3.2リッターCDIエンジン

ヨーロッパではデーゼルエンジン車が主流を占める!

 最近でこそ、ヨーロッパの自動車メーカーもハイブリッド車に対する取り組みを強化しているが、それでもまだ環境対策の本命はディーゼル車であると考えている。ハイブリッド車にしてもディーゼルエンジンと電気モーターの組み合わせによるハイブリッドが重視されていることからもそれが分かる。
 一般的なヨーロッパ人も、環境に優しく、燃費性能に優れていて、スポーティであることなどから、ディーゼル車を強く支持している。フランスなどではディーゼル比率が50%を超えると言われるが、ドイツでもメルセデス・ベンツやBMWなどの高級車でディーゼル車の比率が高まっているという。

ほとんどディーゼルとは気が付かない。

メルセデス・ベンツC320CDI

 そんなヨーロッパの状況を受けて、メルセデス・ベンツがまず日本にディーゼル車を導入することを表明した。まだ日本への輸入は始まっていないが、近くEクラスのディーゼル車の輸入が始まる予定だ。
 今回はそのディーゼル車に試乗する予定だったが、クルマの用意ができなかったとのことで、Cクラスのボディに同じエンジンを搭載したC320CDIに試乗した。
 全体的な印象としては、ガソリン車との違いがあまりないことが上げられる。普通のユーザーが何も知らされずに乗せられたら、このクルマがディーゼル車であることに気付かないのではないかと思えたほどだ。
 違いを細かく指摘するなら、アイドリング時の車外騒音がやや大きいことでディーゼル車に気付くとか、あるいはアクセルを踏み込んでエンジンを回したときにはガソリン車とは異なる騒音レベルになるなど、音の違いがまずある。ただ、低回転域を使って市街地を走ったり、あるいは高速道路をクルージングするような状態では音の違いにも気付かないほどだ。

中速域の加速はディーゼルが速い!?

メルセデス・ベンツC320CDI

 またタコメーターを見るとエンジンの回転上限が抑えられているので、これをみればディーゼル車であることが分かるし、発進加速に限ればディーゼル車はガソリン車に劣る面がある。逆に80km〜100kmなどの区間加速はガソリンよりディーゼルのほうが速いそうで、このあたりがヨーロッパでの“ディーゼル車はスポーティ”という印象につながっているという。
 ATはメルセデス・ベンツのティップシフト付きの6速AT。最新の7Gトロニックではないが、6速ATの滑らかさもディーゼルのイメージを良くすることにつながっている。

デメリットが見当たらないメルセデスのディーゼルエンジン。

 C320CDIに試乗した限りでは、ディーゼル車であることによるデメリットはほとんどないと言っても良いくらいだ。
 これで燃費が良くて結果的に経済的な走りが可能になるというのなら、ガソリン車と区別することなく、十分に選択肢のひとつとして数えられる。

ディーゼル車の偏見を取り去るためにも、違法車や整備不良車は徹底的な規制が必要。

 日本では、トラックや1BOXのライトバンなどが、真っ黒い煙を吐いて街中を走るシーンを良くみかける。これらのディーゼル車は、整備不良であったり、違法改造をしていたり、あるいは不正製油を給油するなど、かなりでたらめな使われ方をするクルマが多いことも、真っ黒な排気ガスを吐く理由だ。
 これらのクルマがディーゼル車のイメージを悪くしているワケで、それが乗用車にも影響を与えているのが実情だ。
 ディーゼル車を正しく理解させるためにも、悪質なトラックやライトバンに対して、行政のしっかりとした規制を期待したい。

●PHOTO:佐藤靖彦

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達人プロフィール: 松下 宏
職業:自動車評論家
中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員としても、その信念は変わらない。そのため、大本命といわれている車種さえ外して...