記者会見する取締役社長カルロス ゴーン氏

4月26日、日産本社にて取締役社長カルロス ゴーン氏による、2006年度決算報告および中期計画「日産バリューアップ」進捗状況に関する記者会見が行われた。
 

2006年度決算報告

記者会見する取締役社長カルロス ゴーン氏

 まず初めに、2006年度決算報告が行われた。冒頭でカルロス ゴーン氏は「年度当初、私は2006年度が日産にとって厳しい年になると申し上げましたが、残念ながら予想通りの結果となりました。」と語った。2006年度通期の実績は、連結売上高が10兆4,686億円、連結営業利益は7,769億円、売上高営業利益率が7.4%、当期純利益が4,608億円。通期の業績は予想を下回り、この8年間で初めて当初の目標を割る結果となったという。

2006年度販売状況について

 2006年度のグローバル販売台数は348万3,000台で、前年比2.4%減。グローバルで10車種の新型車が投入されたが、発売時期が下期に集中したことにより、グローバルな台数増には至らなかったという。また、国内の全体需要は前年から4.1%落ち込み、国内販売台数は前年比12.1%減の74万台、市場占有率は1.2ポイント減の13.2%に留まったとのこと。米国の全体需要は前年比3.4%減で、販売台数は前年比4.0%減の103万5,000台。会計年度が暦年ベースの欧州では、全体需要が横ばいの中、日産の販売台数も前年とほぼ同水準の54万台。一方、メキシコとカナダを含む一般海外市場の販売は、前年比5.1%増の116万8,000台。中国が健闘し、販売台数は22.2%増の36万3,000台に達したという。

「日産バリューアップ」目標達成できず1年延長

記者会見する取締役社長カルロス ゴーン氏

 続いて日産バリューアップの進捗状況の報告でカルロス ゴーン氏は、「2006年度の実績は日産バリューアップの目標達成に貢献しませんでした。しかし、当社は中期計画のコミットメントを実現する潜在力があり、引き続きコミットメント完遂に全力を尽くします。従って、日産バリューアップの全てのコミットメント達成時期を1年延長することとしました。」とコミットメント達成時期の1年延長を発表した。また、そのような中でもこの1年間で日産バリューアップの中心となる4つのブレークスルーは確実に前進を遂げたという。
 1つ目は、インフィニティを世界に名だたるラグジュアリー・ブランドにすることで、2005年度には韓国に投入し、2006年度にはロシア市場に投入し滑り出しは順調だという。今後はグローバル展開を加速し、今年は中国とウクライナ、2008年には西ヨーロッパ全体に拡大するとのこと。

インフィニティ「FX」
インフィニティ「FX」
インフィニティ「G35セダン」
インフィニティ「G35セダン」
インフィニティ「G37クーペ」
インフィニティ「G37クーペ」
 

 2つ目は、小型商用車LCVのプレゼンスをグローバルに強化することで、小型商用車のグローバル販売台数は日産バリューアップ開始以来57%伸び、2006年度には490,000台に達しさらに売上高営業利益率のコミットメントである8%も過達したとのこと。
 3つ目は、部品、機械、設備、ベンダーツーリング、サービスを、価格競争力のある国々(リーディング・コンペティティブ・カントリー(LCC))から調達すること。日本向けの調達先は、中国とアセアン諸国、北米向けはメキシコ、欧州については東欧にそれぞれ確立しているという。次のステップでは、インドで調達先を確保するとのこと。2006年度、日・米・欧の購入額の15%はLCCが占めたが、2005年度は12%だったという。2007年度はこれを加速し、24%まで拡大する予定とのこと。
 4つ目は、新興市場と今後台頭してくる国々における地理的拡大で、ブラジル事業には1億5,000万ドルにのぼる投資を行い、2009年までに40.000台の販売台数を達成する見込みとしている。ロシアでは、サンクトペテルブルグの工場に2億ドルの投資を行い、2009年の操業開始時には、50,000台の生産能力を確保するという。インドでは、ルノーと共に、マヒンドラ・マヒンドラと提携し、3社共同でチェンナイに新工場を建設し2009年に操業開始する予定とのこと。中国においては、2003年以来東風との合併事業に16億ドルを投じ、最近ではエンジン工場と研究開発センターが新設されたという。

2007年度の見通しは?

 2007年度は、まず経営体制を変更し、エグゼクティブ・コミッティの人数を7人から9人に増やし、事業上の優先課題への対応を強化したという。また、利益性向上を目的とした取り組みを数多く行うとのこと。その中には、第1四半期には追浜工場と栃木工場の一直化、日産車体は第一工場を閉鎖し第二工場に生産を統合するとともに九州工場を新たに立ち上げる、などが上げられている。また、米国ではすでに早期希望退職を募っているほか、南アフリカでは人員削減を発表し生産性と競争力の向上を図っているという。
 2007年度の販売予測は、グローバル販売台数目標は前年比6.2%増の370万台、国内販売については固めの70万台を計画し、全体需要の更なる減少と競争の激化を見込んでいるとのこと。米国の販売目標は110万台、欧州の販売目標は60万台、メキシコとカナダを含む一般海外市場の販売台数は130万台が見込まれている。

今後は「技術開発」「ブランド力の向上」「人材への投資」「新車攻勢」が課題

「技術開発」について

 日産は現在、将来に向けた多額の投資を特に研究開発を中心に行っているという。1999年以降年間の研究開発費は倍増、2007年度にはほぼ5,000億円に達し、さらに費用の拡大だけではなく1999年に対して5倍以上効率が向上したとのこと。また、アライアンスを通じて、ルノーの研究開発部門と多くの協力関係を築いている。2007年度には、車間維持支援システムなど8つの日産独自の技術を商品化し、さらに2009年度から3年間に毎年15を越える新技術を商品化する予定だという。

日産 マキシマ

 また、環境対応については、先行開発の予算の4割を、環境戦略の5ヵ年計画であるニッサン・グリーン・プログラム2010に充当しているという。ハイブリッドから燃料電池、電気自動車、クリーンディーゼルなど全ての可能性を模索しているとのこと。先週には、米国全州でクリーン・ディーゼル搭載の乗用車を2010年に発売すると発表された。その第一号車である「マキシマ」は、日産・ルノーが共同開発したアライアンス・エンジンが採用される。

「ブランド力の向上」について

 「ブランド・アイデンティティは、自動車業界にとって大きな挑戦です。値引きで、日用品化したクルマを販売するメーカーは長くはもたないでしょう。今後ものをいうのはブランド力であり、勝敗や生き残りを左右することになります。」とカルロス ゴーン氏は語った。現時点で、ブランドの弱いメーカーは悪いイメージの払拭に苦労し、評判の高いブランドはその名声によって大きなプレミアムを享受しているなか、日産とインフィニティのブランドはかなり改善しているものの、いずれもその中間辺りに位置しているという。

アルティマ(2007年モデル)

 ブランド力向上の鍵となるのは“魅力度”と“競争力”とし、まだやるべきことが残っているもののデザインの魅力とドライビング・プレジャーに定評のある日産に改善の余地があるのは“競争力”の面だという。米国ではクルマ選びに参考にする人が多いというコンシューマー・レポート。最近のコンシューマー・レポートでは、日産の新型「アルティマ」がトップタイとなっている。さらに、インフィニティG35とMは、信頼性・安全性のカテゴリーでそれぞれ全米自動車ベスト・テンの1位に選ばれたとのこと。「時間はかかるがこのような成果の積み重ねがブランド力の強化につながる」とカルロス・ゴーン氏は語った。

「人財への投資」について

厚木デザインセンター

 「どの企業であれ、真のブランド力を支えるのは従業員のモチベーション」と語ったカルロス・ゴーン氏。日産では、就業環境に投資を行い、従業員がより効率的かつ機能横断的に仕事ができる職場を提供しているという。例えば、2006年11月には厚木デザインセンターを新設、来月には新しい日産先進技術開発センターが新設される。その後、2008年の半ばにはアメリカ事業の新本社がナッシュビルで操業開始し、2009年10月には横浜のグローバル本社が完成する予定とのこと。

「新車攻勢」について

 日産は、2007にグローバルで11の新型車を投入するという。
1:一般海外市場では中国を皮切りに2列シートのミニバン「リヴィナ」を発売。
2:夏には新型「エクストレイル」を欧州、日本に続いてグローバルに投。
3:米国ではアルティマの派生車「アルティマ クーペ」を発売。
4:国内の小型商用車事業の強化を目指し新型「アトラス」のシングル・キャブとダブル・キャブを投入。
5:メキシコではルノー・ロガンの派生車である新しいエントリーレベルのセダンを発売予定。
6:米国のインフィニティ・チャンネルでは新型3.7L VQ VVELエンジンを搭載した「G37クーペ」を投入。
7:新型コンパクト・クロスオーバー「ローグ」を米国で発売。
8:2007度下期の目玉として、東京モーターショーで「GT-R」をグローバル発表
9:コンパクト・ラグジュアリー・クロスオーバーの「インフィニティEX」を投入。
10:新型「ムラーノ」の投入
11:タイをはじめとする市場で、ピックアップ・トラック新型「フロンティア・ナバラ」シングル・キャブを発売。

2007オート上海で発表された「リヴィナ」
「リヴィナ」
記者会見後お披露目された新型「エクストレイル」
新型「エクストレイル」
 
2006北米モーターショーで発表された「ローグ」
「ローグ」

 さらに、日産バリューアップで予定されている28車種の新型車の発売後、次の三ヵ年計画では33を越える新商品を投入する予定とのこと。

今後の日産に期待

 今回の記者会見の最後でカルロス ゴーン氏は、「2006年度、当社は壁にぶつかりましたが、1999年当時のような瀕死の状態ではありません。存続が危ぶまれているわけではないのです。」と語った。続けて、「しかし、早い段階で、警鐘に気づきました。日産はスヌーズ・ボタンを押して、再び眠りにつくような会社ではありません。私どもは会社を再生に導いた客観性、警戒心と危機感をもってこの状況に対処しています。」とし、さらに、「当社は問題を克服し、そこから学ぶことで競争力を磨きます。今後の日産にご期待ください。」意気込みを語った。

( 写真/レポート:CORISM編集部 )

今夏発売予定!新型「エクストレイル」!

記者会見終了後、日産本社ギャラリーにて、今夏発売予定の新型「エクストレイル」がお披露目された!
日産 新型「エクストレイル」/フロント
日産 新型「エクストレイル」/フロント
日産 新型「エクストレイル」/サイド
日産 新型「エクストレイル」/リア
日産 新型「エクストレイル」
日産 新型「エクストレイル」/インパネ
日産 新型「エクストレイル」/荷室
 

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