一見キレイに見えるクルマであるが・・・

 桜前線も順調に北上し、すっかり春の訪れを感じるようになりました。春といえば洗車の季節!今まで寒風吹きすさむ中、かじかむ手で愛車をケアしていたマニアの方、寒いからといって洗車をサボっていた方、降雪のため洗車をしたくても出来なかった地方の方、さあ、思いっきり洗車をしましょう!
  
 この時期になりますと、私のところに洗車に関する質問が多く寄せられます。その中でも最も多いのは、「どんなに丁寧かつ慎重に洗車、ワックス掛けを行っても、いつの間にか塗装面に細かい傷が付いてしまう」ということです。
 これは、洗車という行為そのものが傷の原因になってしまう「ミガキ傷」といわれるものです。微細な傷ですが、神経質になるとキリが無いこの「ミガキ傷」を付けない事は可能なのでしょうか?
 
 一般的にこの「ミガキ傷」は、塗装面に付着した粒子状物質を完全に除去していない状態で擦ったり、洗車やワックス掛けの際に使用するスポンジ、そして水分やワックスの拭き取りに使用する繊維の摩擦が原因といわれております。では、筆者自らが細心の注意を払い、洗車&ワックス掛けを敢行。「ミガキ傷」の発生をどこまで抑制できるのか90日に渡りテストをしてみました。
 テスト車は「ミガキ傷」が目立ちやすい濃紺。洗車は粒子状物質を完全に洗い流せる高圧洗車機を使用。スポンジは最も柔らかな素材である天然セルローススポンジ。水分とワックスの拭き取りは、極細繊維のマイクロファイバークロスを使用し、作業は空気中に浮遊する埃の影響を受けないガレージ内で敢行。これだけ気をつけても、「ミガキ傷」が発生するとなれば、ある程度の諦めがつきますよね。
 では、1週間に1回の洗車、2週間に1回のワックス掛けを行い、90日後の塗装面にどのような変化があったのか、順を追って説明いたします。

完全にミガキ傷を除去した塗装面

ミガキ傷を除去した塗装面

 ↑超微粒子のコンパウンドとダブルアクションポリッシャーを併用し、完全にミガキ傷を除去しました。仕上げに固形カルナバワックスを塗布し、実験開始です。さてこの状態をいつまで保つ事が出来るでしょうか・・・。

3週間後の塗装面ではミガキ傷が目立ち始めた

3週間後の塗装面ではミガキ傷が目立ち始めた

 ↑3週間の間に4回の降雨と黄砂の襲来があり、計5回ほどの洗車と2回の固形カルナバワックス塗布を敢行。すでに、直射日光下では、ミガキ傷が目立ち始め、乱反射を起こしている事が確認できると思います。最大限の丁寧かつ慎重な作業を心がけているにも関わらず、ミガキ傷は防げないのであろうか?

90日後では、ミガキ傷が一面に広がり乱反射を起こしている

90日後では、ミガキ傷が一面に広がり乱反射を起こしている

↑90日の間に数十回の降雨、降雪を記録したため、1週間に1回という当初の洗車サイクルをオーバーし、合計19回の水洗いを行った。これに伴い保護皮膜の強化のため、固形カルナバワックスの塗布は、合計7回。しかし、直射日光下にクルマを持ち出した結果、ご覧のとおりミガキ傷が一面に広がり、光の乱反射が発生。シャープな映りこみは期待できない状態になっております。

結論!ミガキ傷は必ず発生する。ある程度は妥協すべし

 私も以前は、このクセモノである「ミガキ傷」に対し、とても神経質になり洗車後には目を凝らして塗装面を眺め、「ミガキ傷」を見つけたものなら即ポリッシャーまで持ち出し“傷退治”に躍起になっていた時期がありました。しかし、こんな事を頻繁にやっていては塗装面を過剰に研磨しかねません。そこで気がつきました。塗装の硬さは所詮2Hの鉛筆芯程度。傷が付かない訳がないではないか・・・と。
 今回の実験では、最大限に気を配り、極力傷を付けない条件で作業を行いましたが、90日後には「ミガキ傷」が相当発生しております。

 これ、結論。使用する素材を厳選し、丁寧な作業を心がければ、「ミガキ傷」の発生をある程度抑制する事は可能です。しかし、“付かない”というのは事実上不可能なのです。塗装面を擦れば必ず細かい傷が刻まれます。極端な話、傷を付けたくないのなら室内に“飾っておけ”なのです。このあたりを踏まえ、「ミガキ傷」の発生はある程度の妥協をしてください。そして、「最近、ちょっと目立ってきたなあ?」という時に下地処理を行い、リフレッシュしてあげてください。クルマは走ってナンボ。飾りモノではないですからね・・・。(私もこんな事を言えるようになるまで時間が掛かりました。)

 今後、このコーナーの中で、年単位で考える『極上の艶をキープする方法』と題し、作業サイクルについては詳しくお伝えいたします。お楽しみに。

 

written by 外川 信太郎
職業:自動車ライター&カーグッズライター