ライター紹介

自動車ライター&エディター

近藤 暁史 氏

某自動車雑誌の編集者から独立。その前はファッションエディター(笑)。とにかくなんでも小さいものが好きで、元鉄チャンで、今ではナローゲージを大人買い中。メインのクルマは19歳の時に買ったFIAT500。エンジンのOHからすべて自分でやり、今やもうやるところがない状態でかわいがっております。表向きは自動車ライターながら、業界唯一の省燃費グッズの評論家というのがもうひとつの顔。

3.5リッターサルーンを対決させて、日独対決。今回はさらにクラスを上げて、V8搭載のLクラスサルーン対決だ。ドイツ代表はBMW540i。対する日本代表は日産が満を持して投入してきたフーガ450GT。排気量的には540iが4リッターで、フーガは4.5リッターとなり、500ccの差が生じてしまっているが、このクラスともなる単純に排気量(=パワー)の差ではないだけに、問題ではなし。むしろ走りも含めた、"質"をメインに見ていこう!

BMWを代表するアッパーミドルクラスのセダンが5シリーズだ。いつの時代も性能やパッケージング、さらには価格とのバランスのよさで人気を博してきた。5代目にあたる現行型が登場したのは2003年のこと。角張ったスタイルから一転して、7シリーズなどですでに取り入れられていた動物をモチーフにした丸みを帯びたデザインへと変更され、より高級感を醸し出すのに成功している。
エンジンによってグレード分けされているのは今まで通りだが、今回、対決に連れ出した540iは4リッターV8搭載のモデルで、上には550i(4.8リッターV8)が。さらに下には525i(2.5リッター直6)と530i(3リッター直6)がそれぞれラインナップされている。BMWといえば、「シルキーシックス」と呼ばれるように直6に定評があるのだが、今回はV8だけにどう評価されるのかが興味あるところだ。
ミッションについては6速ATで、駆動方式はもちろんFRを採用。スポーティサルーンの世界的なベンチマークといっていいだけに、あらゆるフィールドで気持ちのいい走りが楽しめる。

540i
ボディサイズ (全長x全幅x全高) 4855x1845x1470mm
車両重量 1780kg
エンジンタイプ V8DOHC
総排気量 3999cc
最高出力 306ps(225kW)/6300rpm
最大トルク 39.8kg-m(390N・m) /3500rpm
ミッション 電子油圧制御式6速AT
10・15モード燃費 7.6km/l
サスペンション (前/後) ストラット /インテグラルアーム
ブレーキ (前/後) ベンチレーテッドディスク
税込価格 850.0万円

セドリック/グロリアの後継車として登場したフーガ。高級スポーツセダンの血統もしっかりと受け継いでおり、しっとりとしたサルーンテイストを強調したXV系と、日産らしいスポーティな味付けのGT系の2ラインナップとなっているのもセド/グロ時代と一緒である。
造りに関しては押し出しの強い、メリハリの利いたデザインは高級感と躍動感をうまく両立したもの。インテリアに関しても質感は高く、ゆったりとしたパッケージングが自慢だ。
今回、対決のステージに乗せたのは2005年に追加された450GTで、そのグレード名からわかるように4.5リッターを搭載した日本車としてはかなり大きな排気量を誇るモデル。追加登場というのが唐突な印象を受けるが、聞けば開発当初より北米向けとして想定されていたとのことで、それが国内でも発売されたというのが正しい。V8ならではの余裕のトルクと滑らかな吹けは、国内クラス最強の333psを実感させる。ただしミッションが5速ATというのは対決となると、ハンデになることも

フーガ450GT
ボディサイズ (全長x全幅x全高) 4900x1795x1510mm
車両重量 1780kg
エンジンタイプ V8DOHC
総排気量 4494cc
最高出力 333ps(245kW)/6400rpm
最大トルク 46.0kg-m(455N・m) /4000rpm
ミッション 電子制御式5速AT
10・15モード燃費 8.1km/l
サスペンション (前/後) ダブルウイッシュボーン /マルチリンク
ブレーキ (前/後) ベンチレーテッドディスク
税込価格 554.4万円

鷹をイメージしたというフロントマスクに対して、リヤもじつに動物的なイメージで曲線を中心にまとめられている。

排気量は少々異なるものの、どちらもV8を搭載。パワーに関しても大きく差はなく540iの306馬力に対して、フーガは333馬力を発生する。

重厚感を強調したリヤビュー。存在感はかなりのもので、450GTのみマフラーが両サイドに出るデュアルパイプになる。

タイヤサイズは245/40R18と、このクラスにしては標準的なサイズだ。しっとりと粘る足回りはBMWらしい味付け。

ウッドパネルを取り入れているものの、全体のイメージに派手さはない。全体の造りは小さくまとまっていて、操作性はいい。

フーガのアピールポイントが純正では日本初の19インチである245/40R19という大径タイヤ。スポーツパッケージに標準。

フォーブと呼ばれるオレンジ系の明るい内装色は開放感あふれており、若々しくもある。こちらもウッドを採用。

BMWはいつの時代も多段化に意欲的であり、いち早く6速ATを搭載した。制御は緻密で各ギヤ間のつながりも気持ちいい。

上に7シリーズがあるからか、外観からイメージするほど、シートに座ってみても広大な感じがしない。サイズ的にもまずまず。

小ぶりなシフトだが、デザインや操作感はかなりドイツ的。ショートストロークで気持ちよく操作できる。

サルーンという言葉がピッタリとくる広大な室内。とくにリヤシートは余裕タップリでゆったりとくつろげる。

ワインディングから高速クルージングまであらゆるステージで対決。BMWの限界は高く、不安を微塵も感じさせない。その足まわりを体験してしまうと、フーガは電動パワステの制御から始まって、サス全体の煮詰めもまだまだと感じてしまうほど。エンジンはパワフルで気持ちいいだけに残念。