VW パサート

【スタイル】息の長いデザインを求めた究極のスタンダード

 VW(フォルクスワーゲン)というとすぐにゴルフをイメージしてしまうが、パサートも1973年からの長い歴史を持っている。サンタナと呼ばれた時代もあったが実質的に新型パサートは6代目に当たる。ポロ、ゴルフ、ジェッタ、パサートの順にサイズが大きくなるが、VWブランドとしてはヒエラルキーではなく、横に広がりを持ったクラスレスを狙っている。
 パサートはセダンとヴァリアント(ワゴン)の2種類のボディを持つ。L4785、W1820、H1490、WB2710がセダンの寸法だが、ヴァリアントはHが1530になる。
 エンジンは直列4気筒2リッター直噴でNAとターボとV型6気筒3.2リッターNA直噴の3種類が用意される。どれもティプトロニック付き6速AT(V6はDSG)が組み合わされる。V6は4モーションと呼ぶフルタイム4WDになる。
 タイヤは2リッターNAが215/55R16 97W、ターボとV6は235/45R17 97Wを履く。
 クローム製ワッペングリルは好き嫌いがあるかもしれない。でもボクはいいと思う。初めは違和感を持った人でも、数年経って見慣れてくるとパサートのアイデンティティになっていることに気付くはずだ。VWのデザイナーはライフの長いデザインを目指しているのだ。

VW パサート
クリーンでありながらダイナミックなフロントマスクを実現。特にユニークなヘッドライトデザインは印象的だ。

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エッジの効いたショルダーラインを特徴とするリアスタイルはセダンであっても、若々しく上品な造形である。またLED式のテールランプも採用。

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フロントマスクこそ変わらないワゴンであるが、佇まいがリゾートチックで贅沢な雰囲気。これが外車ワゴンの特権というものか?

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ワゴン化をしながらも、セダンのデザインテイストをうまく踏襲しているのは立派。大柄なボディを携えながらも、引き締まっていてスマートさを感じる。

【インテリア】ゴルフのシートのほうが好き!

 最近のVWのインテリアの質感の高さは目を見張るものがある。ルーフやドアの内張りに高級感があるし、ウッドパネルの艶の出し方もうまい。スイッチひとつひとつが丁寧に作られていて、同じプラスチックでも見た目は良いし、操作感も遊びがなくしっかりとした手ごたえが気持ち良い。
 フロントシートはゴルフのシートの方がボクは好きだ。パサートのも標準以上のレベルにあり悪くないが、シートバックの上部に少しゆとりがありホールド感が緩い割にクッション部が小さめに感じるからだ。
 安全性に関して、リヤシートは3人分の3点式シートベルトと3人分のヘッドレストがちゃんと付いているので合格だ。
 マルチファンクションインジケーターは運転中でも簡単なスイッチ操作で、燃料消費量、平均速度、運転時間などが確認できるのでエコドライブのチェックに便利だ。
 エアコンは左右独立の温度コントロールができる高級なものだが、エンジンと止めてもヒーターが利く余熱暖房のRESTスイッチがないのは残念だ。

VW パサート
VW車は全体的に高品質なインテリアを特徴としているけれど、フラッグシップのパサートはその極地とも言うべき仕上がりを誇る。

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シフトゲートは一般的なストレートゲージ&レバースタイルになっているものの、シフトブーツやメッキクラスターの採用でスポーティ&プレミアムを実現している。

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メーター周りを見ると、今までのドイツ車には見られなかったような木目の使い方である。もちろん豪華なのだが、どちらかと言うと英国車みたいだ。

VW パサート
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【走り&メカ】キビキビとした驚きのハンドリング

 試乗会で最初に乗ったのはパサート・ヴァリアント2.0T(インタークーラー付きターボ)である。走り始めてすぐに一回り小さいクルマに感じた。これは良い意味である。つまりハンドル応答性に遅れがなくダイレクトな反応なのでキビキビしていて、スポーティな走行ができるからだ。FFなのにフロントヘビーな印象はなくとても軽快だ。これはクルマが軽々しいという意味ではなく、ドライバーと一体感を持ってドライビングできるということだ。
 6速ATは高速道路を使ってドライブしたら相当良い燃費を記録しそうだと思った。それは100km/hではたった1900rpmしか回っていないからだ。ちなみに5速でも2400rpm、4速は3300rpm、3速4400rpmである。1900rpmだとトルク不足が心配かもしれないが、280Nmという最大トルクは1800−5000rpmで発揮されるからなんの心配も要らない。もちろんアクセルペダルを踏み込めばキックダウンして低いギヤですぐに鋭い加速をすることも可能だ。このときも6速でクロスレシオ(ギヤ比が近い)だからスムーズである。
 つぎに乗ったのは2リッターNAエンジンのパサート・ヴァリアント2.0。ターボに乗ったあとだけにエンジンの力不足を感じるかと思ったら、まったく不満がなかった。200Nmを3500rpmで発揮するから1510kgの車重を引っ張るには不足はない。もちろんターボに比べてギヤレシオが低くなっていて100km/hでのエンジン回転数は2400rpmだった。これなら普段の走りに充分である。
 16インチタイヤを履いているので乗り心地が良かった。17インチを履くターボも揺すられることが少なく悪くなかったが、16インチはハイトが高いだけあって当たりがソフトになったのだ。
 最後に乗ったのはパサートV6 4モーションである。これは3ボックスセダンである。フロントのオーバーハングに3.2リッターV6エンジンを搭載しているから、クルマは速いかもしれないがハンドリングのキビキビ感は損なわれているだろうと予想したが、それは杞憂だった。ハンドルの応答遅れはなく、コーナリングもノーズがクイクイとインに向かっていくので重量級なのにスポーティなドライビングが可能だ。コーナリング中は踏み込めば膨らみ、戻せばインに切れ込むというアクセルコントロールが利くので、ハンドルに頼らない高度なドライビングもできる。
 V6 3.2リッターの高級車の割にはタイヤからのロードノイズとパターンノイズ、それに風切り音も聞こえた。でもボクはこのハンドリング性能を持っているなら許せる。
 パーキングブレーキは電動式なのでスイッチで操作させる。エンジンスタートもスイッチを押す。しかしここまで進歩したのに自動スタート(一度押すだけで始動する方式)になっていないのはもったいないと思った。
 一回り小さなスポーティなクルマに乗った感じのパサートのハンドリング性能に驚いたのだが、その価格にも驚いた。これは国産車がうかうかしていられない。

VW パサート
2リッターツインカムFSIターボエンジンは200馬力の最高出力を達成しており、強力な動力性能を発揮。そして燃費性能に大変優れているのがポイント。
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フラッグシップとなる3.2リッターV6 FSIエンジンはVW独自の狭角V型レイアウトを採用した新開発の直噴ユニット。250馬力を発生するマルチシリンダーエンジンである。
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大きさを感じさせない良好なハンドリング、圧倒的なパワー感などが非常に高いドライビングプレジャーを実現。VWの新しいイメージと解釈していいだろう
VW パサート
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VW パサート
代表グレード
ヴァリアント 2.0
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
4785×1820×1530
車両重量[kg]
1510
総排気量[cc]
1984
最高出力[ps(kw)/rpm]
150(110)/6000
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]
20.4(200)/3500
ミッション
6AT
10・15モード燃焼[km/l]
11.0km/l
定員[人]
5
税込価格[万円]
335
発売日
2006.4.11
レポート
こもだ きよし
写真
佐藤 靖彦
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達人プロフィール: こもだ きよし
職業:モータージャーナリスト
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)、JAF交通安全委員会委員、セーフティドライビング・インストラクター・アカデミー会長、警察庁運転免許制度に関する懇談会委員、BMWドライバー・トレーニング・チーフインストラクターなど...

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