新車の購入でよく耳にする残クレ(残価設定型クレジット)は、普通に購入するよりもお得に新車購入できることが魅力です。
しかし、仕組みや内容がよく分からない方も多いのではないでしょうか?
本コラムでは、残クレの基礎知識と、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
残クレ(残価設定型クレジット)とは?
残クレはさまざまな自動車メーカーで用意されています。
ある自動車メーカーの残クレは、まず、数年後の買い取り保証額を残価として設定します。車両価格からその残価を引いた金額をローンで返済することで、総額の50~70%くらいの負担で車が購入できます。
支払期間が終了した後は、新車に乗り換え、残価を支払って乗る、ディーラーに返却といった3つの方法から選択できます。
残クレが向いているのはこんな人
では、実際に車を購入する際に残クレが向いている人はどのような人なのでしょうか。
- 住宅の家賃や学費などの負担があり、新車は購入したいが月々の出費を抑えたい人
- 子供の誕生や独り立ちなどライフステージの変化に合わせて、車を乗り換えたいと考えている人
- 新車を購入するためのまとまったお金がない人
- 将来、購入した車を売却する予定だが、中古市場で車の価値が下がってしまうことが心配な人
残クレで車を購入する3つのメリット
残クレにはいくつかのメリット・デメリットが存在します。
まず残クレのメリットについてご紹介しましょう。
①月の支払い額が安くなる
残クレでは、事前に残価が車両価格から差し引かれているので、高額な値引きが適用されたイメージで車が購入できるというメリットがあります。
通常、ローンで車を購入する際は、ある程度まとまった金額の頭金を入れないと、月々の支払いが多くなりがちです。
しかし残クレの場合だと、事前に車両価格から残価が差し引かれているため、支払い額が抑えられるのがポイントです。
ローンが楽になると旅行をはじめ、レジャー、グルメなど、車のローン以外にお金を使うことができるので、楽しみが増えることになります。
一方、通常の購入方法だと、なるべく月々の支払いを抑えたいために、長期期間のローンを組んでしまいがちで、車検の度に出費がかさんでしまうことを覚悟しなければなりません。
しかし、残クレを利用して3年で乗り換えれば車検にかかる費用が不要となります。
②3~5年サイクルで車の乗り換えができる
人生には結婚、子供の誕生、子供の独立といったライフスタイルが変わる時期があります。
全てのライフスタイルに対応する車は少ないため、乗り換えが必要になっても、残クレを利用すれば3~5年のサイクルで新車に乗り換えることができるメリットがあります。
もちろん、車を使わなくなったら返却して、残価を最終回の支払いに充当することもできます。
さらに、残クレで購入した車を乗り続けたいと希望すれば、一括や分割によって購入することもできます。
③残価が保証されている
新車で購入して3年も経過すると、車両の価値はかなり落ちるので、1回目の車検が来る前に売却して、乗り換えるという人がいます。さらに新車から5年も経過すると、タダ同様になってしまう車もあるなかで、残クレでは最初に残価として車両価値が設定されているので安心です。
特に、購入した車の中古車市場での価値が下がってしまうことが心配という人も、残クレを活用して車を購入すれば安心です。
残クレで車を購入する5つのデメリット
上記にて、残クレで車を購入するメリットをご紹介しましたが、もちろんデメリットもあります。
①支払い利息が高い
残クレを利用して車を購入すると月々の支払額を抑えられますが、利息は、残価を含めた元金に対してかかります。また、月々の支払額が少ないということは、元金が減るスピードも遅いので、最終的には利息が多くなる可能性もあります。
残クレは月々の支払額は抑えられるメリットがある反面、しっかり利息はとられているということです。
②月間走行距離の制限がある
残クレを利用して車を購入すると残価が保証されていることは紹介しましたが、月間走行距離によっては負担金が発生するデメリットがあるので注意してください。
通勤、通学、仕事などで長距離を走行する人はしっかり検討しなければなりません。
月間走行距離については自動車メーカーごとに定められおり、次の通りです。
- ホンダ(残クレ)、日産(残クレ):月間走行距離:1,000km(または1,500km)以内
- トヨタ(残価設定型プラン):走行距離2年:30,000km以下、3年:45,000km以下、4年:60,000km以下、5年:75,000km以下
例えば、通勤や通学、仕事で1日50km、ひと月で20日走行してしまうと、月間走行距離が1,000kmに達してしまう計算になってしまいます。
このように車を使用する頻度や距離数が多い場合は、残クレでの購入は適していないといえます。
③事故等で傷がつくと追加費用が発生する
車に乗っていると大なり小なり傷が付くことが予想されます。
残クレで購入した車に傷が付いてしまうと、車両価値を低下させる車両の状態と判断され、もし修復歴車になってしまうと残価分に相当する金額を負担しなければならない可能性があります。
事故を起こして廃車になっても、ローンを継続したり、一括で完済することになったりすることもあるのです。
3~5年という長い残クレの期間には、車に傷が付いたり、事故に遭ったりすることは十分考えられるので慎重に検討しなければいけません。
④カスタマイズは不可
残クレで購入した車は、自由にカスタマイズすることができません。カスタマイズしたいと思っている人は、注意が必要です。
返却する場合は、購入した状態にするのが基本です。残クレで購入した車を返却するまでは、賃貸のマンションやアパートと同じように借りているものと考えたほうがよいでしょう。
⑤人気車種は残価より価値が高くなるケースがある
残クレで人気がある車種を購入した場合、残価より中古車市場での価値が高くなっても、事前に決められた残価以上の金額にならないデメリットがあります。
人気車種を残クレで購入する際は残価を確認し、納得できない場合は一般のローンで購入した方がお得になる場合があります。
特に今人気のSUVやミニバンを残クレで購入する際は、残価については十分検討して下さい。
残クレのメリットとデメリットまとめ
残クレのメリット | 残クレのデメリット |
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残クレのメリット・デメリットを把握してから決めよう
残クレとは通常の購入と比較しても総額が安くなるプランなので、通常のローンなどでは手が届かないと思われる新車でも購入できるのが魅力。
ただし、利息や走行距離の制限、事故の負担金など、多くのデメリットもあるので、残クレの内容をしっかり把握した上で、利用するかどうか決めた方がよいでしょう。
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監修ファイナンシャルプランナーからのコメント
残クレの場合、通常の自動車ローンより毎月の返済額が少ないためお得に感じますが、元金が減るペースがゆっくりであるため、利息は割高となります。残クレ終了後に負担が大きくなる可能性がありますので、当初の残クレ期間中の支払い金額だけでなく、トータルでどうなるか検討が必要です。
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- Supervised by CFP 宮川 真一
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保有資格CFP®(ファイナンシャルプランナー)、FP技能士1級。 1996年一橋大学商学部卒業。税理士法人みらいサクセスパートナーズ代表。 CFP®の資格を活かした個人向けコンサルティングを行っています。また、現在は事業会社の財務経理を担当しているほか、会計・税務を軸に複数の会社取締役・監査役に従事しています。