交通事故低減や渋滞緩和を目指す

 日産は、信号見落としによる交差点での出合頭事故や道路横断歩行者の安全確保、そして信号や右折車の存在が原因で起こる渋滞の改善を目的とした、路車間通信活用による信号機協調ITSを開発するため、同社のテクニカルセンター構内において実験用交通信号設備を導入し、検証実験を開始すると発表した。

 日産は、2006年10月より、神奈川県において、交通環境の情報を利用した交通事故低減と渋滞緩和を推進するSKY(スカイ)プロジェクトの実証実験を行っているという。今回開始される実験は、一般公道で実施するSKYプロジェクトの発展を主眼に、自社事業所構内の実交通環境下に信号設備を導入し、交通事故低減や渋滞緩和を目的とした様々な研究を行うものであるとのこと。

 日産のテクニカルセンターは、東西約2km、南北約1kmの幹線道路に、複数の交差点と歩行者横断歩道を有し、ITSの開発実験にとってほぼ一般公道と同等な環境を有している。設備は、一般公道に設置されている信号機や光ビーコン通信機を導入、車両は日常的に走行する従業員の車両や構内連絡バスなどをそのまま用いることで、一般公道と同等の環境下においてデータの収集や、システムの受容性評価が行われるとのこと。なお、データ収集のために、従業員の車両数百台へ、SKYプロジェクト同様、通信機(VICSアンテナ)を搭載し、ナビゲーションに必要なプログラムの書き換えを実施するという。

構内道路・路側設備イメージ

 具体的には、歩行者事故の低減として“道路横断歩行者を優先した信号”、信号見落としによる交差点での出合頭事故低減として“路車間通信による信号情報注意喚起システム”、信号や右折車の存在が原因で起こる渋滞の改善が研究される。

道路横断歩行者を優先した信号

交通量に応じて、車両側と歩行者側の信号の現示時間や変更タイミングを最適化。クルマがと通らないのに歩行者信号が赤である場合、赤信号を無視して横断したくなるという歩行者の心理を捉え、歩行者の信号無視による事故の低減や、歩行者の交通法令順守への意識醸成を研究するとのこと。
 

路車間通信による信号情報注意換気システム

SKY(スカイ)プロジェクトとして公道で実証実験している信号情報注意換気システムをテクニカルセンター構内へ導入し、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)などについて更に詳細な検討を行うとのこと。また、安全運転支援レベルとして、注意喚起より更に高い、信号無視への警報や制動制御介入の可能性なども研究される。
 

信号や右折車の存在が原因で起こる渋滞の改善

信号や、片側一車線道路において右折車が引き起こす渋滞について、路車間通信を活用し、車両の走行状態や進む方向、台数などを信号の制御に反映することによって、交通流を円滑化する研究を行うとのこと。これにより、本線、対向車線、交差車線側各々の車両の停止時間の短縮を試みるという。
 

 今回の研究では、クルマと信号機が通信でつながる路車間通信を活用し、クルマの情報と信号が連動した交通システムの高度化を検討し、交通事故の低減と渋滞の緩和が研究される。また、今後はさらに、関係省庁との連携を密に行い、実用化に向け、SKY(スカイ)プロジェクトでの実証実験へと発展させていくとのこと。