巨大市場を狙う世界の自動車メーカー
世界2位の規模にまで拡大した中国の自動車市場を狙って世界中の自動車メーカーが中国市場に向けてさまざまな展開を図っている。BRICSと呼ばれる新興市場の中でも最も大きな市場が中国市場であり、ここでしっかり商売することができるかどうかは、自動車メーカーの将来を左右するものとなるからだ。
最近では、本国アメリカでの不振から世界一の自動車メーカーの座をトヨタに譲ることになったGMも、中国を中心にしたアジアなどでの伸びが経営を支えている部分がある。日本の自動車メーカーも同様で、縮小を続ける日本市場より、拡大を続ける中国市場を重視した経営をせざるを得ないような状況になりつつある。
今年の北京モーターショーに、トヨタの渡辺社長、日産のゴーン社長、三菱の益子社長と、3社の社長が自ら足を運んだのも、中国重視の姿勢の現れだ。
中国へは、外国の自動車メーカーが単独で進出することはできず、現地の自動車メーカーとの合弁で進出することになるが、その組み合わせも実にさまざまだ。
中国の自動車メーカーは、第一汽車、上海汽車、東風汽車が三大メーカーとされており、この3メーカーはそれぞれに複数の海外メーカーと提携して異なるブランドでのクルマ作りをしているので、話がややこしくなる部分がある。またほかにも奇端汽車、吉林汽車、長城汽車、BYDオートなど、さまざまな中小自動車メーカーがあるので、中国の自動車市場は簡単にとらえどころがない状態だ。
専用の豪華仕様を求める中国ユーザー
今年の北京モーターショーには世界初公開のクルマが数台登場した。日産はティアナの新型車の発表の場として北京を選んだが、これはティアナにとって日本よりも中国のほうが数段大きな市場であるためだ。
しかも日本などで販売される仕様のティアナだけでなく、中国専用の豪華仕様のモデルを用意しての発表だった。中国では中華思想の強さからか、『最高の仕様を用意しろ、それも中国専用の仕様にしろ』というニーズが強くあり、日産もそれに応えて専用の豪華ティアナを投入したわけだ。
日産はほかにリヴィナという中国専用モデルを投入していて、さらにこれをベースにしたCギアと呼ぶSUVモデルも追加していた。今はまだセダン中心の中国市場だが、規模が拡大しさまざまなユーザーが乗るようになるに連れて、さまざまなタイプのクルマが売れるようになるはず。SUVは当面の大きな候補のひとつだろう。
今回の北京でワールドプレミアとして発表されたのは、ほかにメルセデス・ベンツGLKやアウディQ5があった。いずれもミディアムクラスのSUVで、ダイムラーやアウディも中国市場でのSUVの伸びに注目していることを示している。
とはいえ、現在の段階で中国で良く売れているのはセダンであり、ティアナに限らず、マツダがデミオのセダン版であるマツダ2セダンを投入しているほか、VWもコンパクトカーのポロのセダン版を、シトロエンもZXのセダン版を販売しているなど、セダン中心の時代はまだしばらく続きそうだ。
VWといえば、中国専用車のラヴィダを投入したほか、フラッグシップモデルのフェートンも中国に投入している。日本では導入のメドも立たなかった高級車だが、高級車から良く売れる中国では高い需要があるという。
このほか、トヨタがヴィッツ、ホンダがフィットの発売を明らかにしており、市場の拡大に合わせてコンパクトカーの伸びも予想される状況になっている。