搭載エンジンは3.5Lに排気量アップされた。基本的にはレジェンド用のエンジンと同じだが、レギュラーガソリン仕様で206kW(280ps)のパワーに抑えられている。さらに従来からの可変シリンダーシステムは、V型6気筒を3気筒に切り換えるだけでなく、4気筒にも切り換えるモードも用意するなど、より高度な制御を加えることによって、高速クルージングでの実用燃費を高めている。レギュラーガソリン仕様であることを含めて考えると、ガソリン代も含めた実燃費で有利になるモデルである。
レジェンド用に比べるとパワーが抑えられているとはいえ、206kW(280ps)の動力性能があれば走りは余裕十分。ボディの大きさや装備によって1600kgを超える車両重量があるが、その重さが全く気にならないような豪快な走りが可能である。高速域での追い越し加速なども実に力強いものだ。
80km〜100kmくらいでクルージングしていると、そのときには可変シリンダーシステムによって3気筒か4気筒の燃費の良い状態で走っているわけだが、その切り替えがいつどのように行われたのか、走っていても全く感じない。もちろん追い越しなどでアクセルを踏み込んで加速するときには瞬時に6気筒に変わっているのだが、それも分からないのだ。このスムーズさは相当なものだ。
組み合わされるミッションは電子制御5速ATで、最近ではこのクラスは6速かなと思わせる部分もあるが、変速フィールは悪くない。強いていえば高速域でエンジンブレーキを使うときのために4速ギアが選択できるようになるとさらに良いと思う。DからD3へと一気に2段のギアを落とすとショックも大きくなる。
足回りはけっこうしっかりした感じの乗り味を感じさせる。路面の段差などでは多少のショックもあるが、安定感は十分でスポーティな印象の足回りだ。その分だけロードノイズも入ってくるのだが、それがインスパイアのダイナミックな走りの味ということだろう。アメリカでのライバル車であるカムリとは明確に方向性の異なるクルマといえる。
●お勧めグレード
35iLと35TLの2グレードの構成で、価格差も60万円とはっきりしている。でも35iLには追突軽減ブレーキやACCなどの最新の安全装備が標準で装備されるほか、ホンダHDDインターナビも標準で装備される。390万円の価格は確かに高いといえば高いが、レジェンドに比べると100万円以上も安く設定されており、競合車と比べても格段に買い得感があるリーズナブルな価格設定なのだ。買うなら最新の安全・快適装備の得られる35iLがお勧めである。