車検のときに提案される部品の交換やメンテナンスは必要なのか、断っても問題ないのか?
車検は出費の重なるタイミングなだけに、少しでも交換部品を減らして安くしたいのが多くの自動車ユーザーの本音でしょう。とは言っても車に詳しくなければその判断も難しいです。
この記事では車検で必要な交換部品について、車に詳しくない方にもわかりやすく解説します。
車検で交換が検討される部品一覧
車検時に交換が検討される一般的な部品をまとめました。
部品名 | 交換推奨時期の目安 |
---|---|
ブレーキフルード | 1〜2年ごと |
エンジン冷却水(LLC) | 車検ごと (最近の国産車は基本的に長寿命でほぼメンテナンスフリーに近いです) |
ワイパーゴム | 1年ごと(拭き取りが悪くなったら、ゴム切れが発生したら) |
エアコンフィルター | 1年または1万kmごと |
エアエレメント | 3〜4万kmごと |
スパークプラグ | 2万km(ノーマルタイプ、中心電極のみイリジウムタイプ) 5万km〜(中心・接地電極どちらもイリジウム・白金タイプ) |
ドライブベルト・補機ベルト | 5年または5万km〜 |
バッテリー | 3年〜 |
灯火類のバルブ | バルブ切れ発生時、ヘッドライトの光度不足時 |
ブレーキパッド | 走行環境による、ローターを含む場合もある |
タイヤ | 走行環境による、摩耗限度は1.6mm以上 |
足廻りや駆動系のブーツ類 | グリス漏れ、ブーツ破れ(ひび) |
サスペンション(ダンパー) | オイル漏れ、ガタの発生、抜けの発生 |
毎回、車検ごとにブレーキフルードやエアコンフィルターの交換が、タイミング的にも一般的です。
以前はエンジン冷却水もブレーキフルードなどと同様に車検ごとに交換するケースがほとんどでしたが、2000年代以降の新車に充填されている冷却水は長寿命タイプで約10年、距離も10万km以上(中には20万km以上)未交換でも問題ありません。
そのほかバッテリーやタイヤ、ブレーキパッド、スパークプラグ、ドライブベルト(補機ベルト)、エアエレメントといった一般的な消耗品は距離や年数、状態に応じて提案があります。
ものによっては、車検のときにかならず交換しなければいけないわけではありませんが、法定点検のなかでそれぞれの状態の確認をおこなうので、車検時に交換提案されるケースが多いです。
また、新車から7年(3回目の車検)以降を目処に、足廻りのサスペンションの劣化やブーツ類の破れが見受けられるようになります。
場合によっては車検に合格するために、該当箇所の整備が必須となります。(次の項で具体例を解説します。)
車検で交換が必要な部品
問題があった場合、車検に通るために必須で交換しなければいけない主な部品をまとめした。
交換部品 | 車検に通らない理由 |
---|---|
灯火装置 | 光度不足、バルブ切れ、レンズ割れによる灯漏れ 不適切な改造部品 |
タイヤ | 残り溝が1.6mm以下 |
足廻りの各部品 | ブーツ破れによるグリス漏れ ガタの発生、オイル漏れ |
エンジンチェックランプを 点灯させている原因の不具合部品 |
エンジンチェックランプが点灯していると車検に通らない。不具合箇所はセンサーや作動部品など様々なケースがかある |
ラジエラー、ウォーターホースなど | 冷却水が漏れて滴下している |
エンジン関連部品など | オイルが漏れて滴下している |
おおむねここで紹介したものが一般的なものです。
車検時に交換が必須になる身近なものとしては、タイヤや灯火装置が挙げられます。
灯火装置は手を加えて改造しているオーナーも多いですが、それぞれに細かい規定があるので、知らずのうちに車検に通らない状態になっているケースが多いので注意が必要です。
一般的にはバルブ切れでバルブを交換したり、ヘッドライトのレンズが経年劣化でくすんできてヘッドライトの光度不足が発生することの応急処置として、レンズ磨きをするケースががあります。
タイヤは走行上の安全に直結するため、規定値以上の残り溝があることが必須です。
油脂類は漏れがひどく、滴下していると車検に通らないので、修理または部品の交換が必要になります。
足廻りは劣化状態によって整備が必須となるケースがあり、以下に主な具体例を紹介します。
- ドライブシャフトブーツが破れてグリス漏れが発生(対応:ブーツの交換)
- スタビライザーのリンクロッドのボールジョイント部分が破れてグリス漏れ&ガタが発生(対応:リンクロッドの交換)
- サスペンションのロアアームのボールジョイントブーツが破れてグリス漏れが発生(対応:ブーツの交換またはロアアームのAssy交換)
予備整備として車検時に交換が推奨される部品
予備(予防)整備として、車検のタイミングで交換が推奨される主な部品をまとめました。
部品名 | 予備整備が必要な理由 |
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ブレーキフルード | 吸湿性があるため、年数の経過とともに劣化する。 安全なブレーキ性能を維持するため、定期的な交換が必要 |
ワイパーゴム | ゴムが劣化して拭き取り不良になると、雨天時に前方視界不良の原因となるため |
エアコンフィルター | エアコンの臭い予防、清潔の維持など |
エアエレメント | 交換を怠ると、燃費の悪化やエンジン不調につながるおそれがある |
スパークプラグ | 交換を怠ると、燃費の悪化やエンジン不調につながるおそれがある |
ドライブベルト・補機ベルト | 劣化でベルトの山が痩せたりひび割れが発生 酷くなるとベルトが鳴いたり、切れるおそれがある |
バッテリー | 劣化すると急なバッテリー上がりが発生するリスクがあるため |
ブレーキパッド | 安全安心な走行には残量が無くなってからの交換では遅すぎるため、3mm前後の残量での交換が推奨 |
エンジンオイル ミッションオイル ATF・CVTF デフオイル トランスファオイル パワステフルード |
油脂類は使用過程においてかならず劣化するので、必要に応じて適切なタイミングで交換が必要 |
シャシーブラック(防錆塗装) | 塩害のある地域は特に、車の大敵である錆予防が重要 |
以上のように車には、適宜交換が推奨されるさまざまな部品があります。(ここでは細かく解説しきれない部品もあります)
基本的にはトラブルが発生してから交換するものではなく、推奨される交換目安時期や劣化状態を考慮した上での予備(予防)整備提案です。
きちんと予備(予防)整備をすることで、急なトラブルに見舞われるリスクを減らして、安心安全なカーライフを送るサポートをすることが整備工場の務めです。
車検で部品の交換は断っても大丈夫?
車検時の部品の交換は、車検の合否に関わるところでなければ断ることが可能です。
しかし、素人判断できないものも多いので、以下のことを整備工場の担当者に確認し、把握しておくことが大切です。
- 交換しない場合のリスク
- 最低でもいつまでに交換が必要か(時期、距離)
- 車検時以外で交換するときの費用の違い
部品交換の費用の目安
数千円〜で交換できるエアエレメントやエアコンフィルター、1〜2万円掛かるブレーキパッド、5〜10万円の予算が必要なタイヤなど、車検時に必要な部品交換にかかる費用は、ものによって千差万別です。
ここでは、一般的な車検整備での平均費用からおおむねの法定点検や検査費用を抜いた費用を、「部品交換・整備費用」として目安をご紹介します。
また、自賠責保険料や自動車重量税、印紙代等はここに含みません。
【法定点検・検査費用の目安】
- 2万円〜4万円
【部品交換・整備費用の目安(最低限の整備)】
- ディーラー…2.5万円〜
- 民間整備工場….1.5万円〜
【部品交換・整備費用の目安(2回目以降の車検かつ5万kmを超えて消耗品の交換が必要になるケース)】
- ディーラー…4万円〜
- 民間整備工場…3万円〜
これらはあくまで平均的な目安額となります。
バッテリー交換が追加になるだけでも、国産車の場合であれば1万円前後〜4万円前後が追加となるので、車検の事前見積もりなどを活用して、車検にかかるおよその目安金額を把握しておくとよいでしょう。
整備士のまとめ
車検時に提案される部品の交換は以下の3つのパターンに分けられます。
- 車検に通るために必須なもの
- 必須ではないが定期交換を強く推奨するもの
- 安心安全なカーライフのために予防交換が推奨されるもの
整備士の目線では、上記2つに関連する部品は断らずに交換していただきたいです。
必須ではないが定期交換を強く推奨するものは、エンジンオイル、ブレーキフルードといった油脂類や、塩害のひどい地域の場合は防錆塗装などが該当します。
車検にはまとまったお金が必要になります。
タイヤやバッテリーといった金額の大きいものは、車検以外のタイミングに分散させたり、車検の数ヶ月前に事前見積もりをしてもらうなどで、必要な金額をあらかじめ把握しておくことをおすすめします。
計画的にメンテナンスをおこなうことで、必要な部品交換はできる限り必要なタイミングで実施し、安心安全なカーライフを目指しましょう。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。