ミシュランのスタッドレスタイヤは昨年、日本専用の「DRICE」からグローバルブランドの「X−ICE」へと大きく進化した。そして今年の7月、アイス性能とドライ性能の両立を目指したミシュランのスタッドレスタイヤ創りを再確認するため、南半球のニュージーランドまで飛んだ。雪の上と氷の上、さらに乾いた道路もじっくりと走ってきたのでそのリポートをしよう。
ニュージーランド南島のクィーンズタウンからひと山越えて1時間ほど走ると、我々が滞在したワナカ湖畔に着く。その道の途中の山の頂上にスノーファームと呼ばれる冬道のテストコースがある。標高1500mあるから暖冬でも雪が残っている。
まずはパイロンで作られた雪道コースをゴルフで周回する。ここには「DRICE」と「X−ICE」の両方が用意してあって、その比較ができた。「X−ICE」の方がハンドルを切り込んでいったときの追従性が良いと思った。つまりハンドルを切り込んでいったときにも逃げないで曲がってくれるのだ。だからドライバーが行きたい方向にハンドルを切ればいいわけで、運転がラクになった。
別の雪道コースを今度はBMW3シリーズで走った。「DRICE」のハンドリング性能も楽しめたが、「X−ICE」はリヤのグリップがアップしてややアンダーステアが強くなったが、常に安定した走りができた。
氷の路面も走った。こちらはアテンザ。氷温が高くなり水が浮いた最悪の状態だった。ツルツル滑って発進できないかと思ったが、ていねいなアクセルコントロールで発進することができた。ゆっくりしたハンドル操作にも反応してくれ、パイロンスラロームもできた。
こうして「X−ICE」のアイスとスノー性能を確認したところで、翌日は一般道に出た。一般道には雪も氷もなく、いたって平和なドライブが可能だった。その背景には「X−ICE」の存在が光っている。つまりドライ路面でフニャフニャしたり腰砕けになったりすることなく、ドライバーはタイヤのしっかりとしたグリップを感じることができるのだ。
夏タイヤと錯覚しそうになるしっかりしたグリップ感は、「DRICE」から受け継いだクロスZサイプと呼ぶ3次元の凹凸を持つ細いナイフカットのような溝がその一翼を担っている。
さらにトレッドコンパウンドは表面がソフトで氷上性能に優れ、内部はしっかりと固くウェットやドライ路面で威力を発揮する新開発のゴムを採用している。ゴムが減っていっても常に路面と接触する表面だけがソフトになっているから、その面では翌年も性能低下の心配をしなくても済むようになった。
2年目に入ってサイズバリエーションも増え、多くのクルマに履けるようになった。「X−ICE」になってから、北欧やカナダ、中国などにも輸出するようになった。
「X−ICE」はミシュランが創った世界に誇れるスタッドレスタイヤである。