記者発表会で行なわれた、公開実験の様子

 7月12日、神奈川大学横浜キャンパスにて、「スーパー・エマルション燃料開発」についての記者発表会が行なわれた。「スーパー・エマルション燃料」とは、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)、二酸化炭素(CO2)など有害ガス排出量が大幅に削減できるという未来環境対応型燃料だという。

 今回発表されたのは、神奈川大学の産官学連携プロジェクトチームの中心メンバーである工学部田嶋和夫教授の『三相乳化技術』の研究・開発により、国土交通省の時期排出ガス規制をクリアする画期的な『スーパー・エマルション燃料』を開発し、実車を使った実証実験などにより、その環境効果・効能を確認したということ。
 ちょっと難しいので、そもそも【乳化】・【エマルション】とは何かというと・・・

【乳化】とは?
油と水のように、互いに混ざり合わない液体の一方を微粒子にして他方に分散させること。

【エマルション(乳濁液)】とは?
互いに混じりあわない液体の一方が、微細粒子となって、他方の液中に分散・浮遊している状態のこと。

新乳化技術により誕生した「スーパー・エマルション燃料」の効果は?

田嶋和夫教授

 記者発表会では、田嶋教授によるプレゼンテーションが行なわれた。
 今回新規に開発された「三相乳化法」は、本来混ざりにくい水と油を混ぜる際に、界面活性剤分の吸着による従来型乳化法とは違った、粒子の界面付着による画期的な乳化法。分かりやすく言うと“水と油をきれいに混ぜ合わせて、なおかつ乳化した状態を長時間持続させる”といった新技術となる。水と油を混ぜることにより燃費が向上する「スーパー・エマルション燃料」は、この界面活性剤を必要としない新技術「三相乳化法」を用いて開発されたという。

色々な油でつくったスーパー・エマルション燃料

 水と軽油を混ぜる際にわずかなひまし油を入れることで、ひまし油の微粒子が水と軽油の分子を結合する役目を果たして均一に乳化されることにより生まれた「スーパー・エマルション燃料」は、結果として10〜15%の燃費向上やNoxなどの有害物質の排出の大幅削減、PM値については20分の1以下という劇的な削減を実現したとのこと。

実車走行後のドラムフィルター

 また、気になる走行性能については、「スーパー・エマルション燃料」による30tダンプの実車走行試験が行なわれ、「スーパー・エマルション燃料」を使用した場合でも一般的な運転性能・走行性能を確認したという。もちろん、Noxやスモークの大幅削減も確認されていて、会場には、実車走行後のドラムフィルターも展示された。右側がスーパー・エマルション燃料を使用して7回走行したもの、左側が軽油を使用して3回走行したもの。その差は一目瞭然。

公開実験

 発表会では、エマルション燃料創製の公開実験も行なわれた。

エマルション燃料創製の公開実験
エマルション燃料創製の公開実験
エマルション燃料創製の公開実験
エマルション燃料創製の公開実験
エマルション燃料創製の公開実験
エマルション燃料創製の公開実験
 

 「スーパー・エマルション燃料」は、環境面での優位性のみならず、10〜15%程度の燃費向上、CO2の削減が可能となり、京都議定書の目標値達成に大きく寄与するとされている。さらに、三相乳化法により生まれたスーパー・エマルションは、燃料分野以外(香粧品工業、食品工業、医薬・農薬工業など)への応用研究が進められている。

 現在のところ、大型の建設機械や船舶、大型発電機などへの適用が有望とされている。気になる乗用車への実用化については、まだまだ未知数。自動車メーカーや燃料メーカーなどのインフラへの対応が今のところ大きなハードルとなっている。ただ、大型のディーゼルエンジンを使用する企業が積極的にスーパー・エマルション燃料を使用すれば、大幅なCO2削減になることは事実。大学、イチ企業のワクを超えて、国や業界団体などを巻き込んだ開発が望まれるだろう。

( 写真/レポート:CORISM編集部 )