ライター紹介

221616 編集部

世の中の自動車ニュースとは一味違う視点でスローニュースを発信。編集部員はクルマ初心者からクルマをこよなく愛するマニアまで幅広いメンバーで構成。全国のガリバーで売れている中古車や車のスタッフレポートなど、生の情報をお届け中。

他に類を見ないクロスオーバー・ミニバン

 三菱自動車は、約13年ぶりとなる1BOXタイプミニバンの老舗ブランド「デリカ」のフルモデルチェンジを実施し、1月31日より発売を開始した。
 新型は「5代目デリカ」から由来する「デリカD:5(ディーファイブ)」名を名乗る。『アクティブな生活を大事にする、あなたの元気を応援します』のスローガンをもとに、ミニバンの「スペース」「使い勝手」とSUV・クロカンの「走破性」「力強さ」などを併せ持つ、他に類を見ないモデルとなった。

縦と横のラインだけを使ったシンプルなリアビュー。風洞実験により、テールゲートの落とし込み角や丸みの適正化も図っているという

「ジープ」「パジェロ」や「デリカ」など、三菱自動車が長年に渡り培ったオフロード車の伝統を巧みに生かした、力強いフロントマスク。

足回りは225/55R18マッド&スノータイヤと光輝タイプアルミホイールの組み合わせが標準。ただしベーシックなMグレードのみ215/70R16+ホイールカバーとなる。

新型デリカD:5と開発責任者のプロダクトエクゼクティブ 中尾 龍吾氏。(1月31日に都内で行なわれた「新型デリカD:5」発表会会場にて)

つい先日ゴールを果たした2007ダカールラリーにサポートカーとして7000kmを走破した「チーム レプソル 三菱ラリーアート デリカD:5」。砂漠の砂もそのままに発表会場に展示されていた。

発表会場では、デリカD:5の高い悪路走破性を示す対地障害角をアピールする展示が行なわれていた。SUV並みのグランドクリアランスと対地障害角が見てとれる。

歴代デリカの伝統を継承したエクステリア

 新型デリカD:5は歴代デリカの伝統を継承し、オフロードでの高い走破性を予感させるスタイルが与えられた。特に、スペースの広さを感じさせつつ、ヨンクらしい力強さも感じられるクリーンで精悍なスタイルが自慢だ。地上高は高められ、さらにクロカン4WD並みの前後のアングル角(対地障害角)を取りグラウンドクリアランスを確保する本格派である。そのいっぽうで直線基調の基本フォルムにより効率的なパッケージングも実現し、高いユーティリティも確保している。
 デリカD:5はエクステリアだけで見れば、大柄なモノフォルムミニバンの先代「デリカスペースギア」より、むしろ先々代に相当するコンパクトな1BOXワゴン「デリカスターワゴン」の後継車、といえるかもしれない。

三菱デリカ歴代モデル「初代デリカ」(1968〜1979)

三菱デリカ歴代モデル「3代目デリカスターワゴン」(1986〜1999)

三菱デリカ歴代モデル「4代目 デリカスペースギア」(1994〜2007)

高いけど、低くて広い!?

 新型デリカD:5で最も特長的な「高い地上高」。先代デリカスペースギアに比べても最低地上高をさらに20mmアップし、走破性をより高めている。またそのいっぽうで全高は100mm低く抑えることで、デリカD:5独特のフォルムを生み出している。しかし基本パッケージングの最適化により室内高は100mmも拡大し、十分な室内空間を確保している点が最新モデルならではだ。
 3列シートの車内は、前席から2+3+3人掛けのレイアウトで計8名乗車可能。セカンド・サードシートにはロングスライド機構を採用し、乗員の十分な膝前スペースを確保しながらも、必要に応じて十分な荷室スペースが得られる設定とした。またシート自体についても、フラットシートアレンジを可能としながら、クラストップのシートバック高や十分な厚みを持たせることで、快適な掛け心地を目指したという。

全車電子制御4WD+ASC標準装備で高い走破性を実現

 また特徴的なのは、現時点では新型デリカD:5は4WDのみのラインナップとなる点だ。4輪駆動のシステムは、同社のSUV「アウトランダー」に採用されている電子制御4WD。2WDモード、4WDオートモード、4WDロックモードの3ツの駆動モードからセレクト出来る。
 この電子制御4WDに加え、ASC(アクティブ・スタビリティ・コントロール)を全車標準装着するところに注目したい。ASCは急ハンドルや滑りやすい路面での横滑りの挙動を、電子的にブレーキ、エンジン、駆動系などを総括制御する横滑り防止装置と、ホイルスピンを抑制するトラクションコントロールを兼ね備えたもの。このASCと電子制御4WDの組み合わせにより高い操縦安定性を実現するとともに、本格的なクロカン4輪駆動車並みの高い走破性も確保出来たという。

FFモード、4WDオートモード、約1.5倍のリア駆動力を配する4WDロックモード、これら3つの駆動モードを持つデリカD:5の電子制御4WDシステム。

三菱 新型デリカD:5のマクファーソンストラット式フロントサスペンションは、基本シャシーを共有する同社のSUV「アウトランダー」と同等のものだ。

一方のリアはトレーリングアーム式マルチリンクサスペンションを採用。こちらは多人数乗車や積載を行なうデリカD:5にあわせコイルスプリングとショックアブソーバーを別置きに配した。

リブボーンフレームの堅牢・安全ボディ

 開口部の大きい1BOXタイプボディだけに、新型デリカD:5では環状構造の「リブボーンフレーム」によりボディ剛性アップを図った。もちろん、三菱の衝突安全ボディ思想「RISE」により、衝突時の安全性についても、社内テストでは国内衝突テストJNCAPの最高ランク6ツ★レベルに相当する実力を誇るという。その他、運転席ニーエアバッグ、SRSカーテンエアバッグなどの設定や、セカンド・サードシートの強度アップやレイアウトに配慮した荷物侵入抑制シートの採用など、最新モデルに相応しい安全仕様となっている。
 また外観でも、軽衝突時に復元性の高い樹脂フェンダーを採用するほか、3分割の前後バンパーでSUVらしい力強さをアピールしつつ、部分補修に対応する機能的なデザインとする。
 さらにノーズビューカメラ、サイドビューカメラ、リアビューカメラの3点をセットにした「マルチアラウンドモニター」は2面を1画面に映すマルチビュー画面機能を搭載し、車両周辺の死角をほぼ解消することが出来たという。ただしこちらは一部グレードのみの装着となる。出来れば全車に設定してほしい装備だ。

「安全・安心」を生み出す『リブボーンフレーム』の模式イメージ。まるでクジラかゾウの肋骨(ろっこつ)のような、いかにも堅牢そうなイメージだ。

側方からの衝突に対応するSRSカーテンエアバッグ。三菱車初だという全席対応式で、乗員の頭部を保護する。もちろん、全席の乗員がシートベルトを装着することが前提だ!

新型デリカD:5のフロント及びリアのバンパーは3分割構造。左右には別体のスキッドプレートを採用しSUVらしさもアピールする。フェンダーは三菱車初の樹脂製を採用。軽い衝突でのダメージも少ない。

2.4リッターMIVECエンジンが生み出す余裕の走り

 エンジンは、アウトランダーなどに積まれる2.4リッター DOHC 16Vエンジン「4B12」型。吸排気可変バルブタイミング「MIVEC」を採用し、最高出力170ps(125kW)/6000rpm、最大トルク23.0kg-m(226N・m)/4100rpmを発生させる。また平成17年基準排出ガス規制75%低減レベル(★★★★)を達成している。全車がINVECS-III CVTとの組み合わせになり、「G-Power Package」以上のグレードでは6速スポーツモード機能が追加される。燃費は10.15モードで10.4km/Lをマークし、平成22年度燃費基準+10パーセントを達成し、グリーン税制の対象となっている。

ノーズ・サイド・リアビューカメラの3点セットから構成されるマルチアラウンドモニター。背が高く死角が生じがちなミニバンには必須な装備といえる。「G-NAVI package」以上に標準設定。

トランスミッションはINVECS-III6速CVTを採用。「G-Power package」以上のグレードではさらにパドルシフト付きのスポーツモード機能を追加する。

2.4リッター MIVEC DOHC 16V 4B12型エンジンを横置きに積む。最高出力170ps(125kW)/6000rpm、最大トルク23.0kg-m(226N・m)/4100rpmと十分なパワー・トルクを発生させる。

cocochiインテリアで快適な車内環境

 新型デリカD:5には、乗員が快適に過ごせるインテリアの機能も多彩に用意されている。
「cocochiインテリア」は、「クリーン」「ストレスフリー」「リリーフ(安心)」の3つのテーマとしたコンセプト。生地表面にフッ素樹脂でアクリル樹脂をバインダーし、撥水・防汚機能を持ったシート生地や、UV&ヒートプロテクトガラス、さらに消臭天井や脱臭機能付きクリーンエアフィルターなど、乗る人に優しく快適な車内環境を目指したという。
 グローブボックスは上下2段式。大容量を誇る照明付きアッパーグローブボックスには保冷・保温機構を加えた他、底面トレイは取り外しができ、ロア部と一体化することで2リッターのペットボトルを2本立てて収納することも可能だという。
 また調光機能付きのリラックスルームイルミネーションを設定するほか、3列席それぞれの頭上に設置されたトリプルパノラマルーフも全車にオプション設定するなど、様々な趣向が施される。

機能性や使い勝手を損なわないよう、エクステリア同様極めてシンプルにまとめられたインパネ。しかし実際にはディテールに至るまで細やかな配慮が与えられている。

上下2段式のグローブボックスはアッパー側の底面トレイを取り外すことで、2リッターのペットボトルを2本立てて収納することも可能とする。

3列各席を明るく照らすトリプルパノラマルーフは全車にオプション設定。センターのみ電動開閉可能で、他はチルト式となる。全てサンシェードが付く。

3列目シート

2列目シート

フロントシート

 オーディオ面では、12スピーカーにクラス最大860Wのハイパワーアンプを搭載し、5.1chシアターサラウンド機構を内蔵した「ロックフォードフォーズゲートプレミアムサウンドシステム」を設定。ドアのエンクロージャー化やデットニングなど本格的なチューニングも施され、臨場感溢れる自慢のシステムとなっているという。また7インチワイドモニタ付きHDDナビ、DVD内臓後席9インチワイドディスプレイなど、現代のミニバンに求められるエンターテイメント性もばっちりだ。

 製造は三菱自動車の子会社「パジェロ製造」で行なわれる。価格は「M」グレードの261.45万円から「G-Premium」341.25万円まで。
 ボディカラーは7色だが、ボディ下部をグレー系もしくはシルバー系(色毎に異なる)に塗り分けたツートンカラーと、モノトーン(1色)の2パターンから選ぶことが出来る。また内装色もダークグレーとベージュの2色からセレクト可能なのがうれしい。月販目標台数は2300台の設定。

 三菱ファンにとっても待望の新型ミニバンである「デリカD:5」。発売日の時点で、既に3400台もの受注を受けているという。その売れ行きに注目が集まる!

7インチワイドディスプレイHDDナビ(MMCS)を装着したインパネ。30GBの大容量を誇り、ミュージックサーバー機能も搭載する。またVTRアダプターから携帯音楽プレーヤーや地デジチューナーの入力も可能だ。

DVD内蔵後席9インチワイド液晶ディスプレイ。「ロックフォードフォーズゲートプレミアムサウンドシステム」を装着すれば5.1chドルビーデジタルシアターサラウンドシステムも楽しめる。また赤外線ヘッドホンも付属する。

サードシートはオーソドックスな左右跳ね上げ式。5:5に分割でき、シチュエーションに応じたアレンジが可能だ。また340mmのロングスライド機構とすることで、荷物を積みながら定員乗車することも可能。その際にも十分な足元スペースを確保する。

新型デリカD:5のライバルとは
 新型デリカD:5は、Mクラスミニバン「ホンダ ステップワゴン」「トヨタ ノア/ヴォクシー」「日産 セレナ」などの5ナンバーミニバンが直接のライバルとなる。しかしデリカD:5のボディサイズはこれらに比べ一回り大きく、またエンジン排気量も2.4リッター・4WDのみの設定。さらに価格帯もやや上に位置している。そのことから、Lクラスの「トヨタ エスティマ」やLLクラスの「ホンダ エリシオン」「トヨタアルファード」「日産 エルグランド」などの2.4リッター(2.5リッター)版4WDモデルも十分比較の対象となるだろう。
 ボディサイズや価格帯で観ると、ちょうどMクラスとLクラスの間に飛び込んで、独自のポジションを狙った格好だ。

 しかし高い地上高を持つ4WD車、というキャラクターはやはり独特であり、真のライバルはSUVとなるかもしれない。「トヨタ ハリアー」「ホンダ CR−V」「日産 ムラーノ」「マツダ CX−7」のほか、3列シート車を有し価格帯も重なる「トヨタ クルーガー」「三菱 アウトランダー」などは、実際の商談の場でも比較対象となるケースが多いだろう。

代表グレード G-NAVI package(4WD)
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4730x1795x1870mm
車両重量[kg]1780kg
総排気量[cc]2359cc
最高出力[ps(kw)/rpm]170ps(125kW)/6000rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]23.0kg-m(226N・m)/4100rpm
ミッションINVECS-III スポーツモード機能付き6速CVT
10・15モード燃焼[km/l]10.4km/L
定員[人]8人
消費税込価格[万円]313.95万円
発売日2007/01/31
レポート徳田 透
写真和田 清志/三菱自動車工業