高い操安性と快適な乗り心地を両立させた高剛性ボディ
バージョンNISMOを走らせてすぐに感じるのは乗り心地の硬さとともに、ボディの硬さというかしっかり感だ。ガチッとしたボディの中にいる安心感は、Zを走らせようとする気持ちのベースとなる。硬めの足回りは専用のチューンによるもので、同時にヤマハ製のパフォーマンスダンパーを採用することで、高い操安性を確保しながらも乗り心地をスポイルしていない。
搭載エンジンは標準仕様と同じで今回のマイナーチェンジから搭載されるようになったVQ35HR型。先にスカイラインから採用が始まったエンジンだが、フェアレディZ用に専用のチューニングが施されているという。
このエンジンの素性の良さというか、吹き上がりの良さはすでにスカイラインでも定評があるところで、アクセルワークに素直に反応して吹き上がっていく感じはとても気持ちが良い。低速域から十分なトルクを発生する上に、吹き上がりに応じたパワーの盛り上がりにも自然なフィールがあり、軽快さと合わせて300psを超えた力強さも魅力となる。
スポーツカー本来の走りが味わえるバージョンNISMO
新エンジンを搭載したバージョンNISMOを走らせるには、それなりに気合を入れて走ることが必要な感じになる。スポーツカーというのは本来そうしたものだが、スムーズに速く走らせるにはそれなりの腕も必要だ。バージョンNISMOには5速AT車の設定もあるが、買うならやはり6速MT車だろう。
もう1台の試乗車はロードスターでこちらはAT車に試乗した。ATであっても十分に速いし、マニュアルモード付きのATである上にマニュアル操作でシフトダウンをしたときには回転数を合わせる機構が働くので、AT車であってもけっこう楽しく走らせることが可能。ルーフをオープンにして流して走るのを含めて、バージョンNISMOとは違った走りの楽しさがある。
●お勧めグレード
試乗したバージョンNISMOとロードスターバージョンSTの価格は、いずれも400万円台の中盤で、10万円と違わない水準に設定されている。なので、購入するときには本気で悩むことになりそうだ。
当然ながら、走り志向の強いユーザーはバージョンNISMOを選ぶことになるし、ラグジュアリー志向のユーザーがバージョンSTを選ぶことになるのだが、そう単純に割り切れる選択でもない。
フェアレディZらしいスポーティな走りを楽しむにはバージョンNISMOが良いが、いつも神経を使って気合を入れた走りをしていたら、疲れてしまう。1台だけの所有だとしたら、楽に乗りたい気分ときのほうがむしろ多いくらいだろう。
なので一般的にはバージョンSTのほうがお勧めだが、走りたい気持ちになる機会の多い人やメーカーの保証が付いたコンプリートカーを求めるユーザーには、バージョンNISMOは見逃せない存在になると思う。