BMW 630i
630i

先に登場した645Ciとは違いBMWの至宝とも言える直6エンジンを搭載した。

630i

スタイリングは645Ciと大きく変わらないが、その車重は100kg以上も軽い。

美しい6シリーズにシルキー6が追加!

 世界の自動車市場のなかでも、その美しさでひときわ存在感を放つBMW6シリーズ。ラグジュアリークーペの新機軸を打ち立てたこの6シリーズに、630iが追加されることになった。ここでは新たに誕生した美しいクーペについて報告しよう。

 まず、630iで目に付くのはその麗しいボディデザインだ。1937年に発表となった歴史的な名車327クーペに通じるといわれるプロポーションのスリーサイズは全長4830mm×全幅1855mm×全高1375mm。先に登場した645Ciと同サイズであり、フロントからリアに向かって伸びやかにシェイプされたデザインも同じだ。しかし、車両重量は645Ciに比べ大幅に軽くなっている。というのも630iはスチールや、アルミニウム、その他素材を使い分ける”インテリジェント・ライトウェイト・テクノロジー”を採用することにより、130kgもの軽量化を実現しているのである。

 では、ボディ重量以外でこの630と645Ciは何が違うのか。それはエンジンである。645Ciの4.4リッター・V8に対し、630iにはBMWの伝家の宝刀が搭載されているのだ。数あるエンジン形式の中で、最もバランスに優れているといわれる直列6気筒エンジンを乗用車用に生産しているのは、もはや世界中にBMWだけ。このシルキー6と称される心臓が630iのボンネットの下には隠されているのである。

 BMW630iに搭載されているエンジンは新世代の直列6気筒エンジン。この世界ではじめてクランクケースにマグネシウムとアルミの合金を使用したユニットは、鋳鉄製より57%、アルミニウムよりも24%も軽量に仕上がっており、車重の軽量化に一役買っている。またそれだけでなく、空気の流入量調整にはスロットル・バタフライを使わず、インテーク・バルブのリフト量を無段階に変化させることで調整する第二世代のバブルトロニクを採用している。あわせてエンジン回転数に応じてインテーク/エキゾーストのバルブタイミングを無段階で調整するVANOS(バーノス)も採用することにより、極上の回転フィーリングを持つシルキー6によりいっそうの滑らかさを追加しているのである。もちろん、これらの機能は258馬力という高出力以外にも、10.15モードでリッター8.7kmという低燃費まで実現しているのだ。
さすがにBMWの至宝シルキー6の新世代モデルなだけはある。

 しかし、仕掛けはこれだけではない。630iは電動式のパワーステアリングに追加して、世界で初めて電動式のウォーターポンプも採用したのだ。一般的なエンジンであればパワステもウォーターポンプもベルトを介し、エンジンの回転を動力として作動するアイテム。それだけ、エンジンの足かせとなっていた個所だ。それがなくなったのである。燃費も、最高出力も、そして回転フィーリングも格段によくなっているというのは、自明の理である。また、BMWはそれだけでなく、エンジンの回転数とは独立して適切な量の冷却水を供給するようにし、エンジン効率を大幅に上昇させているのである。まさに、世界屈指のエンジン・コンストラクターBMWの面目躍如といった感じだ。

 サスペンションに関してはフロントがダブル・ジョイント・スプリング・ストラット式コイル・スプリングで、リアがインテグラル・アーム式コイル・スプリングと645Ciと同じである。トランスミッションは645Ciが6速SMGなのに対して、630Ciは6速ATでとなっている。

 新世代の直6エンジンを搭載したBMW630i、予約注文は’04年11月20日より開始し、’05年1月をめどにデリバリーを開始する。

代表グレード
630i
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
4830×1855×1375
車両重量[kg]
1610
総排気量[cc]
2996
最高出力[ps(kw)/rpm]
258(190)/6600
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]
30.6(300)/2500-4000
ミッション
6AT
10・15モード燃焼[km/l]
8.7
定員[人]
4
税込価格[万円]
852
発売日
11月20日
レポート
神田卓哉
写真
BMW AG