車の修理どこがいい?状況別の依頼先や費用について整備士が解説

車の修理どこがいい?状況別の依頼先や費用について整備士が解説

車を維持するうえで、日常のメンテナンスはもちろんのこと、不具合修理も避けては通れません。
しかし、どこに修理を任せるのが良いのか、いまいちよく分からない人も多いはずです。
車の修理を出すときに確認すべきことや注意点、状況に応じたおすすめの修理業者などについて整備士が解説します。

車の修理を依頼できる4つの業者の特徴

車の修理は、整備工場を併設したところへ依頼します。
安全安心のためにも、国からの認証を受けていない「未認証工場」への依頼は控えましょう。
ここでは、大きく分けて、以下の4つの業者について特徴を解説します。

  • ディーラー
  • カー用品店
  • ガソリンスタンド
  • 修理工場

ディーラーでの修理

ディーラーは看板を掲げているメーカーと特約店契約を結んでいる、自動車販売会社のことです。中にはメーカー直営ディーラーもあります。
ディーラー最大の強みは、取り扱いメーカーの車種に特化した情報、技術をもとに車のメンテナンスをしてくれる点です。
また、新しい車種の不具合・修理に関しても、全国のディーラーでの修理事例をもとに、スピード感をもって共有される点は、他の業者の追従を許しません。
整備後の保証や対応も充実していることが多く、お店の違いによるサービスの質の違いは、他の業者ほど大きくはありません。
基本的には、解決困難な不具合修理の最後の砦となることも多いです。

カー用品店での修理

カー用品店の特徴は気軽に足を運びやすいところです。
ただし、それぞれの車種に対しての専門性は高くありません。
そのため、複雑な不具合や修理、診断はあまり得意としていません。
ただし、中には特定の車種のメンテナンスやカスタムに強みを持っていることをアピールしているお店もあります。

ガソリンスタンドでの修理

カー用品店と同じく、身近な存在であるガソリンスタンドでも車の修理を行なっているところがあります。
馴染みのスタッフがいれば、修理の相談や依頼もしやすいでしょう。
修理に携わるスタッフが少数であることが多く、お店によって技術力に大きな差があるのが特徴です。
また、複雑な修理などには対応できないこともあります。

修理工場

いわゆる「まちの車屋さん」「モータース屋さん」と呼ばれるところです。
それぞれが個人経営なので、「技術・知識力・整備費用・修理日数」は、工場によってもっとも大きく異なります。
ディーラーでも原因不明とされるような難解修理・診断ができる工場もあれば、軽作業しかできないような工場もあります。
そのため、「自分にとってベストなお付き合いができる修理工場を見つけることができるか」が、ひとつ目の大きなハードルです

安く済ませるなら修理はどこが良い?

車の修理には多額の費用がかかることが多く、すこしでも安く済ませたいのが本音でしょう。
各業者ごとに比較してみます。

各業者の安さの傾向と注意点

修理費用の傾向について簡潔には以下のとおりです。

業者名 修理費用の傾向
ディーラー 高い
カー用品店 安い
ガソリンスタンド 安い
修理工場 安い〜高い

ただし、これらはあくまで傾向なので車種や作業内容によってはこの限りではありません。
例えば、一般的に安いイメージのあるカー用品店では慣れない作業がゆえに、工賃も高めに見積もり掲示されたが、ディーラーでは頻繁に実施する作業でノウハウもあるので、カー用品店より安い工賃設定だった…ということも実際にあります。

正しい知識と技術がある前提のもと、定期的な消耗品の交換等は安いお店も選択肢としてはありです。
しかし、不具合診断や定期消耗品以外の部品交換はディーラーや技術力に定評のある修理工場に依頼することをおすすめします。
あくまで整備を依頼する工場との付き合いは安さだけで選ぶのではなく、修理に対する不安を払拭してくれるようなコミュニケーションが取れる、信頼関係のあるかかりつけの工場やお店に依頼するのがベストです。

(例:ブレーキパッドの交換費用が安い→安価なブレーキパッドを使用して対応。純正に比べて効きが悪い、減りが早い、ブレーキ鳴きが酷いといった弊害が出る可能性があるかもしれない)

また、一度の修理で実費で2〜30万円を超えてくるような高額修理となる場合には、車の買い替えを検討した方がよい場合もあります。
とくに、現在の走行距離が10万kmを超えていたり、新車から10年以上経過しているような年式が古くなってきている車の場合は、特に検討したほうが良いでしょう。

【補足】自分で修理出来るものは限られる

車の修理や整備のDIYレベルは人それぞれですが、自分で修理できるものは限られてきます。
車種によりますが、エアコンフィルターの交換やワイパーゴムの交換であれば、比較的ハードルが低いので、チャレンジしてみるのも良いかもしれません。
しかし、ブレーキ廻りやエンジンルーム内の整備は重大な責任が伴います。
基本的には「走る・曲がる・止まる」という車の基本性能に関する部分の整備・修理は、業者に依頼するようにしましょう。
また、自分が運転する車が安全運行できるよう、安いという理由だけでなくしっかりと業者を選ぶようにしましょう。

修理をどこにするか決める前に確認したいこと

修理の依頼をする前に、あらかじめユーザー自身で確認しておくべきポイントを解説します。

代車が必要かどうか確認する

修理工場にある代車は台数が限られています。
特に飛び込みで修理依頼する場合は、希望どおり代車を借りることは難しいです。
車を修理している間、代車が必要な場合は代車が借りられるかどうかも、修理先を選ぶときの重要なポイントのひとつになるでしょう。
また、任意の自動車保険の内容によっては、条件次第で保険代車が借りられることもあるので、事前に確認します。
くわしく分からない時は、保険加入した代理店・担当者に問い合わせしましょう。

自動車保険の内容

板金・塗装を伴う修理や、飛び石によるフロントガラスの交換などは、自費修理だけでなく自動車保険の特約である「車両保険」が使用できるパターンもあります。
また一部で、車の故障に対しても保険の支払いが行われる特約があります。
いま一度、ご自身の加入されている自動車保険の内容について理解しておくと良いでしょう。

メーカー保証の有無

車にはメーカー保証(新車保証)があり、多くは新車登録日より3年または6万kmのいずれか早い方までとされています。
また、延長保証に加入していれば年数、距離ともに保証期間が延長されます。
メーカーによって細かい規定など異なる部分があるので、くわしくはディーラーなどで確認してみましょう。
中古車の場合、新車保証の期間内である場合は「保証継承」が実施されていないとメーカー保証対象外となるので注意が必要です。
メーカーの施策によって保証が延長されている部品が存在することも、非常に稀ですがあります。この場合もやはり、ディーラーに問い合わせすることがもっとも確実な方法です。また、中古車販売店独自の保証を設定しているお店もあります。

中古車保証サービスの保証項目と対象車条件|中古車のガリバー

車検整備保証の保証内かどうか

修理が必要な箇所に前回の車検整備との関連性が認められた場合、整備保証が適用されることがあります。
ユーザー自身で判断することは難しいので、車検整備を実施した工場・店舗に確認してもらいましょう。 

車の修理どこでやるか、部位や状況による例

修理工場によっては、得意としている修理があります。
いくつかその例をピックアップしました。

車のエアコンの修理はどこでやる?

エアコン修理は、ディーラーや街中の整備工場(モータース屋など)への修理依頼で基本的に問題ありません。
一方で電装品に特化した修理工場があり、こちらへの依頼もおすすめです。
エアコン修理は得意不得意やお店の方針もあって、ディーラーやモータース屋のなかには、電装品に関する整備はそのような修理工場に外注するところもあります。
イメージがないかもしれませんが、エアコン修理は電装修理にあたるので、電装品に特化した修理工場では得意としている作業のひとつです。
また、最近の車に多い頻繁なバッテリー上がりの症状の診断も、より深く専門的におこなってくれます。

「キュルキュル音がする」車の修理はどこで?

車からキュルキュル音がする症状で多い原因は、ベルト鳴きです。
しかし、必ずしも原因はベルト鳴きとは限りません。そのため、まずはじめに修理をするうえで必要なことは、キュルキュル音の原因を特定することです。
ディーラーか馴染みの信頼できる整備工場で診断してもらうことをおすすめします。
ベルト交換だけであれば、特殊な車でない限りはどんな修理工場でも依頼することができます。

ナビ・オーディオの不具合

新型車に多いナビ・オーディオが車両システムに組み込まれた、いわゆるコネクティッドカーの場合は、ディーラーに修理を依頼するのがベストです。
また、古い車の純正オーディオ等も同様です。
これは、保証内であれば自動車メーカーの保証範囲になることと、不具合・修理ノウハウがディーラーに集約されているためです。代表例としてはマツダコネクトがあげられます。
一方で、従来のカーナビ・カーオーディオ(Panasonicやカロッツェリア、KENWOODといったメーカーの製品)の場合は、カー用品店や電装品に特化した修理工場の方が、修理に関するノウハウを持っていることや、作業レスポンスが早い場合が多いです。
また、車両購入後に取り付けしたナビ・オーディオで製品の保証が残っているときは、取り付けを実施したお店に修理依頼するようにしましょう。

走行中の異音修理

異音修理は、自動車整備の中でも難易度の高い修理のひとつです。
なおかつ、診断にも原因特定後の処置にも時間がかかることが多いです。
整備士のスキルに頼る部分の大きい修理なので、まずは気軽に相談のできる日頃お世話になっている整備工場に依頼するのが良いでしょう。
また、異音の原因がブレーキ鳴きの場合は、ディーラーやまちの整備工場(モータース屋)に修理・診断依頼するのが良いでしょう。

修理に時間がかかりそうな例

修理にかかる時間は、整備作業そのものだけでなく部品の調達にかかる時間や、原因の特定にかかる時間によってもかなり大きく左右されます。
定期的な消耗品の交換以外の修理は、即日対応できることは稀で、基本的に少なくとも「数日〜数週間」は時間がかかると考えておくほうが良いでしょう。

修理の種類 症状例 修理期間
内装のカタカタ・コトコト・ミシミシ等の異音 半日〜数週間
車外で発生している異音 半日〜数週間
AT/CVT等トランスミッションに関係する修理 チェックランプ点灯、変速や走行に違和感がある、走行不能になった 2、3日〜数週間
エンジンに発生してる不具合の修理 チェックランプ点灯、加速不良、パワー不足、アイドリング不調、エンジンから異音 2、3日〜数週間
エアコン修理 冷房が効かない、暖房が効かない、風が出ない、エアコンガスが漏れている 1日〜2週間
板金・塗装修理 事故、車をぶつけた 数週間〜1ヶ月

整備工場は、常に多くの車の出入りがあるために、1台の車の修理に集中することは、ほとんどの業者で難しいのが実情です。
そのため、定期メンテナンス以外の整備で修理が伴う場合は、どの業者でも予想以上に時間がかかることが多いです。
特に原因特定のための診断が必要な修理の場合は、かかる時間は大きく左右されます。
その時間を、ユーザー自身でどの程度か予想することは非常に困難です。

整備士のまとめ

車の修理のときに迷わないためにもっとも大切なことは「車のかかりつけ医」を見つけておくことです。
そうすることで、保険を使える修理なのか?保証修理が可能なのか?といった、的確なアドバイスを貰えやすいです。
車屋側としても、日常のメンテナンスでも入庫しているお客さまであれば、該当する車に関するさまざまな情報が蓄積されています。
お客さまの情報が充実していれば、お客さまに合った修理の提案や、スムーズな対応が可能です。
安さだけを求めてあちこちのお店に行くことはNGです。
困った時にだけ一見で修理依頼するようなパターンは、修理完了までスムーズにいかないことも多く、ユーザー側にとってもメリットは少ないです。
また予想外の高額修理となる場合には、車の買い替えも視野に入れて検討するようにましょう。

 

Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。