や5速ATというのがお馴染みだが、プレマシーもFF車はすべて5速ATとなっている。
 パッケージングに関しては、正直そこそこといったところ。多彩さを誇るKARAKURIシートが採用されているものの、細かい動きが中心で使い勝手を向上させるには至っていない。3列目は非常用と考え、ふだんはラゲッジ扱いで乗るのが正解だろう。そうすれば逆に大人4人で荷物をたっぷり積んで移動するのも可能だ。足回りも走りを重視して硬めで、ゆったりというよりはシャープさが際だった味付けがされている。この点は好みが分れるかもしれない。

[エコ&燃費]
 可変バルブタイミングや電子スロットルの採用。エンジンの直噴化、5速ATなど、さまざまな部分が省燃費に貢献している。また排ガスについてもリニアO2センサーなどの採用で、すべてのグレードにおいて75%低減のSU-LEVに適合しているのは立派。

[安全性能]
 マツダ自慢の高剛性ボディ、MAGMAをベースに各部の衝撃吸収力を高めている。装備的には、カーテンエアバッグをほとんどのグレードでオプションながら設定。また横滑り防止のDSCの設定は一部の上級グレードのみにオプション設定が可能。ただし2列目の真ん中のシートがあまりに簡易的で、ヘッドレストと3点式シートベルトもないのは残念。

[取材時実測燃費]
9.6km/L

[プレマシー価格帯]
176.8〜235.5万円

スバル エクシーガ 2.0i-S(FF)
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4740×1775×1660mm
車両重量
1490kg
エンジンタイプ
水平対向4気筒DOHC
総排気量
1994cc
最高出力
148ps(109kw)/6000rpm
最大トルク
19.5kg-m(191N・m)/3200rpm
ミッション
4速AT
10・15モード燃費
14.0km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
233.1万円
マツダ プレマシー 20Z
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4565×1745×1615mm
車両重量
1490kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHC
総排気量
1998cc
最高出力
151ps(111kw)/6200rpm
最大トルク
19.7kg-m(193N・m)/4000rpm
ミッション
5速AT
10・15モード燃費
15.0km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/マルチリンク
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
219.5万円
スバル エクシーガ 2リッターエンジン

エンジンはスバルお得意の水平対向4気筒のNA(写真)とターボをラインナップ。どちらもミニバン用に中低速域を重視したセッティングだ。

スバル エクシーガ 17インチホイール

スポーティな外観の2.0i-Sはターボの2.0GTと同様に17インチのタイヤ&ホイールを装着する。FFモデルは軽快なハンドリングを楽しめる。

マツダ プレマシー 2リッターエンジン

プレマシーは2リッターの直噴と通常燃焼タイプ(写真)の2種類に加え、2.3リッターエンジンも用意。直噴はレスポンスがいいのが特徴だ。

マツダ プレマシー 17インチホイール

20Zと23S(写真)は17インチ、その他のグレードは15インチのタイヤ&ホイールを履く。17インチ仕様はスポーティな乗り味が印象的だ。

スバル エクシーガ インパネ

最近のスバル車はインテリアの質感も高く、ひとクラス上のクルマに乗っているような印象がある。視界もよく広々とした雰囲気も魅力的。

スバル エクシーガ シフトレバー

ミッションはターボが5速ATで、NA(写真)は4速ATとなる。レガシィなども同様だがNAモデルのミッションは早期に多段化を望みたい。

マツダ プレマシー インパネ

プレマシーのインテリアは、いかにもマツダ車らしいスポーティな雰囲気が特徴だ。質感も高く、使い勝手の良さもしっかりと考慮されている。

マツダ プレマシー シフトレバー

エクシーガとは異なり、ミッションは全車5速ATを採用。マニュアルモードを備え、ミニバンらしからぬスポーティな走りを味わうことも可能だ。

スバル エクシーガ フロントシート

ミニバンというよりは乗用車ライクなポジションが印象的。シートの作りもよく、長距離ドライブでも疲れにくくゆったりとドライブを楽しめる。

スバル エクシーガ セカンドシート

セカンドシートは足元や頭上の空間にも余裕がある。中央席のヘッドレストや3点式シートベルトが装着されないのはマイナスポイントだ。

マツダ プレマシー フロントシート

スポーティな形状のシートは、しっかりと体を包み込んでくれる。インパネ中央が張り出しているので、左右のウォークスルーはしづらい。

マツダ プレマシー セカンドシート

中央席はまるで観光バスの補助席のようで、まともに座ることはできない。それ以外の部分はスペース、乗り心地ともに満足できるレベルだ。

スバル エクシーガ サードシート

ワゴン的なルックスから想像する以上にサードシートの居住性はいい。ヒップポイントも後ろに行くにつれ高められているので視界も良好だ。

スバル エクシーガ ラゲッジ

7人フル乗車時でも比較的広いラゲッジスペースを確保している。開口部の高さも低めで、大きく重い荷物の積み込みも苦労せずに行なえる。

マツダ プレマシー サードシート

プレマシーのサードシートの居住性はエクシーガほどではない。全長が短いということもあるが、パッケージングも大いに影響しているようだ。

マツダ プレマシー ラゲッジ

ボディサイズの違いもあり、7人乗車時のラゲッジスペースはこのクラスの平均レベル。それでも実用上、不満に思うケースはあまりないだろう。

スバル エクシーガ ラゲッジ

サードシートを収納すれば、かなり広いスペースが現われる。タイヤハウスの出っ張りも最小限に抑えられているので、使いやすいラゲッジだ。

スバル エクシーガ ラゲッジ

セカンドシートをたためば、写真のように驚くほど広いスペースを確保できる。かなり長いものや大きなものでも余裕で積み込むことができる。

マツダ プレマシー ラゲッジ

サードシートを収納すれば広いスペースが得られる。凹凸も少なく形状もいいので、使い勝手の良さはエクシーガにも引けを取ることはない。

マツダ プレマシー ラゲッジ

セカンドシートとの境目にわずかだが段差ができてしまうのが残念だ。スペース自体は十分なだけに、それが余計に気になってしまう部分だ。

スバル エクシーガ vs マツダ プレマシー

スバル エクシーガは見た目も走りもワゴン的な雰囲気があり、快適性も高く燃費もいい。それでいて7人がきちんと乗れるスペースを確保しているのはさすが。プレマシーはいかにもマツダらしいスポーティなルックスやインテリア、そして走りが最大の特徴だ。カラクリシートなど使い勝手の工夫もあり、ミニバンとしての使いやすさもしっかり備えている。