マツダは7月8日、新型ミニバン「ビアンテ」の発売を開始する。
今回マツダは、ビアンテをミニバンの中でも最も売れているジャンルへ参入させた。名立たる大人気モデルが集結したジャンルの中で、ビアンテはライバル車と、どのような差をつけたのか。
また、マツダらしさを取り入れた走行性能や安全装備、シートアレンジについても詳しく解説している。

この記事の目次 CONTENTS
1.3つの軸で車を評価「ガリバーズEYE」
2.ミニバンの中でも「一番売れている」カテゴリーへ新規参入
3.”Zoom-Zoom”な『心を動かすデザイン』を狙う
4.乗員全員が楽しめるインテリアを目指したマツダ
5.多彩なシートアレンジ可能なビアンテだが・・・
6.2.0リッターに加え2.3リッターモデルもラインナップ
7.ナノイー、アレルバスターでクリーンな室内環境へ
8.マツダ ビアンテのスペック情報

ライター紹介

221616 編集部

世の中の自動車ニュースとは一味違う視点でスローニュースを発信。編集部員はクルマ初心者からクルマをこよなく愛するマニアまで幅広いメンバーで構成。全国のガリバーで売れている中古車や車のスタッフレポートなど、生の情報をお届け中。

1.3つの軸で車を評価「ガリバーズEYE」

ユーザ視点に立ったガリバー独自の「安全基準」「環境・燃費基準」「経済性」という新たな評価軸を用いて、クルマを評価いたします。

2.ミニバンの中でも「一番売れている」カテゴリーへ新規参入

マツダは7月8日、いよいよ新型ミニバン「ビアンテ」の発売を開始する。
「いよいよ」と書いたのは、既に5月頃よりティザーキャンペーン(発売前の宣伝活動)と予約の受付が始まっていたからだ。既にTVCMを見かけた方も多いだろう。

人気の理由は扱いやすいボディと広い室内空間

今回、マツダはビアンテで新たなカテゴリーへ参入。
それは、排気量2.0リッタークラスのエンジンを搭載、全長4.7m前後、車高1.8m超えという背高なBOX型ボディを持つカテゴリーだ。
「トヨタ ノア/ヴォクシー」「日産 セレナ」「ホンダ ステップワゴン」といった名立たる大人気モデルが集結しており、ミニバンの中でも今最も売れているジャンルである。

人気を維持し続ける理由は、扱いやすいボディサイズながら広大な室内空間を確保、その中に3列シートを配置している点だ。さらに200万円台と手頃な価格帯にするなど、数々の魅力がある。

使い勝手の良さでライバル車と差を出すビアンテ

先発のライバル車の多くは、使い勝手に配慮し車幅を1.7m以内の5ナンバー枠に収めている。それに対し、マツダ ビアンテは全幅1770mmのため3ナンバーボディだ。
クラス最大の室内空間を誇る一方、回転最小半径5.4mとライバル以上の数値を誇り、ボディサイズのハンデを補う使い勝手の良さも主張する。

マツダ車らしい走りの良さをファミリー層にアピール

開発コンセプトは『見て、乗って、夢が拡がる“Zoom-Zoom Tall(ズーム・ズーム・トール)”』。
広さだけではなく、個性的なスタイリングやマツダ車らしい走りの良さでファミリー層にアピールする。
新しいミニバン「ビアンテ」のエンジンラインナップは2.0リッターと2.3リッターの2種類。FFモデルのほかに2.0リッター版には4WD車も設定する。価格は219.9万円から268.9万円まで。月販目標台数は3000台を予定する。

3.”Zoom-Zoom”な『心を動かすデザイン』を狙う

ビアンテでまず目に飛び込んでくるのが、切れ長のヘッドランプから流れるようにサイドへと続く大胆なラインだ。
マツダのコンセプトカー群が主張する『流れのデザイン』の具体化で、フロントマスクなどで「ひと目でマツダと分かること」を重視。また、「ライバル車とは違うこと」もアクティブに主張している。

他とは一味違うカッコよく、大胆なスタイリング

デザインコンセプトは”スペースモティベーター”。マツダは、広さや使いやすさが直感できて、しかも家族があれもこれもしたくなるような、まさに” Zoom-Zoom”な『心を動かすデザイン』だと説明する。
確かに他とは一味違う「カッコいい」デザインとなっており、外装色も画像に載せた「チリオレンジマイカ」をはじめ、大胆なスタイリングに合わせた個性的な7色を用意している。

4.乗員全員が楽しめるインテリアを目指したマツダ

インテリアにも、大胆なデザインが施されている。
室内に入ると、まず、インパネ上部全体を包む超ワイドなメーターパネル「トップマウントワイドメーター」が目に飛び込んでくる。これは運転席からの視認性の良さに加え、各席からも良く見渡せることで乗員全員がドライビングを楽しめる、との主張だ。
しかし、あまり飛ばし過ぎると同乗の家族から速度超過を指摘されてしまうため、ドライバーはくれぐれもご注意を。

インテリアカラーは、明るいライトベージュ色とブラック色の2種類からセレクトできる設定となっている。

視認性の良さと開放感に溢れた室内

インパネ上部をほぼ前面で覆う「トップマウントワイドメーター」が印象的なコックピット周り。乗る人みんながワクワクできるようなインテリアを目指したとマツダでは説明する。
明るいインテリアカラーも開放感を増す効果を生んでいる。

左右方向のスペースでライバル車と差を付けた荷室

定員8人乗車時でも、クラスNo.1の荷室容量を確保するビアンテ。やはり左右幅の余裕が差を生んだようだ。
サードシートは後部からもレバー操作1つで前後スライドができ、容易に荷室の拡大が可能となっている。

ライバル車のサードシートを左右へ跳ね上げて収納する仕様に対し、ビアンテは座面をチップアップ(跳ね上げ)して前へスライドさせ広大な荷室を確保。
ライバル車に比べ、左右方向のスペースを確保するとともに後方視界も良好となるのがメリットだ。

5.多彩なシートアレンジ可能なビアンテだが・・・

3列シートミニバンの華といえばシートアレンジだ。もちろん、ビアンテもその点は抜かりない。
セカンドシートは前後のみならず左右方向へもスライド可能で、その場合はセンターのウォークスルーが可能。サードシートのチップアップ・スライド機能と併せることで、多彩なシートアレンジが設定されている。

「リビングモード」はシートベルトが装着できない?

中でも1番のウリが「リビングモード」だ。
超ロングスライドによりセカンドシートの足元スペース長に863mmもの広大なスペースを稼ぎ、ライバル車の実に2倍以上もの広さだ。スゴい!

「リビングモード」の状態で、左右席は3点式シートベルトすら装着できないのでは、と思いマツダに確認した。すると、チップアップし着席できないサードシート用のシートベルトを、そのまま引っ張り出して使用してください、との説明があった。取扱い説明書にも書いてあるという。
実車にも、セカンドシート用シートベルトに説明書きが小さく記載されていたが、わざわざ確認でもしない限り分からない。

セカンドシート用シートベルトの改善に期待

この「リビングモード」状態でにっこり微笑む(ベルト非着用の)家族の姿を、カタログのインテリアページのメイン画像に使っているマツダ。「このまま走ってくださいね」とわざわざ誤解を宣伝しているようなものではないだろうか。取扱説明書にはその旨をはっきり明記すべきだろう。
同じようにセカンドシートの超ロングスライドをうたう「エスティマ」などは、シート自体に3点式シートベルトが組み込まれている。

ちなみに、ビアンテの中央席のシートベルトが、セカンド・サードシート共にイマドキ2点式というのも重ねて残念な点だ。このあたりも含め、今後の改善に期待しよう。

シートベルトやヘッドレストが異なるシート

十分な広さを誇るサードシートは3人掛け。残念ながら中央席にはヘッドレストもなく、シートベルトも腰部のみの2点式である。

写真の状態のセカンドシートは、最大定員8名で乗車可能。サードシート同様に中央席のヘッドレストは未設定だ。中央席のシートベルトも2点式となっている。

ヒップポイントを低めにし、乗降性を確保したフロントシート。セダンやコンパクトカーからの乗り換えユーザーにも違和感がないよう設定された。

便利でも工夫が必要なシートアレンジ

ビアンテ一番のウリである「リビングモード」。セカンドシート用の3点式シートベルトがピラー(後席ドアの後ろ側)に付いている点に注目したい。
この状態ではシートベルトが着用出来ないように見えるが、サードシート用のベルトを引っ張り出して着用するのだという。

セカンドシートはそれぞれ85mm左右のスライド移動可能な「カラクリシート」となっている。セカンドシートを倒すことなくセンターのウォークスルーも可能なため、とても便利だ。なお、シート外側にはアームレストも装備する。

ミニバンシートアレンジの定番「フルフラットモード」。
くつろげるアレンジだが、絶対にこの状態で乗車・走行してはいけない。

まず、シートベルト義務化以前に、万が一の衝突時に体を支えられず車外放出される危険性が高い。それに、前席の乗員に危害を加えたりして非常に危険なのだ。

6.2.0リッターに加え2.3リッターモデルもラインナップ

『見て、乗って、夢が拡がる“Zoom-Zoom Tall”』のコンセプト通り、ビアンテは走りの性能にもこだわった。エンジンラインナップは、2.0と2.3リッターの2機種の直4エンジン用意されている。

グリーン税制に適合した「MZR DISI」エンジン

2.0リッター直噴「MZR DISI」エンジンは、最高出力151ps(111kW)/6200rpm、最大トルク19.4kg-m(190N・m)/4500rpmを発揮(2WD)。5速ATと組み合わされる(4WD車は4速AT)。
2WDモデルの10.15モード燃費は12.8km/Lをマークし、平成22年度燃費基準+20%を達成。さらに、平成17年度排出ガス75%低減レベル認定も取得し、グリーン税制に適合した。
いずれもレギュラーガソリン指定となっている。

マニュアルモードが付く「MZR」エンジン

ハイパワー版2.3リッター「MZR」エンジンは、FFモデルのみの組み合わせ。最高出力165ps(121kW)/6500rpm、最大トルク21.4kg-m(210N・m)/4000rpmとなっている。
5速ATにはステアリングシフトスイッチ操作によるマニュアルモードが付く。
こちらはハイオクガソリン指定となる。

ボディや走行性能といった面に配慮

高剛性ボディやリアマルチリンクサスペンションの採用や、乗用車同等のステアリングギア比の設定(16.2)。これで、Zoom-Zoomなナチュラルなハンドリングと、マイルドで安定した乗り心地の実現を目指した。
さらに、クラスNo.1のCD値0.30をマーク。そのほか、背の高いミニバンの弱点である「横風」を克服するリアタイヤディフューザーといった、アンダーボディ周りの最適化を図るなど空力性能にも配慮。走行安定性のみならず静粛性や燃費面でも効果を上げたという。

また、「23S」には専用の17インチアルミホイールが装着される。

横滑り防止装置が選択できないビアンテ

背の高いミニバンにはぜひ欲しい、横滑り防止装置「ESC」(マツダでは「DSC」と呼ぶ)は、ビアンテで一切選択できない。
ライバル車の中には、これが全グレードで設定可能というクルマ(「ノア/ヴォクシー」)もあり、最新モデルとしては残念なことだ。シートベルトの件といい、安全面での取り組みにやや疑問を感じるところではある。

7.ナノイー、アレルバスターでクリーンな室内環境へ

ビアンテでは、インテリアの快適性にも着目した。
中でもフルオートエアコンに採用した空気清浄・消臭システム「nanoe(ナノイー)」や、アレル物質やウィルスなどを捕捉する「アレルバスター」搭載フィルターを採用。この2つは、小さな子供を持つ家族には特に嬉しい装備だろう。
これらに加え、消臭天井や撥水タイプのクリーナブルシートの採用で、クリーンなインテリア環境を実現させている。

マツダ最大の液晶ディスプレイなどを装備

ほかにも、マツダ車最大の格納式9インチ液晶ディスプレイとDVDプレーヤーを装備した「リアエンターテインメントシステム」、MAZDA G-BOOK ALPHA対応ボイスコントロールHDDナビゲーションシステムといった、イマドキのミニバンに必須な装備を用意する。

外観が異なる3つのグレード展開

グレード展開は、2.0リッターがベーシックな「20CS」と上級モデルの「20S」、さらに2.3リッターの「23S」の3つ。外観上はフロントグリルやフォグランプ周りなどのメッキ処理が異なる。
そのほかに、20Sに16インチ、23Sに17インチのアルミホイールが標準装備となるが、エアロパーツは全車にオプションとなる(20S・23Sにはリアルーフスポイラーのみ標準装備)。
2.0リッターモデルのみ4WDも選択可能となっている。

価格は「20CS」(FF)の219.9万円から

価格は2.0リッターモデル「20CS」(FF)219.9万円から、「20S」(4WD)268.9万円まで。2.3リッター「23S」が265.0万円(全て消費税込み)。
月販目標台数は3000台を予定する。

個性的なデザインはファミリー層向けなのか?

ビアンテ(BIANTE)の名前は、「周囲を取り巻く」「環境」を表す英語”ambient”から生まれた造語。ファミリーの生活に役立つ楽しく快適な環境のクルマ、という意味を込めてつけられた。
ビアンテのアクの強いスタイルがファミリー層にどう受け入れられるか、新参者のマーケット参入に注目が集まる。

挟み込み防止装置やバックモニターで安心なクルマに

両側電動スライドドアにはマツダ初のタッチセンサーによる挟み込み防止装置が付く。
開口幅はクラストップの780mm、フロア地上高は413mmだ。

予測進路ガイドライン表示機能付きの駐車支援システムはメーカーオプションで設定される(画像はフロントモニター)。

バックガイドモニターに加え、フロント・サイド(写真)の3箇所のカメラからの映像が表示される。背の高いミニバンには必須の装備といえる。

8.マツダ ビアンテのスペック情報

マツダ ビアンテのスペック情報は以下の通り。

代表グレード 20S(FF)
ボディサイズ(全長×全幅×全高) 4715x1770x1835mm
車両重量 1640kg
総排気量 1998cc
最高出力 151ps(111kW)/6200rpm
最大トルク 19.4kg-m(190N・m)/4500rpm
トランスミッション 電子制御5速AT
10・15モード燃焼 12.8km/L
定員 8人
消費税込価格 240.0万円
発売日 2008年7月8日
写真 高木 博史