一流ホテルならエンジンを止めて欲しい!

 以前このコーナーで、ヴァレーサービスでお客さまにクルマを返すときにエンジン停止をしないのは時代に合っていない、という話をした。しかし六本木ヒルズにあるグランド ハイアット東京でヴァレーサービスでは相変わらずエンジンを掛けたままクルマを返してきた。
 そこでボクは
「クルマを返すときにエンジンを止めてください。安全性、環境性、経済性に悪いだけでなく、都条例のアイドリングストップにも違反しています。」
と話をした。それに対する答えがメールで返ってきたのでここに紹介しよう。ホテル担当者の名前は消しています。

グランドハイアット東京からの返答(1)

菰田 潔 様

平素よりグランド ハイアット 東京をご利用いただきまして誠にありがとうございます。
また、この度は貴重なご意見を賜りました事、厚くお礼申し上げます。

さて、ご指摘いただきましたアイドリングストップの件に関しましてご説明させていただきたいと存じます。

現在ホテルではお客様がホテル玄関にてお車の出庫されている場合は、一旦エンジン停止を行わず、お客様へお車をお渡しさせていただいております。

当然の事ながらお車を出庫する際にお客様がいらっしゃらない場合もございますので、その場合はエンジンを一旦切った状態で、 お客様がお戻りになるまでお預かりをさせていただいております。 またアイドリング中の誤作動による事故へのご指摘につきましては、お車をお渡しする際にギアは必ずパーキングに入れ、 さらにサイドブレーキをかけたかを確認した上でご返却させていただいております。

菰田様よりご指摘いただきました点を真摯に受け止め考慮させていただきました。 ホテルといたしましては、ホテル玄関にて出庫待ちをされているお客様の多くがお車をお渡しするまでの時間が極めて短時間である事もあり、 エンジンを停止する事なくそのままの状態でお車をお渡しする事を希望されていると認識しており、 また、東京都に確認した結果としても、本件のような対応は基本的に条例に抵触するものではない旨の回答を得たことなどから、 この問題については引き続き検討を継続していく必要があるとの認識ではいるものの、少なくとも現時点では、従来の対応を維持させていただきたく存じます。

もちろんお車をお預かりする際に、お客様よりご要望があれば、アイドリングを停止した状態でご返却する等の個別対応はさせていただく所存でございます。

何卒ご理解の上、今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

末筆ではございますが、時節柄、菰田様におかれましては、くれぐれもご自愛下さいますようお祈り申し上げます。


グランド ハイアット 東京
宿泊部
フロントサービス マネージャー
○○○○

グランドハイアット東京の返答を受けてのメール

それに対するボクの返事がこれだ。

○○さま

菰田潔です。

メールでのお返事ありがとうございました。
納得はしませんが、貴ホテルのヴァレーサービスについての考え方としてお聞きし、承知いたしました。

これからの時代はホテルとしてお客さまを上回る考え方を持っていることが、お客さまが付いてくることにつながるのではないかと考えます。
アメリカではセキュリティの面からお客さまにキーを渡すケースが多いように思います。
当然エンジンは止まっています。
欧州でもエンジンを止めてお客さまに渡します。
特にドイツはアイドリングしていることは、騒音防止条例違反ですぐに罰金を取られるからということもありますが、これが一般市民の習慣になっています。

クルマには各種の警告灯が付いています。
エンジンを掛けたときに異常がある場合にはそれが点きますが、しばらくすると(30秒ほど)消えてしまいます。 お客さまにエンジンを掛けたまま渡すという行為は、ドライバーが警告灯からクルマの異常を知らされずに走ってしまう危険性をはらんでいます。

エンジンが掛かったままクルマから降りるということは、安全運転義務違反になるはずです。 例えPレンジに入れたつもりでも、サイドブレーキを掛けたつもりでも、いつ走り出すか判らない状態ですから、危険を伴うからです。 東京都ではアイドリングストップの条例ができましたが、こんな細かいストップの積み重ねでCO2を減らすことができます。
ですから貴ホテルのヴァレーサービスは都の条例違反です。

東京都にお聞きになったということですが、どの部署のどなたにお聞きになったのかお知らせください。
時間が短いから良いというのは見解が間違っています。 もしその理論なら短時間ならスピード違反しても良いということになります。

貴ホテルでは1年間に何台のヴァレーサービスをされるでしょうか? お客さまにクルマを渡して、シートベルトをして発進するまでに平均1分くらい掛かると思われます。 もし一日100台とすると1年では36500台。
1分間に20ccを消費すると730リッターもお客さまのガソリンを無駄にしていることになります。 それだけCO2も排出していることになります。 もし1日200台ならこの倍のガソリンをヴァレーサービスの方法によって使ったことになります。 ガソリンが高騰しているいま、それだけホテルのお客さまに損をさせたことになるのです。

六本木に集まる人たちは、もう21世紀の考え方になっていると思います。 ヴァレーサービスでエンジンを止めて渡したとしても、趣旨を理解すれば怒る人はいないと思います。 逆に貴ホテルの先進性に共感してくれると思います。

貴ホテルもエコロジー、エコノミー、セーフティの3つを満足させるサービスをしていただきたいと、心から望んでいます。

グランドハイアット東京からの返答(2)

ボクの問いに対してホテルから返事が来た。

菰田 潔様

お返事が遅くなり大変申し訳ございません。

お問い合わせいただきました東京都の該当部署は 『東京都環境局自動車公害対策部規制課』でございます。

また、ホテルにて1日又は1年間で受け入れているヴァレー台数のお問い合わせに関しましては 大変申し訳ございません、正確な数値に関しましてはお答えいたしかねますのでご了承いただきますようお願い申し上げます。

暑い日が続いております、菰田様におかれましては、くれぐれもご自愛くださいますようお願い申し上げます。


グランド ハイアット 東京
宿泊部
フロントサービス マネージャー
○○○○



 エンジンを掛けたままクルマから降りる習慣を止めさせるためには、どうしたらよいのだろうか。