「ユーザー車検とは?」「自分でもできるの?」など興味があっても分からないことが多くて難しいイメージのため、ハードルが高いと感じるユーザー車検。
自身でもプライベートではユーザー車検を活用している現役の整備士が、ユーザー車検時に知っておきたいポイントについてまとめたので、ぜひ参考にしてください。
- ユーザー車検の概要
- ユーザー車検で気を付けたいパーツ
- ユーザー車検前に予約や事前点検を済ませておこう
- ユーザー車検当日の流れ、所要時間
- ユーザー車検で不合格になってしまったら
- 無理をしてユーザー車検にチャレンジするのは禁物
- 整備士のまとめ
- norico編集部のおすすめ記事
ユーザー車検の概要
車検は、乗用車であれば2年に一度受けて合格しなければ公道を走行することができない「制度」のことです。(新車時は3年)
一般的に車屋さんに車検を依頼すると、ここに「車検のための点検・整備(24ヶ月点検)」がプラスされます。
ユーザー車検とは、制度である車検に合格するための検査を、ユーザー自身が陸運局にある車検場に持ち込んで実施することを指します。
車屋さんに依頼するのと比べて費用面で大きなメリットがありますが、ユーザー車検が実施できるのは車検場が稼働している「月〜金」の平日のみなので注意が必要です。
ユーザー車検で気を付けたいパーツ
ユーザー車検をするときに、車検に合格しない原因になりやすい箇所を以下の一覧にまとめました。
気を付けたい箇所 | 車検不合格になる原因の例 |
---|---|
タイヤ | 残り溝不足(1.6mm以下) |
点検ダイヤルステッカー | 期限切れのダイヤルステッカーを貼ったままにしてる |
フロントガラス・ フロントサイドガラス |
吸盤の貼り付け、ステッカーの貼り付け、フィルムの透過率70%以下、サンシェードの取り付け等 |
ヘッドライト | バルブ切れ、光軸ズレ、光度不足 |
灯火類(ヘッドライト除く) | バルブ切れ、光り方がNG |
オイル漏れ | ガスケット・シール不良や劣化等 |
LLC漏れ | 部品の劣化や不良等 |
ブーツ類の破れ | ドライブシャフトブーツ破れ ボールジョイントブーツ破れ |
ウォッシャー機能 | ウォッシャー液が入っていなくて、出ない |
ワイパー | ゴムの劣化で拭き取りが悪く、視界確保が困難 |
シートベルト警告灯 | シートベルトの装着・非装着に合わせて、 警告灯が消灯・点灯しない シートベルトキャッチにアダプターをつけているなど |
エンジンチェックランプ | 様々な原因が考えられる。要コンピュータ診断 |
車高 | 最低地上高が9cm以下 |
例えば、フロントガラスの端に交通安全の御守りを吸盤で貼り付けていると車検に通りません。身近なものでも、状態によっては車検に不合格となるものがたくさんあるので注意が必要です。
ユーザー車検前に予約や事前点検を済ませておこう
いきなり車検場にユーザー車検で持ち込んで車検をすることはできません。
必ず守っていただきたいルールをお伝えします。
事前点検の重要性
先ほど解説したように、車検の合格の可否に関わってくるパーツには様々なものがあり、中には素人が判断するには難しいものもたくさんあります。
そのためユーザー車検で持ち込む場合でも推奨されている「24ヶ月法定点検」を整備工場で実施することをおすすめします。
事前に車の状態をプロの目で確認してもらい、必要箇所を整備してもらうことで、ユーザー車検で持ち込んだときに不合格となるリスクを大幅に低減できます。
また、車検場は普段から混み合っており、検査レーンには常に列ができています。
不完全な状態でユーザー車検に持ち込み、スムーズな検査業務の妨げになって多くの人に迷惑を掛けないためにも、事前点検を実施するようにしましょう。
ユーザー車検の受検には予約が必須
ユーザー車検を受けるときには「自動車検査インターネット予約システム」でアカウントを作成して、事前予約を取ることが必須です。
(予約システムのリンク:乗用車、軽自動車)
検査を受ける車検場の指定と、ラウンド(時間)を指定をして予約します。
予約は2週間前(15日前)からおこなうことができます。
エリアや時間帯によっては早期に予約が埋まってしまうので、早めに予約を取るようにしましょう。
ユーザー車検当日の流れ、所要時間
車検当日の流れと所要時間について簡単にまとめました。
車検当日の流れは書類関連→検査場での検査
ユーザー車検を受けるときは、事前に車検当日の流れを確認して理解しておくことが大切です。以下はユーザー車検の当日、車検場に到着してからの流れです。
- 現在の走行距離を控えておく
- 車検証、自賠責保険証明書を車からおろして手元に持っておく(※自動車税納付直後だとシステムに納付の事実が反映されていないことがあるので、自動車税の納税証明書も用意しておく)
- 総合窓口で、ユーザー車検に必要な書類を一式もらって、必要な箇所に記入
- 自動車重量税、検査手数料を納付するための印紙・証紙を窓口で購入し、指定の書類に貼り付け
- 次の2年間分の自賠責保険に継続加入する(事前に加入したものを用意しておくのもok)
- ユーザー車検受付窓口にて、書類の不備の確認と予約番号の確認を受ける
- (初めてのユーザー車検や、不安な場合には検査レーンをあらかじめ見学し、検査レーンでの流れや機器の操作等を把握してから、実際に検査レーンに並ぶことを強くおすすめします)
- ⑥で書類等に問題がなければ、車に乗って検査レーンに並び、車検を受ける
- 問題なくすべての検査に合格したら、車検証交付受付窓口に書類一式を提出する
- (不合格となった場合には該当箇所を修正してから再度、検査レーンに並んで検査を受ける)
- 交付された新しい車検証を受け取る
- 古い車検ステッカーを剥がして、新しく交付されたステッカーに貼り替える
ユーザー車検の所要時間は最短で1時間以内〜数時間、半日以上かかることも
ユーザー車検でもっとも時間が掛かるのは、検査場での検査レーンの順番待ちです。
また、一発で合格するかどうかでもかなり時間が左右されます。
そのため、慣れている人であれば到着からすべて完了するまで早いときは1時間かからないこともありますが、3月の繁忙期など混み具合によっては2時間以上かかることもあります。(一発で合格できた場合)
ユーザー車検を受ける場合は再検査の可能性も考慮して、できれば丸一日、最低でも半日はスケジュールに余裕を持つことをおすすめします。
ユーザー車検で不合格になってしまったら
ユーザー車検で不合格になった場合、当日中は2回まで再検査が可能です。
不合格箇所を修正したうえで、再度検査レーンに並びますが、その際に改めて申請などをする必要はありません。
車検場の近くにあるテスター屋を活用しよう
不合格による再検査のリスクを減らすためにも、車検場の近くにあるテスター屋を活用することをおすすめします。
テスター屋は車検を受ける前でも、受けて不合格になった後でも利用できます。
費用相場は地域やお店によって大きく異なります。
わたしの住んでいる地域では、ヘッドライトの光軸調整のみだと1,000円前後で実施してくれます。
わたし自身がユーザー車検に行くときは、再検査のリスクを極力減らすためにも、車検場に向かう前に必ず光軸調整だけはテスター屋で実施してもらいます。
これは新しい車でも同じで、実体験として光軸検査で不合格となるパターンがもっとも多いためです。
専業のテスター屋の有無や車検場からの距離などは地域によって異なるので、当日困らないように事前に場所の確認をしておくようにしましょう。
整備工場での整備か必要になったらどうする?
光軸やサイドスリップ、灯火の球切れなどであればテスター屋ですぐに対応してもらえますが、オイル漏れや足廻りのブーツの破れ・ガタの発生といった内容で車検が不合格になった場合は、当日のユーザー車検を受けることを諦めるのが懸命です。
これらは整備工場で部品の交換や修理が必要で、部品もその場ですぐに手に入らないことがあります。
また、昨今は整備・メンテナンスは予約制としている工場が多く、すぐに作業してもらえないことも多いので注意が必要です。
限定自動車検査証の発行も視野に入れる
どうしても当日中に車検に合格できず、修理・整備のために乗って帰らなければいけない場合には「限定自動車検査証」を発行してもらう必要があります。
本来、車検に合格できない車は公道を走行してはいけないことが法令で定められています。
しかし、保安基準の不適合箇所を記載した限定自動車検査証を発行した場合に限って、車検証に記載の満了日以内であれば、ユーザー車検を受験した当日を含めた15日以内は公道を走行することが許されます。
あまり馴染みのない制度ですが、公式ページで解説もされているので、お困りの場合には参考にしてください。
無理をしてユーザー車検にチャレンジするのは禁物
車の状態は千差万別です。
特に、低年式・過走行車で普段から認証工場・指定工場のようなきちんとしたお店で定期的にメンテナンスをしていない車を、ユーザー車検で一発合格させることは簡単ではありません。
改造車も同様に難しいでしょう。
これらは、不合格になった場合にテスター屋での作業や、その場での修理・作業で当日中に車検に合格できる状態にすることが難しいためです。
また、運転に自信のない方は検査レーンでのさまざまな運転操作が難しいと感じることもあるでしょう。(実際に検査場内で他車を巻き込む事故が発生しています)
例えば、出費を抑えたいという理由だけで車の状態や自分自身の運転スキルを鑑みずに、ユーザー車検にチャレンジをすることは避けてください。
整備士のまとめ
ユーザー車検そのものだけを見れば、点検費用・整備費用・検査費用を抑えることができるので、整備工場に車検を依頼するのと比べて、掛かる費用は格段に安いです。
しかし、だからと言って点検・整備を疎かにするのは御法度です。
また、ほとんどのメーカーで新車から3年または5年の区切りで新車保証が終了しますが、整備工場に車検を依頼していれば、本来は点検・作業時に見つけられた保証修理が、ユーザー車検だとできない(気付けない)可能性も高まります。
もちろん制度的には誰でも受けることができるユーザー車検ですが、車の状態や個人の運転スキルから考慮すると難しいパターンもあります。
初めてのユーザー車検を考えている場合は、早い段階から入念に下調べや検査レーンの見学をおこない、事前に整備工場で法定点検を受けて万全な状態でチャレンジすることをおすすめします。
norico編集部のおすすめ記事
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。